アニメ・ゲーム・マンガ・声優などのオタクコンテンツに特化したキュレーションメディア「ハッカドール」。このハッカドールの世界観満載のキーボードが利用できる「ハッカドール THE き~ぼ~ど」をご存知だろうか。
特定のことばを入れるとボイスが再生されたり、そのボイスをコンプするとご褒美があるけど鬼畜難易度だったりと、使ってみるとそのエンタメ性の高さに驚かされるキーボードだ。
今回は、「ハッカドール」のプロデューサー・DeNA 岩朝暁彦氏と、「ハッカドール THE き~ぼ~ど」を作ったオムロンソフトウェアの小幡景介氏、そして「ハッカドール THE き~ぼ~ど」のプランナーを務めるカラメルカラムの大野真樹氏に、いろんな話を聞いてきましたよ!
インタビュー後半ではハッカドール体温計とハッカドール体重計の構想にまで波及!
目次
ニュースキュレーションの枠を軽く飛び越え、IP化が進むハッカドール
編集長(以下、編):本日はよろしくお願いします。まず、ハッカドールについて教えていただけますか?
DeNA 岩朝氏(以下、岩):よろしくおねがいします。ハッカドール2014年の8月にリリースしたニュースキュレーションサービスなんですが、一般的なキュレーションサービスとは異なり、アニメやマンガ、ゲームと言った所謂オタク向けのコンテンツがメインになっています。
あとは商品展開だとか、アニメの展開だとかも始まっていて、元々ニュースアプリだったものが、IPとして広がってきているなと感じています。
マジメなIMEが徳島マチ★アソビでハッカドールに遭遇
編:「ハッカドール THE き~ぼ~ど」について、また、キーボードのベースになっているものの全体像についてお聞かせください。そもそも、オムロンというと体温計などヘルスケア製品のイメージが強いと思うのですが。
オムロンソフトウェア 小幡氏(以下、小):オムロンというと、たしかに血圧計とか体温計を作っているイメージがあると思うんですが、昔からWnnという日本語の文字変換システムも作っているんですよ。
小:スマートフォンの時代になると、文字変換ロジックにキーボードのUIをつけてソフトウェアとして出すようになりました。
編: iWnn IMEは搭載端末も多いので、知らずに使っている読者も多いと思いますね。
小:ありがとうございます。そのiWnnIMEなんですが、従来は変換精度高めていくことを頑張っていましたが、近年は発想を転換して新しい価値や楽しみを提供できないかを模索していました。
そんな中でキャラクターとコラボして専用IMEを出せたら面白いんじゃないかというアイデアが出て、企画がスタートしたんです。
たまたまそのタイミングで徳島のイベントでハッカドールを見つけた社員がいて、DeNAさんに相談させていただいたところ、快諾してもらったという流れです。
「何を言ってるんだ?」
岩:オムロンソフトさんから話があったときは「何を言ってるんだ?」という感じでした(笑)キーボードからキャラクターが出てきて喋るんですって言われて、「ん・・・?」って。それは実用性があるのか?と思いましたね。
岩:仕様や条件の話をして、それでもやるなら連絡くださいという話をしたら、「やります!」ってことになって、またビックリしました(笑)「え、ホントに!?」って。
小:何度も仕様について相談させていただいて、「こういうことはできると思います、でもほんとにいるんですかね?」というやりとりがありました。しかし、やはりチャレンジしていきたいというところで、是非やらせてくださいという感じでスタートしました。
編:提案してから開発が始まるまでの期間はどれくらいだったのでしょう?
小:2015年6月に話をして、8月に開発スタート、10月リリースですね。
編:結構スムーズに進んだんですね。大野さんが入ったタイミングは?
カラメルカラム 大野氏(以下、大):開発開始の段階ですね。最初はキーボードを作るって話も聞いていなくて、オムロンソフトさんと一緒にやるっていうことだけ伝えられた感じです。
岩:企画の概要を全部説明する立場ではなく、あくまでも紹介だと思っていたんです。あまり細かく伝えて、伝え方を間違えてしまうのもよくないので、デジタル系のプランナーなんですよって伝えるくらいの方がいいのかなと。
編:全部聞いたとき、大野さんはどう思われました?
大:メールでオムロンソフトさんの名前が挙った時に何を作るのか想像できなかったんですが、面白そうだったから参加させていただいたんです。それがキーボードを作るって話だと聞いて正直驚きしかなかったですね。「なにを言ってるんだ?」って。
「ハッカドール THE き~ぼ~ど」によって没入感が高まる
編:ハッカドールとしてこういうキーボードが出る、出たことの意味はどうお考えですか?
