Florence(フローレンス)

Florence(フローレンス)

パブリッシャー Annapurna Interactive

ジャンル 恋愛ゲーム

価格 Android:330円 iOS:370円

いつもと同じつまらない景色も、きっと違ってみえる。『Monument Valley』作者による、センスフルな恋愛ゲーム

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Florence

満員電車。SNS疲れ。そして、恋のはじまりとおわり。

極上のインタラクティブ・ストーリーブック

Florence(フローレンス)イメージ

「Florence」は、傑作

そして、普遍的な恋と人生を描いた、センス・オブ・ワンダーな恋愛アドベンチャー。

プレイヤーは若い女性の初恋を、恋人と出会った日から、訪れる衝突、お互いの成長などを追体験していく。

忘れがたい物語

Florence

時計を回すと思春期が終わり、友だちたちと疎遠になっていく。時間の流れを痛感する良演出。

仕事やSNSに少し疲れている、現代の平凡な日常に生きる、どこにでもいそうな女主人公、フローレンス。

ある日、クリシュという名前のチェリストに出会い、彼女の世界観はガラリと塗り替わっていく…。

ミニゲームの1つ1つの操作感と演出が、プレイヤーを彼女に感情移入させるトリガーになっており、本作を傑作たらしめている。

主人公の心象を表現するミニゲームたち

Florence

同居をはじめていらないものをダンボールにつめるシーン。

名作『Monument Valley』のリードデザイナー、Ken Wong氏が製作しただけあって、手書き風の小気味よいイラスト言葉を最小限に廃した演出、一つ一つが最大限に効果を発揮している。見事だ。

ノベルやコミックを操作して物語を進める手法は、スマホとの相性も抜群であり、「FRAMED」などに通ずる気持ちよさがある。シンプル操作で誰もがエンディングまで楽しめるだろう。

Florenceの特徴は恋愛や人生をゲームで描ききる鮮やかな手法

Florence

時として画面は横向きへ。彼の弾くチェロの調べに心浮かれる様子。

誰にでもどこにでもあるような、ありふれた恋愛描写を「特別」に思わせる、鮮やかに切り取っていく演出。絶賛を贈りたい。

出会った時の高揚感、打ち解けるまでのもどかしさ、そして倦怠期。胸が痛くなるほどに切実に描く。

疎遠になった幼馴染み、口うるさい母親…部屋を片付けたり、をゲームとして見事に表現できている。プレイヤーは知らず知らず主人公に感情移入しているだろう。すごい。

普遍的な感情を描くゲーム性

Florence

いつしか絵を書くのが好きだった主人公の机が汚れていく…。時間の経過を本作はほんとうまく描いている。

多くの恋愛を描くゲームは、過剰にキャラやシチュエーションを美化し、結果として非現実的になる場合が多い(それが魅力でもある)。

本作は恋愛の、現実的な、どこにでもあるようなシーンをゲームに落とし込んでいる。結果として、ゲームで表現しにくい感情移入を呼び起こす。すごいことだ。

スタイリッシュな映像表現にも注目

Florence

心配するがゆえに口うるさいお母さんからの電話。拒否してもすぐかかってくる。

もちろん、コミックテイストのおしゃれなグラフィック、映像表現もまた素晴らしい。演出のために横向きになったり、スクロールしたりと凝っている。

ヘッドホン推奨だというBGMも、本作の魅力をさらに底上げしている。オープニングのピアノ曲を聞いた瞬間に、心が洗われるようだった。いやー面白い。

ゲームの流れ

Florence

主人公は中華系の女の子、フローレンス。

目覚まし時計をタッチする。歯を磨く。などそういう動作をタップやスライドで行っていく。

Florence

イラストが好きだったのに続けているOLの仕事。

パズルとしては同じ数字を合わせていくシンプルなもの。機嫌がいいとスムーズに終わる演出がユニーク。

Florence

画面が横向きになる出会いの場面。

チェリストのクリシュはインド系の青年で、音楽の道にすすみたがっているようだ。

Florence

デートして、喧嘩して、仲直りして、やがて二人は暮らし始めた。

荷物を整理して一緒に寝て、ラブラブだったのに。気まずい。

Florence

いつしか季節は二人を変えていく。

簡単にできたはずのパズルは組み合わない。こういうゲームとしての演出が、二人の心象をプレイヤーと結びつける。これぞ、インタラクティブ。

Florence攻略のコツ

Florence

口喧嘩は勝っても負けても進む。どちらを選んでもいい場合も多い。

ゲーム要素は少なく、プレイ時間は1時間弱ほどだろうか。恋愛アドベンチャーじゃなく、電子ブックのようなニュアンスも強い。

選択肢に正解がない場合も多い。攻略のコツ、も必要ないようなミニゲームも多いが一応つまづきそうなところを書いておこう。

ゲームとしての難しさはほぼ皆無。

Florence

一番わかりづらかったピントを合わせる出会いのシーン。ランダムでぐるぐる回したほうがいいかも。

物語は一本道で分岐もない。ミニゲームも、つまづくような難関はほぼないと思うが、序盤のころんだ時、視界のピントを合わせるところは若干わかりづらいかも。

明瞭になるように左右のゲージを回転させていくのだが、だいたいのアタリをつけたら両方をゴリゴリと回せば正解に早くたどり着けるかも。無粋かな、このアドバイス。

ゲームに360円払う事を、高いと思わないでほしい

「いつもと同じつまらない景色が違ってみえる」これはネットで話題になったゼルダの最新作のレビューの言葉だが、優れた作品はえてして現実をも、美しく、面白く、新しくする力があると思う。綺麗事じゃなく。

そして本作「Florence」もその1つだと強くおすすめしたい。360円。昼食一回分に満たないお金で、こんな新しい気持ちになれる。僕は幸せだ。