『株式会社コーエーテクモゲームス』は、「真・三國無双」や「戦国無双」などをはじめとする無双シリーズや、「信長の野望」シリーズなどの家庭用ゲーム機用のゲームソフト、オンラインゲーム、スマートフォン向けモバイルゲームの企画・開発会社。
その中でも、2017年4月にリリースしたばかりの(android版:3月)新作スマホ向けハンティングアクションである『討鬼伝 モノノフ』。
本作は、和風のファンタジーな世界観をコンセプトに、武術を鍛えたモノノフと”鬼”との死闘を描いたアクションゲーム。
第1回の投稿では『討鬼伝 モノノフ』の開発秘話や社内の雰囲気などの話を語ったが、今回はゲームのシステムや核心の部分に迫っていくぞ。
▲中臺 重人氏(写真 左)と石川 久嗣氏(写真 右)
目次
“鬼”の迫力を出すため「縦画面」にこだわった。システムは実際にプレイしてみて試行錯誤。
ーーゲームシステムでこだわったところ、何かありますか?
中臺氏:
戦闘部分の操作が結構、作っては直し…の試行錯誤でしたね。
ーー一度形にしてから、もう一度つくり直したりと。
石川氏:
つくり直すというところまではいかないですが、例えば、“鬼”を攻撃するとき、画面に表示したボタンの絵を押させるのか、どこでもいいので画面を押させるのか。
ボタンを表示しないとわかりにくいけれども、表示してしまうと画面が狭くなってしまう。
こういう試行錯誤は何回も何回もやっていましたね。
ーーやはりスマホの画面となると、手元コントローラーじゃないので、画面をタッチさせるというところで、難しい問題になってきますよね。
中臺氏:
そうですね。部位破壊のときも、当初は部位をタップするような感じだったんです。
ーーそれはスマホならでな感じでしょうか?
中臺氏:
そうなんですけど、それを毎回毎回やると、どうしても手数(てかず)が多くなって、簡単に遊べなくなるんですよ。
そういったところも、やってみて「なるほどね」とわかるようなところでしたね。
ーーそうですね。確かに実際に遊んでみてからじゃないと気づかないこともありますよね。
石川氏:
似たようなところだと、スマホを縦持ちにするか、横持ちにするかというのもありました。
家庭用ゲーム機の『討鬼伝』のCGをそのままスマホに持っていき、品質は維持したい。かつ、“鬼”の迫力も出したいし、視認性も上げたい、などなど。
ーーそれだと縦画面の方がおさめやすいのでしょうか。
石川氏:
“鬼”は二足歩行タイプが多いので、画面にちゃんと収めつつ迫力も出そうとすると、縦の方がいいかなと思っていて。
大きさを維持して横画面にしたら、“鬼”に接近して戦っていると足下しか映らず、“鬼”の顔が画面に入らないじゃないですか。
ーー横画面だと見切れてしまいますね。
石川氏:
カメラあおってみたらどうかとか、初期の頃は試行錯誤しましたが最終的には縦画面に落ち着きました。
ーー初期だと横画面の構想が多かったのでしょうか?
中臺氏:
横画面の話はもちろんあったんですが、私は割と最初から縦画面がしっくり来ていました。
開発チームの中でも、横画面を推したスタッフはもちろんいましたし、取材でも「何で横画面ではないの?」ということはよく聞かれました。
ーー色々と試行錯誤されていまの形に落ち着いたんですね。
ユーザーのモチベーションを高く保つため、メリハリのある戦闘を。
ーー操作性、グラフィックでこだわったところはありますか?
中臺氏:
爽快な部位破壊を決めるために、あれこれと手順が決まっている形はあまりやりたくなくて、ある程度操作の延長線上で、誰でも部位破壊を体験できる形にしたいと思っていました。
あと、『討鬼伝 モノノフ』では、せっかくスマホで協力プレイをするので、みんなで何か一斉に出せる強力な技みたいなものが、出来ないかなと思い、見た目もド派手にした「鬼千切・廻(かい)」という必殺技を追加しているんです。
ーー4人でマルチをしたときに、協力して技を発動出来るのは、仲間のモノノフたちと共に強大な“鬼”と戦っている気持ちになれますね。
中臺氏:
まさに求めていた「討鬼伝」シリーズの共闘感かなと。
ーーなるほど。それで、戦闘が今の形に落ち着いた経緯をもう少し聞かせてもらえますか?
