自社の強みをいかし、「女性向け恋愛ゲーム」市場において圧倒的地位を築いた“ボルテージ”。
2012年6月期の売上は80億6600万円と、前年比で27.1%の売り上げ増を達成している。昨年末からはテレビCMも放送され、「恋ゲーム」の認知度はますます拡大している。
一方で女性向けゲームのマーケティング、プロモーションは男性向けゲームに比べて難しく、苦戦している企業も多い。
ボルテージの好調を支える要因について、今回は快進撃を続けるボルテージの東副社長にお話を伺うことができた.
そこから見えてきたのは、世の女性に対する真摯な姿勢だ。
目次
若い女性の5人に1人、課金ユーザー400万人を目指す。
女性向けゲーム市場は、今後どうなっていくと思いますか?
東氏:
まだまだ伸びると考えています。会社としても拡大期と捉えて人員も増やしています。
現在は月に約40万人が課金ユーザーなんですが、これが月に400万人くらいまで、若い女性が2000万人だとして、そのうち5人に1人くらいがやっていただけるくらいまでもっていきたいなと思っていますね。
スマホユーザー向けに「復讐モノ」を製作中
女性向けゲームをフィーチャーフォンでリリースされて以来、これまでキャリア公式サイトをメインにされていると思いますが、プラットフォームは今後もしばらくはキャリア公式を優先される予定ですか?
東氏:
今のところはキャリア公式サイトを最初に出してその後ソーシャルアプリとスマートフォンアプリに展開するというのがまだ主流になっていますね。
ただ、実は12月に初めてスマホ向けに企画したゲームをローンチする予定です。
というのもスマホのユーザーさんはちょっと年齢層が上なものですからドラマの内容も恋愛だけじゃなくてちょっと悪女っていうのがテーマで、復讐すべき男性に恋をしてしまうというストーリーになっているんです。
スマホアプリでどうやったらユーザーさんが一番楽しんでくださるのかということにフォーカスした初のタイトルになります。
スマートフォンで改めておもったのは、ユーザーさんはやっぱりストーリーを読みたいんだなということですね。
スマホアプリでは、あれこれおまけをつけたり、ソーシャルアプリの要素を入れたりするよりは、読むことに集中できるようにしてあげたほうがいいのかなと今は思っています。
ただ、ソーシャルアプリ版を楽しんでくれているユーザーさんも沢山いるので、結局は、そのバランスが非常に難しいんですが…。
GREEさんやモバゲーさんでの配信に加え、この8月に「女子ゲー」という自社のソーシャルPFをスタートしましたが、そちらではソーシャル要素がしっかり入っています。
CMではあえて「ゲーム」とはいわない
マーケティング・プロモーションについてはどうお考えですか?
東氏;
コア層に向けて作ろうという感覚は全く無くて、テレビドラマ、映画、マンガ、小説と同じようにカジュアルに楽しんでもらえるものとして、「特別なものじゃない」という打ち出しをしていますね。
CMでもあえて「ベツカレ」などのキーワードを作ってゲームと言わず新しいエンターテインメントコンテンツ、新しい楽しみかたとして打ち出していますね。
109の屋外広告などもやりましたけれども、「いわゆる乙女ゲーでしたり萌えゲーはちょっと・・・」という人が、「あれ、これ(乙女ゲーとは)違うものなのかもしれない」と受け取ってくれて、それで裾野は広がったと思いますね。
スマホプロモーションはまだ模索中
スマホでのプロモーションはいかがですか?
東氏:
スマホの広告はガラケーに比べて単価が高いじゃないですか。我々はいくら広告費を出して、いくらお客さんがお金を払ってくださるのかを非常に重要視してかなり数字を問うので、スマホは単価が上がっている分効果としてはまだまだ苦戦というか、模索して行かないといけないなと思っています。
口コミよりも1つのコンテンツの長大化を狙う
スマートフォンが普及するにつれてソーシャルメディアを通じた口コミがこれまで以上に重要視されるようになってきましたが、そのあたりはいかがでしょうか?
東氏:
ソーシャルの方は招待なんかでの広がることもありますけれども、どちらかというと友達を誘って、というよりは自分一人で楽しむ要素が強いのでファンを増やすことはやりますが、口コミを狙った特別なことはしていないですね。
それよりは、ひとつのコンテンツに入った方に、なるべく長くたくさんのコンテンツを楽しんでいただくことの方が重要ですね。
今は「シーズン化」というのも進めていまして、昔は月1本のペースで新しい設定のコンテンツをローンチしていたりしたんですけども、今は数を絞って出して、人気の出たコンテンツを大事に育てていこうとしています。
ですので企画の段階でシーズン4くらいまで想定してつくるようになっていますね。それと海外でも受け入れられる世界観かというのも、重要な要素にしています。
ゲーム会社ではなく、スタジオ。ジブリやピクサーのような。
企画制作について心がけていることはありますか?
東氏:
最初の企画はかなり練ります。女性が本質的に恋愛に何を求めているかという普遍的な部分と時代のテイストをあわせたものを常に考えながら企画をだしていますね。
そのために、若い女性の社員に今どんなものがはやっているかとか、どんな男性像がいいかとか、等身大のレポーティングは常にやってもらっていますね。
あとはやっぱり引き出しを増やせというのは鬼のように言っていまして、それはゲームというよりはドラマ、映画、小説、マンガ、ヒットしたものは必ず見なさいよとは話しています。
それから社長の津谷がもともとロサンゼルスのUCLAで映画づくりを学んでいたので、ハリウッドの映画の作り方、三幕構造というんですけれども、1幕目でどんなことがおきなければいけないとか、最後はどう締めなければいけないとか、ドラマ作りというのは社長自ら徹底的に教えていますね。
技術的にもしっかりやっていかなくてはいけないと思っていますが、それよりもドラマというものをきちんと作って提供していきたいと思っています。
わかりやすくいうと、ここ(オフィス)はスタジオだと思っていまして、ジブリさんであるとか、ピクサーさんというか。そういったイメージで(ゲーム会社というよりは)コンテンツのメーカーという意識が非常に強いです。
現代女性のための「日々の癒しコンテンツ」を提供していく
東氏:
現代女性は社会進出もあって仕事もあるし、家事もあるし、子供が居らっしゃる方は育児もあるし、結構プレッシャーとか責任とかがあると思うんですね。
しかも、女性はまじめなので悩んで抱え込んでしまうことも多いし。我々のゲームを寝る前に5分だけプレイすることで自分を肯定してあげて、ちょっときゅんとしてあったかい気持ちになれるというところが一番うけているんじゃないかと思いますね。
男性は結構そういったストレス発散のツールがたくさんあると思うんですけど、女性ってなかなかなかったんですよね。
映画・小説・マンガを含めて世の中を見渡しても非常に少ないので、少し〝社会貢献的に〟(笑)、良質な作品を継続的に提供していきたいな、 と思っていますね。
編集部の女性陣も部内でのストレスを御社のゲームで発散させているようですよ。いつもお世話になっております。本日はお忙しいところありがとうございました!
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