The Mooseman

The Mooseman

パブリッシャー Vladimir Beletsky

ジャンル アクションパズル

価格 基本プレイ無料

【名作】未知の神話を冒険する。世界を切り替え精霊や死者の世界を旅する2Dアクションアドベンチャー

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The Moosemanレビュー画像

▲精霊や死者の世界が、光と闇の鮮やかな対比のもと描かれる。

神秘的な未体験。神話を体験する冒険

The Moosemanは、精霊や死者の世界を旅する、神秘的な横スクロール・アクション・アドベンチャー。

北欧の少数民族、フィン・ウゴル系民族のあいだで語り継がれてきた神話を元にした物語だ。プレイヤーは仮面を付け外しすることで、世界の見え方を切り替えて多くの困難を乗り越えていく。

精霊のいる世界と、現世を切り替えるゲームシステム

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▲壁画風のグラフィック。英語であるが理解よりは感覚を大事にしてプレイしてほしい。

寂寥感のある、ダークな世界をプレイヤーは右へ右へと進む。名作アクション「LIMBO」及び「Playdeads INSIDE」を感じる人もいるだろう。だが本作の魅力は名作を踏襲した雰囲気だけではない。

画面をタップすると、「見えないもの」が見えるようになる。仮面を付け外しすることで、おそらく物質世界と精神世界を切り替えているのだろう。謎めいた「彼ら」は、おそらく、精霊であり、死者であり、であり、あるいは思念伝統といった概念が可視化した存在である。彼らは恐ろしい存在であり、ゲームとしては即死トラップである事も多い。同時にプレイヤーの助けになってくれる謎解きの鍵でもある。彼らの力を借り、同時に逃げながらプレイヤーは神話の世界を旅していく。

美しいビジュアルと神々しいサウンドトラック

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▲精霊たちが谷を渡る橋になってくれる。世界を切り替えて冒険を続ける。

プレイヤーは精霊たちが漂う、さまざまな世界を旅する。何千キロも離れた伝承の世界なのに、なぜだかどこか懐かしくもある。恐ろしい精霊たちにもだんだん親しみを感じていく。

時に強烈に、鮮やかな風景が、色彩が現れる。そこには美しい音楽が流れている!静かな、しかし深い感動が訪れるだろう。人を選ぶ作風なのは否定しない。が、雰囲気ゲー乙!と早合点しないでプレイして頂きたい。

The Moosemanの魅力は、未知の世界を旅する冒険

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▲死者たちがうごめく荒涼とした世界が、なぜだか美しく思えた。

僕たちゲーマーは沢山の世界を冒険してきたと思う。剣と魔法の世界。SF。三国や戦国の乱世。文明崩壊後の未来。魔界。宇宙。時の最果て。無数のファンタジーやクエストを遊んできたと思う。

地球のどこかに住む、少数民族の伝承を、我々は普通に生きている限りは知ることはない。必要もないだろう。ただ、情報化しても出てこない、Googleでも出てこない、Amazonでも買えない物語は、まだ消費されていない、現代最後のファンタジーと言ってもいいのではないだろうか?

本作「The Mooseman」は、遠く離れた土着的な記憶を、神話を追体験できるアドベンチャーだ。ダークな雰囲気、たまらないサウンドトラック、パズルアクション、その言葉で言うとこぼれ落ちる魅力がある。未知があり、同時に何か郷愁めいたものも感じる。

そういう意味で、本作は、決して「LIMBO」や「Playdeads INSIDE」の模倣ではない。雰囲気の相似こそあるが、描こうとしているものは根本的に違う。

こんなゲームに出会えてよかった。名作に出会ったあの気持ち。最近あっただろうか。僕はなった。今日、なった。とても幸せなことだ。

ゲームの流れ

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鬱蒼とした森の中、プレイヤーはなぜか右へ右へと旅をはじめる。

この雰囲気で一撃でノックアウトされる人も多いのではないか。僕だけか?違うだろう。

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プレイヤーはジャンプもダッシュもできない。左右の移動、画面のタップだけだ。

画面をタップし、仮面をかぶると、世界に顕在する、見えざるものたちが見えるようになっていく。彼らは時に味方や敵になる。

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襲いかかるクマ。仮面の付け替えを駆使し、なんとか逃げ延びる。

アウターワールドの時代からこの手の巨大生物から逃げるシーンは多い気がするな。

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死者と精霊がうごめく荒野。ファンタジー、ではない気がする。神話、というのも大げさな気がする。美しさも恐怖も同時に存在する世界。

歴史と地続きになった伝承が可視化されゲームに落とし込まれている、静かな感動をなんと呼べばいいのかわからない。

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彼らが幽霊なのか精霊なのかもわからないし、敵か味方なのかもわからない。さまざまな精霊達がプレイヤーの前に現れるだろう。

彼らのせいで何度もゲームオーバーになる。だが、それでいて彼らに憎しみを抱くことは一度もなかった。

The Mooseman攻略のコツ

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▲何度もゲームオーバーになるとヒントが提示されていく。やさしい。

はっきりいって謎解きそのものはさほど難しくない。アクション性は薄く、謎解きには英語の理解を必要としない。クリアにかかる時間は2時間ちょっとだろうか。

迷ったら仮面を付け外ししながら、あらゆるタイミングや選択肢を試していこう。できうるならネタバレや攻略情報などは見ないほうがいいだろう。

隠されたコレクションを探し出せ

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▲隠し要素を見つけるの本作の数少ないやりこみ要素だ。

本作には隠された謎が存在する。それはステージの行く必要のない後ろだったり、壁や茂みに隠れたところに潜むコレクションを探すことである。ステージ選択が可能なので怪しいなと思ったところを再探索するのも楽しみだろう。

そして本作はヘッドフォンでのプレイを強く推奨したい。希薄なゲーム性ゆえに、世界ににごり無く、深く没入する事が最も大切なのだ。部屋を暗くしてもいいかもしれない。サウンドトラックはホームページでも聞くことができる。

直感と閃きを大事にして動く

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▲ステージごとにリプレイも可能。もう一度プレイしたいような気持ちにもうなっている。

出来ることは、左右の移動と世界の切り替えだけだ。精霊たちの助けを借りたとしても、どうしても解けなかったら連絡頂けたら幸いである。

最後になるが、本レビューを書くにあたり、ゲームキャスト氏AutomationのSyohei Fujita氏のレビューには参考という言葉では言い尽くせない活力を頂いた。それは、ゲームに感動することの困難さと、伝える事に対する事に対する尊さ、敬意であった。勇気とか愛とか、その類の言葉を躊躇なく使えるくらい、自分の心は、このゲームでむき出しになったのだ。

是非プレイして欲しい。できるなら最後まで。240円でこんな気持ちになれるなんて贅沢な娯楽だ。こんな息苦しい時代にも、希望は残っているのかもしれない。いくらか未来が好きになった。