特型駆逐艦の真価を示した艦艇。
同じく吹雪型の「白雪」の僚艦。
それが―――
駆逐艦「初雪」
1943年7月17日に150機もの艦載機による航空攻撃を受け、ブーゲンビル島ブイン沖へ沈んだ特型駆逐艦3番目のネームシップの結末を語ろう。
嫌な予感してたし……いいよ、もう by初雪
駆逐艦「初雪」
初雪は旧日本海軍の駆逐艦。
吹雪型(特型)駆逐艦の3番艦(雪級3番艦)。
1937年の「支那事変(日中戦争)」以降から「白雪」を僚艦としてほぼすべての作戦に参加していく。
「上海上陸」「杭州湾上陸」「北部仏印進駐作戦」―――
そして、太平洋戦争では、第十一駆逐隊で三水戦に所属し、数々の戦果をあげる。
「エンドウ沖海戦」では豪駆逐艦「ヴァンパイア」を撃破、及び英駆逐艦「サネット」撃沈。
「バタビア沖海戦」では米重巡「ヒューストン」と豪軽巡「パース」を撃沈。
正に特型駆逐艦の真価を発揮した艦艇だった。
その最後―――
1943年3月の「ビスマルク海海戦」から、「初雪」の運命は大きく変わっていく。
この海戦には、「初雪」は不参加だった。
輸送船が全滅し、駆逐艦も4隻沈没という大敗北。
ここで沈んだ駆逐艦の1隻が僚艦であった「白雪」だったのだ。
特型駆逐艦のネームシップとなってしまった「初雪」は、多くの駆逐艦と輸送任務を遂行していく。
7月5日に勃発した「クラ湾夜戦」で「長月」「新月」が座礁、その後沈没。
「初雪」も爆撃を2発直撃。幸運にも双方とも不発弾だった。
続く「コロンバンガラ島沖海戦」で旗艦「神通」の沈没を持って二水戦司令部は壊滅し、日本軍としての戦力は大きく低下してしまう。
そして、運命の7月17日―――
ブインで「初雪」が輸送物資の陸揚げ中のコト。
「初雪」に襲い掛かったのは―――米艦載機150機、大型爆撃機19機。
停止状態で、投錨している為、回避もできない状態。
緊急に錨を切断したが、移動は間に合わずに艦首に至近弾、電信室に直撃弾と続けざまに攻撃を受けてしまう。
船体は徐々に沈下―――浅瀬に着底し、艦橋とマストを海面に出したまま沈没。
こうして、特型駆逐艦3番目のネームシップは、ブインの海で最後の時を迎えた。
「初雪型駆逐艦」という名称は、その後も改定されるコトなく使われ続けていくコトとなる。
「初雪」の名は、残り続けたのだ。
大海に還った魂に敬礼―――