▲インタビューに答えて下さった、うすい氏と囚人氏
そこは、「感染」された崩壊都市。
廃退した世界観で生き、戦う少女たちを描く美少女感染RPG「感染×少女」。
未知のウィルスに感染した孤島。そこで生き残れたのは一定年齢以下の「少女」たちだけだった。
周囲は感染されたゾンビに支配された閉鎖空間。
彼女たちは、感染の恐怖にさらされながらも生存組合を形成し、仲間たちと苦境を明るく、そして力強く歩んでいた。
そこに突然現れた記憶喪失の主人公。
唯一の「男性」の生存者として、数多の試練に立ち向かっていく!
そのハードでご都合主義などない、容赦のない世界観の中、それでもあがく主人公たちの姿を描く「囚人」氏と、開発陣の「うすい」氏にゲームに関して、更にはそれ以外もインタビューしてきたぞ。
「殺し損ねたことを―――後悔しろ」
【感染×少女】
目次
「こんな気持ちになるんなら、読まなきゃ良かった」と言わせたい!
―――「感染×少女」シナリオに関しては、どのようなこだわりがありますか?
囚人:
「靴に合わせて足の指を切りたくない」そういった想いが一番にありました。
僕の持論ですが、読書は小さな進化だと思っていまして。
一度でも読んでしまえば、読む前の自分には二度と戻れない、そんな衝撃的な変異をもたらすのが読書だと。
だからこそ、感染×少女をプレイしてくださった方に、想像しない衝撃を与えられるような物語を作りたいと。
ソシャゲという枠に収まるのではなくて、寧ろ物語に登場する少女たちの「生きたい」という熱で、ゲーム自体の枠を広げられればと、そんな願いをもって制作させていただきました。
賛否両論の危うさがあるシナリオになったとは思います。
KADOKAWAさんが大変理解を示してくださったのが大きいですね。
ラノベでもゲームでも作品に触れたことで、なにか変わって欲しい。きつい言い方をしてしまえば「読んだ人に傷を負わせたい」のです。
負った傷を治していくのか、負った傷を大事にするのか、そこからはその人次第なんだと思いますね。
そういった「傷」を付けることが本の役目なのかな。
スマホという媒体に合わせて、そこまでの事ができるとは思っていなかったのですが、それは考えないでシナリオだけでも好きになってくれればという気持ちで、全NGをもらう覚悟で書こうと。
そこが一番のこだわりでしたね。人によっては、「こんな気持ちになるんなら、読まなきゃ良かった」とショックを受けるくらいの読書体験を味あわせたかったと考えていました。
結果シナリオが面白いアプリとして良い評価をもらえたことが何よりの成果だと感じています。
囚人氏の心に「傷」を負わせオタクの道へと誘った名作・・・その名は「コードギアス」
―――囚人さんが小説を書く事となったきっかけは?
囚人:
小説を書くきっかけは、ボカロ曲「囚人」がそれなりに人気が出て小説化しようということになった時、はじめは別ライターさんが書くという話になっていたのですね。
けれど、僕、やりたがりなんで「自分でやる!」といって書き始めたのがはじまりですね。
ボカロ小説は、いわゆるティーンエイジャーの女の子が読むような、そうですね「かわいらしい本」に近いイメージのものなんです。しかも、その小説を書いたクリプトンという会社は、スゴくキレイなことを好む傾向で、超王道なハッピーエンドを提供するところだったんですね。
でも、気楽に読んだ子が、一生背負うようなトラウマを負わせる!・・・とまでは言わないですが、完全に不意打ちのような感じのものを作りたいって思ったのです。
窓口はスゴくキレイで、中を見てみて「ああ、こういう世界もあるんだ」と・・・。
今回のスマホゲームに関しても同じですね、どうせスマホのゲームだから女の子とキャッキャウフフしてるだけでしょ?と油断したところに「ふざけんじゃねぇよ!」という展開をやってやりたいなと。
―――なぜ囚人さんは、そういうマインドになったんですか?
囚人:
僕はアニメが好きではなかったんですよ。今でこそオタク中のオタクなんですけど、中学まではステレオタイプなアンチアニメみたいな感じでした。
そんな時、とある友人が「お前に1個だけアニメを見せる。それでもアニメが好きじゃないって言えるなら俺はあきらめる」って言って、「コードギアス」(「コードギアス 反逆のルルーシュ」)を観せてくれたのです。
それで、僕は大衝撃を受けてしまいました。
全く期待しないで観た作品だったのですが、本当に傷跡を残すような体験だったんですよ。
この感動・衝撃みたいなものを作りたいと思いました。
だから、「コードギアス」は僕の人生を一回変えた作品で、ここからアニメを観るようになりましたね。
創作を始める起点になったものです。
その前は、普通にバンドマンだったので、アジカンとかポルノグラフィティの曲とかをやってみたり、似たような曲を作ってみました。
それ以降は、裏切るようなもの、予定調和で進まないようなものが好きになりましたね。
作者も困惑する「樽神名アド」の奇行!だが、それは作品を牽引する重要なファクター!
