Pine: A Story of Loss(パイン:ストーリー・オブ・ロス)
Fellow Traveller
アドベンチャーゲーム
Android:750円 iOS:無料
大切な人を失った痛みが少し和らぐ…!妻を失った木こりの心情を音楽とアニメで表現したアドベンチャーダウンロード(Android) ダウンロード(iPhone)
一人のきこりの喪失感をアニメーションと音楽で描くインタラクティブ・ムービー的アドベンチャーゲーム
「Pine: A Story of Loss(パイン:ストーリー・オブ・ロス)」は、妻を失った一人のきこりの喪失感を、アニメーションと音楽によって描くインタラクティブ・ムービー的なアドベンチャーゲーム。
主人公は、妻を失い、一人で暮らす木こり。本作は彼の日常を描いていく。ただし、セリフやナレーションなど言葉を使った演出はゼロ。すべてはアニメーションと音楽によって語られていく。
主人公は喪失感こそ抱えているものの、ごく普通に暮らす人間。なのでその日々も、特別なものじゃない。その日毎のちょっとした変化はあれど、おおむね同じような日々が続いていく。
でも、だからこそ、心に響く。大切な人を失った経験を持つ人なら、本作を通して静かな癒しを得られるだろう。
基本操作はタップとスワイプ!行動を通して感情移入
本作の基本操作は、タップとスワイプ。それぞれ固有のアクションが割り振られているわけではなく、場面に応じたアクションがその都度割り振られる。
たとえば木を切る場面であればスワイプで木を切ることができ、水を汲む場面であればスワイプで水を汲むことができる…といった具合。操作が必要な際は画面にUIが表示される上、操作しないとゲームが進まないので、操作に困ることはないだろう。
ゲームを進めるための操作というより、主人公に感情移入させるために操作が用意されている…という印象を受けた。
iOSは無料体験可能!フルプレイには課金が必要
本作はAndroid版が有料で提供されているが、iOS版は無料で提供されている。
しかしiOS版も無料ですべてプレイできるわけではなく、最後までプレイするためには課金が必要だぞ。
では、課金するほどの価値があるのか…という点については、個人的に喪失経験の有無が評価を分けると感じた。
小説や映画のように、物語世界を静かに味わうタイプの作品なので、趣味が合わない場合はまったく楽しめない可能性がある。そして、趣味が合う/合わないを分ける要素が、喪失経験だろう。
大切な人を失ったことのある人であれば心に刺さり、本作から癒しを得ることができるように思う。
「Pine: A Story of Loss」の魅力は喪失感への癒し
人であってもペットであっても、大切な存在を失うという経験はとてもつらい。
筆者は、10年以上前に祖母を亡くした。父親や母親がおらず、祖母に育てられた筆者にとっては、たった一人の親を失ったかたちになる。正直、「つらい」という言葉では足りないほど、つらかった。
「親しい家族を失うと、心に穴が開いたかのようにつらい」…そんな話を、情報としては知っていた。だが、情報と実際の体験では大違い。つらいというより、感覚としては痛みに近かった。しかも、半身がもがれたのではないかと思うほどの激痛。
当時は、毎日のように「どうすればこの痛みが癒えるのか?」と考えていた。
ただ、もしも当時本作があったなら、少しだけ痛みが楽になっていたように思う。
だから、もし当時の筆者のように、喪失感に苦しんでいる人がいたなら、ちょっと心が落ち着いた時でいいから、本作をプレイしてみてほしい。
よみがえる記憶!過ぎていく日々
大切な存在を失ったとしても、毎日の時間は容赦なく過ぎていく。筆者はこれが苦しかった。
これまでと同じような毎日なのに、そこに大切な人だけがいないのだから。同じような毎日なのに、同じではない。
けど、朝起きてご飯を食べて、仕事をして寝て…という具合に、結局やることは毎日同じようなこと。だからこそ、ふとしたきっかけで昔の思い出が蘇ってしまい、それが喪失感を掻き立てることになる。これがとても、苦しかった。
本作の主人公である木こりも、まったく同じ状況に置かれている。
本作で描かれる毎日は、同じようなことの繰り返し。だからこそ、ふとしたことで妻の記憶思い出す。それは楽しかった思い出だけど、楽しかったからこそ喪失感を書き垂れる。
…こう書くと、本作は喪失感を持つ人間に同じ苦しみを再体験させているように感じられるかもしれない。しかしこれが、そうではない。主人公である木こりの姿を通して、癒しを得ることができるのだ。