中臺氏:
まず、ずっと同じような戦闘していると疲れたり、だれたりしてしまうので、ある程度メリハリはつけたいなと思っていました。
石川氏:
そこで、戦闘を前半と後半に分け、間に「総攻撃フェイズ」というインターバルの演出シーンを入れてはどうかという話になりまして。
前半はある程度、気軽に戦えるようにし、後半は“鬼”が「タマハミ化」という強くなった状態にすることで緊張感が増すようにしました。
「タマハミ化」した“鬼”の攻撃を食らうと一撃で即死したりするので、「後半戦だけは集中力をもって戦わねば!」というように。
ーーということは、総攻撃を挟んで前後半に別れる今の戦闘になったのは、割と開発が進んでいた時期だったということですね?
石川氏:
はい。それと、緊張感だけでなく、とくに目標もなく戦っていることも、モチベーション面で厳しいところがありました。
そこで前半は「牡丹の作戦」という戦闘中ミッションを用意し、まずはミッション達成が目標になるようにしました。
目標を達成すれば、総攻撃フェイズで鬼千切・廻という強力な必殺技が出せます。
鬼千切・廻を出せれば部位破壊数が飛躍的に増え、その分、戦闘終了時の報酬も良くなります。
ユーザーにとっては、できるだけ報酬をたくさんもらって次の戦いに備えたいわけですから、そのためにはどう戦えばいいのかという筋道を分かりやすくするのが重要だと思い、戦闘は今の形に落ち着きました。
ーーたしかに、段階段階で目標があった方が、目標を目指して頑張ろうという気になりますね。
家庭用ゲーム機からスマホに落とし込む際、クオリティが下がらないような工夫をした。
ーーもともとはコンシューマーでゲームをつくられていたと思うのですが、スマホの開発に当たって、簡単だった点、意外にスマホでいけるなと思った点はありますでしょうか。
中臺氏:
家庭用ゲーム機とスマホの差は小さくはなってきているんですが、とはいってもやはり差はあるんですよね。
『討鬼伝』のコンシューマーで動いていたリソースをそのまま持ってくると、さすがに処理コストが高くなってしまうので、リダクションな
ど最適化を行ってスマホでもクオリティを落とさずに調整しています。
と、言葉でいうのは簡単なのですが、実際に行うと非常に難しいですね。
ーーやはり今まであったものをスマホに落とし込むといったところで、苦労したところも多かった感じなのでしょうか。
中臺氏:
はい、リソースの仕組み自体もそうですが、ネットワークやサーバーに関しても苦労は多かったです。
例えば、プレイステーションプラットフォームですと、ネットワーク部分は SIE さんが提供しているライブラリを使用してサーバーに繋いだりするのですが、スマホの場合ではすべて自前で用意しなければいけません。
サーバーの構築からリリース後の保守運営まで自分たちで行う必要があるので、そのあたりはアプリを開発する上で、大変なところですね。
ーーそういったところも考慮しないといけないですよね。
第2回まとめ
本インタビューの第2回目は、ゲームシステムの細部に渡る内容や開発者としてのこだわり、開発期間の苦難などを語った。
次回は、『討鬼伝 モノノフ』の魅力や想いに迫り、最後にユーザーへのひとことをお聞きして締めとしたい。
「討鬼伝 モノノフ」インタビュー記事:
ユーザーの想いを真に考えた、コーエーテクモゲームスのゲーム開発への経緯【討鬼伝 モノノフ インタビュー#1】
今後は危機感のあるハラハラドキドキするストーリーを描いていきたい。【討鬼伝 モノノフ インタビュー#3】