―――本編のシリアスな内容中にもパンツネタを入れるのはこだわりですか?
囚人:
僕としても実は想定外なんですよね。
ここまでのパンツネタのあるものにしようとは、さらさら考えていなくて、途中から自制が聞かなくなったのです。あ、僕じゃないですよ。キャラ(樽神名アド)の自制です。
「パンツ愛が凄いですね!」とユーザーさんからも言われるのですが、こだわりがあるのは僕ではなく、作中の「樽神名アド」という少女なんですよね。
そもそも「シリアスな作品を作る」というのは作家の都合であって、登場人物からしたら知ったこっちゃないんですよね。
「シリアスな世界観なので、シモネタは控えてください」と登場人物に制約をかければ、その物語はもう嘘ですので。
「樽神名アド」は、死体だらけの街で、絶望に打ちひしがれる少女たちを率いる希望の星、ある意味エンターテイナーです。
悲しみにくれる少女たちを笑顔にするため、先陣きってバカをやっています。
何が言いたいのかというと、そのシリアスな世界で輝く「樽神名アド」の持つ「パンツ愛」が、
作中の少女たちだけでなく、僕らをも引っ張っているのだと思います。
パンツ最高。
すこしお話ししてしまうと、アドってドシリアスの中にあって、一人だけスゴイ浮いているピエロみたいな感じの娘で、よくいる皆を楽しませるおちゃらけたキャラという立ち位置から、もう一歩踏み外したところにいるちょっと壊れた感じの女の子なんです。
この世界の女の子たちは皆、ネジの外れた馬鹿さ加減で、受け入れがたい現実を忘れようとしている・・・それがアドはちょっと強すぎたんですよ。
生存組合の皆が引っ張られる魅力と力が彼女にはあって、想定外にその力が世界観そのものを引っ張りはじめたんです。
メインシナリオではギリギリ大丈夫だったのですが、彼女たちの日常を描くときに彼女の力が余計に働きました。
日常のシナリオ(EXシナリオ)を書く時は縛りがないので・・・。
僕は、シナリオを書くときは旅行だと思っていまして、基本的に行く場所だけを決めるわけです。
でも、意外と旅って行ってみると予定通りにいかなかったり、最後に宿に帰るのだけど、宿じゃない場所にいってしまったりとか、ある程度キャラを自由に泳がせてポイントにだけ向かわせるんだけど、決まったルートを通らなかったりするのです。
で、今回EXのシナリオを書くことになった時、日常編はゴールとか決めないである程度キャラを自由に彼女たちを遊ばせようと思ったら、もうこいつ(アド)が止まらなかったんですよ。
どうやっても止まらない・・・。
ぐいぐいと作品のカラーを引っ張っていって、どうしようもなくなっていて気づいたらパンツだらけになっていたという感じでして。
幸か不幸かはわかりませんが、彼女の持つ力ですね。これが。
うすい:
おちゃらけキャラがストーリーを引っ張っていく中で、かなり主軸のところにいるのは珍しいんでしょうかね。
メインヒロイン(来栖崎ひさぎ)は、別にいるのですけど主人公たちの所属する生存組合の中心人物というかリーダーが、おちゃらけキャラのアドなんです。
最初、スタッフたちの間で「こいつでまとまるの?」みたいな意見もあったんですけど、意外なところで彼女は力を発揮すしまして、
普段は皆から超いじられているドスケベ少女なんですけど、その彼女の魅力がうまい具合に世界観を引っ張ってくれてるんだと思います。
社外の人にもシナリオを読んでもらうと、口々にアドが上手く導いているよね、と言われますよ。
囚人:
・・・え、知らなかった。
―――一同大爆笑
次回予告
実はアドのパンツネタは、世界観に関わる深い人間関係があった!?
囚人さんのアドバイザーとしての意見が作品を高次元へと引き上げ、そして熱く語りすぎて周囲から注意されるといった、ちょっと困ったエピソードまで。
次回、「感染×少女」インタビュー第3回「バカをやるなら、予めブレーキを木っ端微塵にしておく!そしてヒートアップして、別チームから怒られるまでが定番」
死と隣り合わせの極限の世界で、少女たちを待ち受ける運命は…。