【注目デベロッパー】Daigo Studio〜ドット絵だからこその残酷表現。強烈な読後感を残す謎解きアドベンチャーの旗手

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執筆者:高野京介

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ライター高野京介がインディーデベロッパーを紹介するシリーズ。

今回は新作「潮騒の街」、そして新作のリリースが待たれる、ドット絵の名手、Daigo Studioの作品を紹介したい。

最新作 「潮騒の町」事前予約受付中!

「潮騒の街」は、Daigo氏とシァン氏との合作アドベンチャー。近日公開予定、とのこと。

都会の生活に疲れ、海の見える街へ移り住んできた青年。
「潮騒の街」での様々な出会いと別れは、彼の心を変えてゆく……

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実写映画化された「つぐのひ」シリーズなど、数々の人気フリーゲームを手掛けてきたImCyan氏が2010年に発表した短編アドベンチャーのリメイク作品。

戦闘や謎解きはなく、ストーリーを見せることに専念したつくりで、ゲームの苦手な方でも楽しめる、原作者監修・協力のもとグレードアップした、優しく切ない物語とのこと。前二作とはテイストの違う雰囲気を味わえそうだ。

そして、Daigo氏原作による新作もTwitter上でアナウンスされている。

Daigo Studio最新作は「無人島を舞台にした冒険活劇」

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無人島を冒険!ドット絵は、さらに磨きがかかっている。Stardew Valleyのような…、温かみがある描き込みに冒険心が煽られる。心惹かれずにはいられない。

そして、作品のボリュームアップも示唆している。いままでよりも少し長めのものにチャレンジしたい、とのことだ。期待して待ちたい!

※画面は開発中のもの。

Daigo Studioの作品の魅力〜ドット絵だからこそ描ける残虐表現

サンフランシスコでモバイルゲームを作っているというDaigo氏。だが、彼の作風であり、最大の魅力は、日本のRPG的なドット絵と鮮烈なストーリーテリングにある。

わかりやすく言うと任天堂「Mother」シリーズ、あるいはフリーゲーム「ゆめにっき」的なドット絵。あるいは「ロマンシング・サガ3」のような…。スーパーファミコンの名作、ゲーム黄金時代のドット絵を踏襲した、ドット絵の鮮やかさはリリースを重ねる度に洗練されていく。

そして、ネタバレには配慮して記述するが、彼の作品は非情にブラックな、残酷表現が多い。ほのぼのとしたドット絵だからこそ描ける表現であり、その強烈なギャップに自分はノックアウトされてしまった。Daigo Studio作品は、あたかも優れたショート・ショート作品のように、数時間でエンディングまでたどり着ける(それも魅力だと思う)。だからこそ、鮮烈な読後感を残す。

それでは現在リリースされている2作品を紹介したい。

最愛の人を殺した過去を変えるミステリーRPG「償いの時計」

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「償いの時計」は、ストーカー男が「大事なヒト」を殺した過去を変えるミステリーRPG。

一方通行の狂った愛を募らせた「俺」は最愛の女性を手にかけてしまう。
途方に暮れていると、街角で怪しい男に声をかけられ、「償いの時計」を受け取る。。
時の巻き戻し・早送りができる時計を手に、「俺」は冷たい彼女が待っている家へと舞い戻る。

しかし、過去を改変しても、改変しても、彼女を追いかけ、拒絶され――
再び、彼女を殺してしまう。

惨劇のループを止めるべく俺は何度も時を遡り、室内に仕掛けられたギミックを作動させ、彼女が生き残る未来を探しはじめる。
だが…。

この作品の魅力は、もちろん、短編だからこその、緊張感のある物語と構成だが、それ以上に強烈な「胸糞悪さ」「後味の悪さ」にあると思う。ドット絵RPGの体裁だからこそ、ご都合主義や、善意に満ちたキャラクターに対するアンチテーゼが炸裂する。善悪の彼岸の果てを、何度も何度もバッドエンドを観ることによって追体験するのだ。

なお、PC版と違うエンディングも用意されている。ぜひアプリでの再プレイをおすすめしたい。

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弟を救うために夢の世界を彷徨う。ちょっぴり不気味なドット絵アドベンチャー「しあわせのあおいとり」

弟と一緒にお祭りへいった夜、君は不思議な夢を見た。 そこにいたのは奇妙な鳥頭と出口のない森。 アイテムやヒントを駆使して、パズルを解いて夢から脱出する。

映像面において、前作から目覚ましい進化を遂げた新作だ。描きこまれたドット絵には「マザー2」や「アンダーテール」を、幻想的な夢の世界のBGMに「クロノトリガー」を思い出す人もいるかもしれない。かわいらしいキャラクターだからこそ、後半の怒涛の展開の衝撃は非常に大きい。

両作とも2DRPGのような脱出ゲームで、プレイ方法はシンプルでわかりやすい。携帯電話を使うことでヒント機能も活用可能。

そして詳しくは書けないが、ヒント機能という、脱出ゲームによくある「お約束」が最大の「トリック」になっている手法が見事だ。詳細はプレイして味わってほしい。やはりプレイヤーに心の傷を残す含みのある2つのエンディングが用意されている。

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Daigo studio作品の魅力はお約束に対する強烈なアンチテーゼ

レトロRPGのようなドット絵、懐かしい雰囲気。だからこそDaigo Studio作品は心に刺さる痛いほどの残酷描写を可能にする。そしてその根源には「悪人は更生される」「主人公は救われる」というRPGの、ひいてはゲームのお約束へのツッコミ、もっと言うと破壊にあるように思えた。

「しあわせのあおいとり」でも、予想はしていたがドット絵の映像表現でも一番エグい描写が待ち受けている。プレイヤーに「罪悪感」「嫌悪感」をも抱かせる読後感は類をみないものだった。かつ短時間のボリュームのため、集中してプレイできる。

Daigo Studio作品、新作も楽しみだ。今後も追いかけていきたい。

Daigo(Daigo Studio)作者Twitter

執筆者: 高野京介

ゲーム音楽に多大な影響を受けたギタリスト。

「地球防衛軍シリーズ」「MOON」「さよならを教えて」「洞窟物語」「ロマンシング・サガ」シリーズなどが大好き。

激辛料理、サウナ、もつ焼きなどが好き。好きな水風呂の温度は16度。

愛するラーメンは荻窪の「味噌っ子 ふっく」。
スマホゲームのオールタイムベストは「ヒュプノノーツ」。