ライター高野京介がインディーデベロッパーを紹介するシリーズ。
今回はキュートなクマや少女が織りなす物語「テラセネ」やB級映画のごとくベタベタなストーリーが魅力の「Kumanta」がスマッシュヒットしている、SleepingMuseum(ふりふら)を紹介したい。
目次
SleepingMuseum(森クマ)の魅力はゆるふわな雰囲気とガチなアクション性
この作者のゲームは、今の100倍人気が出ていいとガチで思っている。
脱力したルックスで侮るなかれ。プレイすれば、ゲーマーにも響くであろう、ハードなアクション性に驚くだろう。スマホの単純操作でできる操作でありながら、繰り返し遊べる育成・強化要素。攻略方法を把握しないと倒せない強敵を網羅している。
多彩な必殺技。多くのゲームのオマージュ。ゲームごとに全く異なるアクション性。エンディングがきちんと用意されたストーリー。そしてなんともチャーミングなキャラクター達。
メロディアスなサウンドは(フリー素材だが)ロマンシング。
どうだろう?30代のスーファミ世代から、スマホRPGに疲れてカジュアルなアクションを楽しみたい層、そしてガチなゲーマーにまでリーチする内容だと思わんかね。
というわけでSleepingMuseum(ふりふら)のゲームを紹介したい。
少女と太陽の悲しき恋焦がしディフェンスゲーム「テラセネ それでも君を照らしたい」
「テラセネ 恋焦がしディフェンスゲーム それでも君を照らしたい」は、太陽の光で灰になってしまう女の子を、太陽になって守るディフェンスアクション。
女の子に近づく悪魔たちを、光を当てて焼き払っていく。だが、女の子が敵に接触してしまうと、傘を落としてしまい、その間に光を当てると、どういうわけか(わかりやすい…)女の子もダメージを受けてしまうのだった…。
最新作では美少女(頭身も低いし、露出もないが)が登場。ピアノの荘厳な調べの中ゴシック&ダークな世界観が展開される。
ゲームとしては太陽のビームを使い分け、少女を守りつつも全方位から押し寄せる敵キャラを撃退するディフェンス・アクションとなっている。
ゲームバランスも良好で、やや難しく、太陽のビームの種類を駆使しないと進めない好バランスとなっている。
傷つける覚悟がなければ、守れない。時にはあの娘をも。太陽と少女の、まるで宝塚演劇のような物語も魅力だ。雑なようで雰囲気のあるイラストもよい。おなじみのクマも登場。
クマがマンタで飛び、米軍が撃墜する、想像の斜め上をいくバカゲーアクション「KUMANTA」(クマンタ)
KUMANTA(クマンタ)は超インパクト なバカゲー弾幕アクション。
クマとなり、マンタで空を飛び、サーモンを乱獲した人間に復讐をすべく、軍隊の秘密兵器たちと戦っていく。
クマンタの魅力は、B級映画的な、無駄なほど壮大なベタベタな演出にある。よく言えば「メタルギア・ソリッド」のような…ありていに言うと「午後ロー」のような感じが、奇天烈な世界観とミスマッチし、それでいて既視感抜群でたまらない。
アクションゲームとしても爽快で、上昇と下降の2ボタン式とスライド方式をとっており、空を飛翔するスピード感、熾烈なる弾幕を回避する高難度…超絶破壊力のボスに挑む高揚感が見事に表現できている。
バカゲーだからこそ最後には泣ける。そう、SleepingMuseum作品はきちんとエンディングまで描かれている。だからこそ高難度でも頑張れるし、クリアしたとき、胸の高鳴りがヤバイのだ。
LINE風のスタンプバトルが熱いアクションRPG「クマVSマから始まる生物図鑑」
「クマVSマから始まる生物図鑑」は、LINE風のスタンプバトルが面白いアクションRPG。
襲い掛かる国家権力の尖兵「マッポ」、クマの天敵「マタギ」。 しかしクマの前に現れたのは人間だけではなかった…
敵の技を回避し、技の出掛かりをつぶす。タイミングと読み合い次第で強化しなくてもボスに勝てる、プレイアビリティを重視した駆け引きがたまらない。スマホながら、まるで格ゲーみたいなバトルが繰り広げられる。
LINEの会話のようなフキダシで繰り広げられる演出、スタンプ風の技もユニーク。
イラストに似つかわしくないヘヴィなバトルBGM(魔王魂さんによるものだ)、そしてドラマティックかつ破天荒な物語が繰り広げられる。
ゆるふわなイラストからは予想もつかないほどスリリングだ。アップデートにより、バランス調整や新技、そしてストーリーの完結や超凶悪なおまけボスも実装しているので、アクションの腕に覚えあるユーザーはレッツプレイだ。
個人的にはクマシリーズ最高傑作。
ファンシーな初期作ながらも硬派なアクション性はすでに確立してたアクション「森でクマさんテラヤバス」
「森でクマさんテラヤバス」は追いかけてくるクマから少女が逃げる、言わばガールズ・サバイバル・ランアクション。
女の子を操り、ジャンプとダッシュを駆使し、クマの攻撃を避けていく。
ゆるいファンシーな絵柄ながらも、当時から硬派なゲーム性を持とうとしていたようである。
当時流行っていたワンキーアクションと呼ばれる、よく言えばわかりやすく万人向けなカジュアル、厳しく言うとわかりやすいゲーム性ながらも、多彩な必殺技を使いこなすクマから逃げるアクションは面白い。
バリエーション豊かなクマの必殺技は既視感もありつつもユニークなものが多く、持っていて緊張感があり、飽きさせない。
苦手な必殺技を避ける練習モード、ノーコンティニューでクリアすると開放される裏モードも実装。ゲーマー心を掴んでいる
今と画風も違うし、つーかだいぶ今よりラフでパンクな作品だが、これはこれで熱い。エンディングまで一気にクリアしてしまえるボリューム感。
LINEスタンプも発売中だクマ
絵、うまくなったなあ…。
なんとSleepingMuseum作品、ほぼすべてのゲームを自分がレビューしていたことに驚いた。実際作品をリリースするごとに新たな要素を実装し、洗練を繰り返している、マイ・フェイバリット・デベロッパーである。
若干の難易度の高さ(だいたいアップデートで改善される)はあるが、はっきりいってコアゲーマーにこそ届いてほしい面白さだ。
SleepingMuseumはSNSも盛んだ。だが語尾は「クマ」になっていて素性はわからない。調べれば出てきそうだけど。スーファミ、初期のPS、サターン…そんな、90年代に青春を過ごした「ハイスコアガール」「ピコピコ少年」世代の人間なのではないだろうかと推測する。
アーケードゲームのような骨太で硬派なアクション性と難度。最近はついに美少女も登場。これからどうなっていくのか楽しみだ。
妙ちくりんなタイトル、ゆるふわキャラで誤解されているところもあるのならそれは勿体無い話でしかない。この夏、忌々しいほどに燃える灼熱の太陽を尻目に、クマや少女と過ごすのも悪くないだろう。
久しぶりに自分のレビューを読み返してみた。数年前の自分は「好き」「面白い」を語ることだけで必死だったのかもしれない。今はもう少し、何がどう面白いかを「伝える」事に責任と、いくばくかの楽しみをもってこの文章を書いている。
生きることは変わることだし、成長していくことだと信じたい。大人になった今でも。SleepingMuseumの新作、これからも期待しまくるクマ。