岩:ユーザーの皆さんに喜んでいただいているようです。また、ハッカドールはキュレーションメディアであり、検索エンジンでもあるので、文字を入力することは多いんです。
そのときに「ハッカドール THE き~ぼ~ど」が出てくると、より没入感があるなと。ユーザーさんの反応をみて、オタクっぽいスマホというものが好きな人にはたまらないものだなと思いましたね。
編:オムロンソフトとしてはどうでしたか?
小:ユーザーさんからの評判は、ありがたいことに良いです。こういった試みは初めてだったのでどういう結果になるのか正直分からない部分があって、怖さ半分興味半分という感じだったんですが、いい反応が得られたのでポジティブにとらえています。
Play Store上のコメントやTwitterでの反応も上々です。今までないものができたというのも大きいのではないかと思います。
ハッカドールキーボードの3つの特徴
この後、インタビューは斜め上の方向にぶっとんでいくのだが、その前に一時休憩して、「ハッカドール THE き~ぼ~ど」について詳しく見ていこう。
着せ替え
アニメ「ハッカドール」でハッカドールたちが着ているコスチュームが着せ替え画像になっていて、毎月書き下ろしの画像が追加される。
辞書
アニメや声優、ゲームなどのオタクコンテンツが好きな人向けなので、変換辞書にもゲームタイトル、声優の名前など、普通のIMEでは変換しないような語句が多く収録されている。
変換候補をタップするとボイスが再生
ハッカドールの声優さんに収録してもらった声を単語に当てはめて読み上げる!
「ハッカドール THE き~ぼ~ど」の特徴について整理できたところで、インタビューに戻ろう。
ボイス探しが楽しいんですよね。
編:ボイスは探したくなりますよね。
小:そうですね。コンプというゲーム性があって楽しんでもらえるのではないかと考えています。
編:ボイスのアイディアは誰が発案したんですか?
小:社内でブレストしていて出てきたアイディアです。もともとは一音ずつ声がでていく仕様だったんですが、それだったら単語毎のほうがいいんじゃない?という話になったんです。とはいえ、全部の単語を収録するわけにはいかないので、大野さんにいい感じの単語をピックアップしてもらいました。
大:セリフではなく単語で収録という話だったので、単語だけで面白くするにはどうしたらいいのかということを考えました。単語だけで組み合わせてもなんとなく意味をみつけてくれるようなものだったり、組み合わせると名言になるものだったりという感じです。
編:単語だけとはいえ、結構大変ですよね。
大:1キャラ150ワードで、それが3キャラいるので大変でした。日常的に使う挨拶なんかだけだと全然埋まらないので、他をどう探すかという部分で悩みましたね。
編:思い入れのある言葉ってありますか?
大:アイドルが好きなんですが、アイドルのライブに行くとMIX※っていうのがあるんですよ。これなら単語だけで意味もあるし、知ってる人は分かってくれるなという意味で、気に入っていますね。
同じように、シリーズで探せる単語もあります。麻雀の単語だったりとか。そういった部分で楽しめるのではないでしょうか。
※アイドルのライブでイントロなどに合わせてヲタクたちが叫ぶコールの一種。
編:ついついやってしまいます。探すとやめ時がないんですよね。
ボイスをコンプリートするとご褒美が!
小:キャラごとに、ボイスをコンプリートするとご褒美ボイスを聞くことができるんです。でも、コンプするのは普通に難しいと思います。ボイス一覧の部分にヒントが出てきますが、それでも簡単ではないですよ。
編:コンプした方っているんですか?
小:Twitterでコンプしたって言っているユーザーさんがいましたが、今まで1人しか見てないですね。
やっとハッカドールのキーボードのボイス全部開放したわ 使い道が分からないようなマイナーな単語ばっかりやな(褒め言葉) #ハッカドール
— あすにん (@asuterunin) 2015, 11月 4
※現在確認されているただひとりのコンプリーター、あすにんさん。とんでもない偉業だ。
編:たったひとり!そんなに難しいなんて、コンプさせる気あんまりないですよね(笑)
小:というか、ゲームではないので特に難易度設定をしているわけではないんです。ちなみに、このコンプという機能はリリース2日前にアイディアが出てきたんですよ。
社内でユーザビリティ評価をしていたら「コンプするの難しいから、当然ご褒美あるんだよね?」というフィードバックがありまして、急きょ採用しました。
結構楽しんで何時間も評価してくれたのですが、それでも残り70くらいまでしか埋まらなかったようです(笑) だからこそ、フルコンプした人が現れたことには驚きです。仕様を決めた我々でもフルコンプする自信はないですね。
編:ボイス以外の特典があればもっとやる気が出ますね。
岩:その人の入れてほしいボイスを新たに収録したりとか、よさそうですね。
隠しコマンドもゲームっぽい
小:こちらも実用的な機能ではないんですが、実は隠しコマンドがあって、ハッカドールの声優さんの名前を3回連続でタップすると、キーボードの画面が切り替わってボイスが流れるんです。
小:変換候補のとことろに「0/3」というように数字が出てくるので、意外と気づいてくれるユーザーさんは多いです。
待望されるiPhone版は・・?