痛みは消えない!けど少しずつ軽くなっていく
なぜ本作の描写が癒しにつながるのか?それは、木こりの姿が、痛みに寄り添ってくれているように思えるから。
どうも、大切な存在を失ってしまった痛みというのは消えないらしい。10年以上たった今でも、筆者は祖母のことを時折思い出して悲しくなる。周りの人に聴いても、やはり痛みが完全になくなったという人はゼロだった。
では、どうすれば痛みが癒えるのか?筆者の場合は、人が寄り添ってくれることだった。人が寄り添ってくれることで、少しずつ痛みが軽くなっていく。友だちが相談に乗ってくれたり、仕事関係の人が配慮をしてくれたり。そんな経験によって、少しずつ痛みが軽くなっていった。
こうした自分の経験を踏まえれば、病と闘う人や、事故の記憶と戦う人がコミュニティに参加し、他の人と体験をシェアするというのも頷ける。
本作もまた、木こりが自分の体験をシェアし、こちらの痛みに寄り添ってくれているようだ。
筆者は喪失感に苦しんだ当時に本作と出会いたかったと書いたが、たとえ今であっても本作と出会えてよかった。人生を通して、忘れられない一作だと思う。
ゲームの流れ
タイトル画面で「スタート」をタップするとゲームがはじまるぞ。二回目以降のプレイでは、「コンティニュー」が出現する。
また、iOS版でフルプレイしたい場合、「製品版をアンロックする」から課金が可能だぞ。
「闇がより濃くなるのは、光が存在しないときよりも、存在していた光が消えたとき」…この言葉は、大切な人を失った人にとって強く心に刺さる言葉だろう。
ただそれは、同じようない心の痛みを抱えている人が、他にもいることを示している。そうした人たちは、直接的に何か癒しを与えてくれることこそないだろうが、その痛みを理解してくれるハズ。
ゲームがはじまると、しばらくは針葉樹の映像が続く。やがて一本の針葉樹に鳥が止まると、画面にブルーのマークが表示される。
このブルーのマークは「タップ」を示している。画面をタップすると音が響き、物語が進行するぞ。
木が倒れ、主人公の木こりが姿を現す。ここでもブルーのマークが表示されている。タップしてみよう。
タップすると木こりが斧を振り下ろし、木を切断していくぞ。木こりにとっては当たり前の毎日…なのだろうが、どことなく寂し気に見える。
木を切って家に帰った後は、毎日のルーチンを繰り返すかたちになる。やるべきことは、栽培している野菜の収穫と水汲みと草刈り。
基本的に同じルーチンを繰り返すわけだが、日によってルーチンに微妙な変化が生まれる…。
「Pine: A Story of Loss」の攻略のコツは穏やかな環境で一人でプレイすること
本作は、アニメーションの間が長かったり、ストーリーが明確でなかったり…と、一作のアドベンチャーゲームとして見た時に欠点といえる部分が少なくない。ただこれらは決して欠点ではなく、むしろ本作の長所といえるだろう。
ゆったりとした間、プレイヤーに委ねられる物語…といった体験を通すからこそ、本作は喪失感にともなう癒しを表現できている。
だからこそ、逆に「アドベンチャーゲームを攻略する」という意識でプレイするのはまったく意味がないとすらいえるだろう。
本作をプレイする際には、ゆったりとプレイできる穏やかな環境で、一人でプレイするのが必須だと思う。
穏やかな環境でプレイ!作品世界に浸ろう
本作をプレイするのに相応しい環境は、周囲に人がおらず、静かな環境。代表的なのは、自分の部屋だろう。満員電車の車内などもってのほかだし、他の人がいる以上、カフェなども避けた方がいい。
自分の部屋で、やわらかなベッドや布団、ソファなどに座って。できれば暖かい飲み物も用意しよう。そして、ゆったり楽しむ…。
何にも邪魔されず本作の作品世界に入り込み、作品がもたらす癒しを最大限味わえる環境でプレイするのがオススメだぞ。
パズル的要素もあり!難しくはないが…
なお、本作は基本的に謎解き要素を持っているわけではないが、ところどころパズル的なミニゲームが登場する。
といっても難易度は控えめ。謎を攻略することより、パズルを通して主人公との一体感をはかることが目的なのだろう。
難易度控えめと書いた通り、解くのに苦戦することはないハズ。けど、パズルが苦手な場合、時間がかかるかもしれない。そんな時は、この記事の画像を参考にしてほしい。解けない時間が長く続くと、せっかくの没入感が冷めてしまうもんね。