2001年にサービスを開始したアプリゲット。
そのフィーチャーフォン版が2016年1月の15周年をもってその歴史に幕をおろすことになりました。(スマートフォン版はまだまだ続きますよ!)
そこで、アプリゲットの15年の歩みを通してimodeの誕生からはじまる日本のモバイルゲームをあらためて振り返る特別企画をお届けします。
第1回のゲストはアプリゲットの立ち上げメンバーのひとりである小原氏。
聞き手は2001年当時中学3年生だった、現アプリゲット編集長の阪森です。
目次
創業事業が大ゴケし、後がない中でうまれたアプリゲット
――小原さんは会社の創業時のメンバーだったと伺っています。創業前夜からアプリゲット立ち上げまでの経緯を教えていただけますか?
小原:僕が主催していた学生団体のメルマガ向けに、創業メンバー募集の広告を出したいという連絡を山田さん(アプリゲットを運営しているスパイシーソフト株式会社の代表取締役社長)からもらったのが一番最初でしたね。
僕も将来自分で会社をやりたいと思っていたので「単純に告知するのはちょっともったいないな」と思って新宿のマクドナルドで会ったんですよ。
99年の夏ごろにたしかアルバイトとして参加して、99年の11月に会社ができました。
最初はPC用のデスクトップカレンダーソフトを開発して販売するビジネスからはじまったんです。
当時ってパソコン向け雑誌がすごくたくさんあった時代なんですが、そういった雑誌にCD-ROMがついていたんですよ。
そのCDROMにカレンダーソフトの体験版を入れてもらう営業をするのが僕の最初の仕事でした。
小原聖誉氏。1999年の創業から参画。2001年のアプリゲットの立ち上げ時期の事を知る数少ない人物の一人。
―――カレンダーのビジネスは結局うまく行かなかったわけですが、どのように「アプリゲット」へと舵を切っていったんでしょうか?
小原:2000年の夏に山田さんと僕で新宿住友ビルのユックという北海道居酒屋でごはんを食べていた時に「事業を変えよう」そして「それでだめだったらやめよう」という話が出たのをおぼえてますね。
小原:当時いろいろアドバイスを頂いていた会社がドコモの公式サイトを運営していたんですが、その会社の社長さんからiアプリというものが今度出るということを教えてくれたんですよ。
小原:それを受けて、「iアプリがはじまれば個人がアプリを作れる世界になるから、iアプリを探すユーザーも増えるんじゃないか」というのが山田さんの見立てだったんですね。
そして開発が始まったのがiアプリのポータルサイトである「アプリゲット」でした。
リリース初期のアプリゲット。
携帯電話はテンキーを押して操作することが多いため、カテゴリーも9つでまとまっている。
カレンダー事業で培った雑誌編集部との関係が活きた初期プロモーション
編集部に残っている一番古い端末はN503iだった。iアプリ対応機種第3弾で、同世代の携帯電話の中では最も売れた端末だ。
――アプリゲットの立ち上げ段階では小原さんは何をされていたんですか?
小原:開発段階では僕はやることが無いので、カレンダーの時のノウハウを使って出版社にアプリゲットを売り込みに行ったんです。
アプリゲットがリリースされる3ヵ月まえくらいから「これからはケータイアプリの時代ですよ」と売り込んでいってページをとってくると。
で、アプリゲットのリリース後に、雑誌の中でケータイアプリを紹介するページを作ってもらったりだとか。そこに「紙面以外で検索するならアプリゲットだよね」みたいなことも書いてもらって。
当時はimodeが大ヒットしていましたし、当時の雑誌の大口の広告主が携帯キャリアだったり端末メーカーだったこともあってすんなり紙面にのせてくれましたね。カレンダーの時の苦労とくらべるとまったく対応が違いましたよ。
時流に乗るってすごいなってこの時痛感しました。
大手ポータルサイトとの提携を図るもヤフーの壁は厚く・・・。
小原:雑誌の次にターゲットにしたのがヤフーのような大手のポータルサイトでした。
ヤフーの中にアプリ検索を提供しようという話になりまして。でもinfoとかから連絡するしかないので当然のように返信が無いわけですよ。
そこで、ヤフーというゴールは変えないまでも、他のポータルサイトさんにも提案をしてみたんです。
エキサイト、ビッグローブ、インフォシークといったサイトですね。
それで各社に連絡を取っていくと、なんとインフォシークさんがすぐ組んでくれることになったんですよ。
その後ビッグローブさんとの話もまとまって、サービスとして最初にリリースできたのはビッグローブでしたね。
※その後もアプリゲットは各社と提携をしていく。代表的な提携を時系列に並べると以下のようになる。これがすべてiアプリが登場した2001年のうちに行われている。
iアプリの「アプリ★ゲット」がBIGLOBEにコンテンツ提供(2001年5月16日)
インフォシーク,i-seekでiアプリの検索を可能に(2001年8月1日)
OH!NEW?,スパイシー・ベクターと提携。iアプリへ(2001年8月27日)
goo「ITチャンネル」でiアプリダウンロードサービスを開始(2001年9月26日)
mobile@niftyでiアプリ情報を提供(2001年10月9日)
ベクターとの合弁会社設立で開けたヤフーとの提携への道
――最終的にはヤフーにアプリ検索を提供することになりましたが、どんな経緯があったったんですか?
小原:ヤフーにアプリ検索を提供できないならまだしも、ベクターとヤフーに組まれたりでもしたらアプリゲットは終わるね、という話をしている時に「それなら逆にベクターと一緒にやればいいのでは?」と考えたところから道が開けたんです。
※ベクターは老舗のソフトウェアダウンロードサイト。1999年にヤフー株式会社が資本参加し、さらに2000年にはソフトバンク・コマース株式会社(現:ソフトバンクBB株式会社)が増資を引き受け、46%の最大株主となりソフトバンクグループの一員となっていた。
小原:それで、ベクターの社長とお会いして交渉していく中で、アプリゲットかギガフロップスどっちと組むかというところまで話をすすめていくことができまして、最終的には合弁会社設立でやることに同意したことが決め手となって、ベクターと組むことができたんです。
そしてスパイシーベクターという合弁会社をつくり、ヤフーモバイル向けにアプリの検索サービスを提供することが決まったんです。
「Yahoo!モバイル」で「iアプリ」の検索、ダウンロードサービスを提供開始パソコンからも検索可能2001年12月21日
小原氏:その当時のアプリゲットの競合はギガアプリとベクターだったので、ベクターとの提携は大きな意味があったと思います。
いやあ、懐かしいですね。
※ギガアプリはアプリゲットとほぼ同時期に開始したケータイアプリダウンロードサイト。ギガアプリについては別の記事で特集する予定です。
※この後、事業方針の違いから2004年にベクターが保有するスパイシーベクターの株式をスパイシーソフトがすべて買い取って完全子会社化している。
スパイシーソフト、スパイシー・ベクターを完全子会社化(2003年8月25日)
聞き手あとがき
15年前、私は中学生でした。当時は「携帯電話は高校生になったら」と親に言われていたので周りの友人が持っていた503iがとてもうらやましかったのを覚えています。ゲームも遊ばせてもらった記憶があります。
話題の中心はいつも「モーニング娘。」と「ケータイ」。インタビューの中で小原さんもおっしゃっていましたが、まさに時流だったのでしょう。
サービス開始から1年もたたずにヤフーをはじめとした名だたるポータルサイトと提携することに成功したアプリゲットは、多くのアプリクリエーターが集まる場所として発展していきます、