編:これ、会社の上の人に説明するのは難しくなかったですか?
小:ボイスはまだいいのですが、イラストはちょっと気を使いましたね。
編:Android向けしかないですからね。iOS用をリリースする予定はあるんですか?
小:具体的な時期はわからないですが、現場レベルではやりたいと思っていて、現在頑張っているところです。ハッカドールの声優さんたちもiPhoneを使っていらっしゃるので、iOS版がでたら是非使っていただきたいです。ニコ生にも、「iOS版はないの?」というコメントがたくさん流れていたので、前向きに検討しています。やはり両OSで使えることも重要だと思っているので。
編:ちなみにハッカドール自体はiOSの方が多いんですか?
岩:そうですね、ハッカドールはiOSユーザーの方が多いです。
編:それだと確かにiOS版がないのはちょっと寂しいですね。ハッカドールキーボードの利用者はどれくらいいるんでしょうか?
小:Play Storeでのダウンロード数は5000~10000と表示されるので、そのくらいです。ハッカドールを使っているAndroidユーザーの5〜10%くらいいけたらいいなと思っています。[MO7]
もっと使ってみてほしいと思っているし、一度触っていただければ、予測変換なんかもアニメなどが好きな人にささるようになっているので便利に使っていただけると思います。
また、ハッカドールとの連携は実装したいですね。今はキャラが見えたりという部分しかないですが、入力したユーザーのキーワードが連携してハッカドールでのキュレーションに役立ったり、ハッカドールで検索したワードを学習してキーボードの変換候補に出てきたりとか、ハッカドールとハッカドールキーボードがセットになるような感じにはしたいです。
岩:このキーボードをきっかけにいろいろな挑戦ができたらいいですよね。
※ここから話が大幅に逸れていく(ここからは誰の発言かは”あえて”伏せます。誰かわかるのもあるけどね)
〇〇〇で測るしゃべる体温計を作ったら?
※以下、DeNA、カラメルカラム、編集部で斜め上に話が盛り上がった様子をお送りします。
?:キーボード以外…体重計とかもよさそうですね。
?:痛体重計みたいな。いろいろ話しかけられたら乗る動機になりますし。
?:ダイエッター向け、筋トレ中の人向けみたいな感じにしたら面白そうですね。
?:スマホみたいに着せ替えたりしたいですねー。
?:それって、そのキャラが好きな人は踏めるの?
?:体温計も是非。すごく心配してくれるのとか、ツンデレなのとか。
?:学校とか休みたい人向けに、嘘の体温教えてくれたりとかしても面白そうですよね。
?:シェアボタンでツイートできるとかも面白そうですよね。
?:最先端ですよね。
?:シャレがきいてるし、あったら買っちゃいますよね(笑)体温計ってそんなに差別化がないし。基本性能が同じなら喋る方が面白いですよね。
?:体温計ならおしりに入れてもいいですよね、そういうのもありますし。
?:おしりに入れて、しゃべったら完璧ですね。
?:実際作るとなった場合ライセンスの方は大丈夫ですかね?
岩:全然いいんじゃないですかね(笑)
編:おしり体温計の話はまたじっくりすることにして、最後に一言ずつお願いできますか?
小:はい(笑) 「ハッカドール THE き~ぼ~ど」は新しい取り組みのアプリなので、一度使ってみてほしいですね。これを応援していただけると今後もいろんなものが出せると思います。
大:オムロンソフトさんが楽しんで開発しているのがとてもいいなと思いました。ゲーム会社っぽい乗り(思いついたから実装しようみたいな)フットワークもよかったので、一緒にやれて楽しかったです。体温計のときも是非アイディアを出させていただきたいです。
岩:このキーボードはいいチャレンジだったと思います。しかし、一つのプロダクトが永遠につづくということはないので、次なるチャレンジ(体温計など)をやっていただけたらさらにいいことができんじゃないでしょうか。
編:みなさん体温計が作りたくてしょうがないみたいですね。今日はありがとうございました!
編集後記
いやはや、存在しないプロダクトでこれだけ盛り上がるとは…w夢が広がりますな。
話にも出ましたが、キーボード以外の物も「ハッカドール THE き~ぼ~ど」の人気が増えればあるいは…