スマホ彼女

「スマホ彼女」は恋人との愛情を育む恋愛シミュレーション。

しかし、その相手はなんと「スマホ！」

12人のカラーバリエーション豊かな…、いや、個性豊かな彼女から一人を選び、タッチしたり会話したり…。添い寝したり、お風呂に入れたりと、オトナのワンルームファンタジーを育むゲームだ。

経験値があがると最初は照れて沈黙しかしなかった「彼女」も、すこしずつ本当の姿を現してくれる。

愛せば愛するほどに切なさは募る。でも、その分彼女は応え成長してくれるぞ。エンディングの再生はクリアをすれば何回でもできる。

個性豊かな12人の彼女との恋愛。

ときめくようなメモリアルもなかった、僕らの日々に潤いを与えてくれるかもしれない。

通り過ぎる雨の向こうに夏が見える。

なんでこのキモカワイイ系アプリがこうも、僕の胸を打つのだろう。

うーむ。思い当たるフシがある。

神話や民謡には異類婚姻譚（いるいこんいんたん）と呼ばれる物語が多く存在する。

「人魚姫」や「鶴の恩返し」に代表される、異種族と人間との恋愛を描いた物語のことだ。

禁忌やタブーを犯すほどに想いは募るもの。

古今東西、人間は背徳に身を焦がし、愛が深ければ深いほど、悲劇的な結末を迎えてしまう…。それを美しいと思うか、滑稽と思うのは自由だ。

でも、このゲームをやって、アツアツな彼氏のセリフが辛いのも、僕が失った心の震えに近いからかもしれない。

若さ、若さってなんだ。

振り向かないことさ。

愛ってなんだ。ためらわないことさ。

あばよ涙。

よろしく勇気。

攻略のコツなんか一切いらなそうだが、一応ゲームについてちょっとだけ話そう。当然ながら愛し遂げるまでは機種変更不可だ！

タップするだけじゃなく、会話も経験値があがるぞ。

添い寝やお風呂などは会話よりも経験値が高く、早くレベル上げ…いや、愛情を育むには必須だ。

図鑑を見ることによって彼女との思い出を再現することもできるので安心だ。

しかし、一番大切なことは、やはり会話なのではないだろうか？

会話のペースが遅いのは確かにストレスだ。

だが、ゲームをクリアすることだけが目的じゃないはずだ。

この「スマホ彼女」という異形との恋にどれだけ心を揺り動かせるか。それが一番大切なんじゃないか？

彼女の言葉に耳を傾けてみよう。

失った気持ち、戻れないあの日、思い出せるかもしれないぜ。