誕生日を忘れずに祝ってくれるみんな。
「みーんな シンタローさんのこと
待ってたんスから!」
「こーんな 大事な日に 夕方まで
寝てるなんて どうかしてますよ!」
センゴクやサナちゃんが声をかける。
他の4人も、あの繰り返した夜より、明るい表情をしている。。
飲もうぜ!というサクラバ。
それをたしなめるミヤコ。
だが、シンタローには行かなくてはいけない所があった。
「お祭の夜 展望台で待ってます」
クールに、だが優しく送り出すクジョウ。
「用事が終わったらみんなでお祝いしてあげるから!」
そう言うチヅルにも、もう暗い気持ちはない。
展望台へ、向かおう。
ナナミは、シンタローにプレゼントを渡す。
あの日、渡せなかった、天狗待宵花を。
ナナミはシンタローに、あの日言えなかった言葉を告げる。
この先何かが起こって、突然会えなくなったりすることもあるかもしれないから、
好きな人には好きだって伝えられる時に…いっぱい伝えておきたいんだ。
取り返しのつかない過去にとらわれてきたシンタローには、
その言葉の重さが痛いほど伝わった。
シンタローは、少しせっかちだけど、こう返した。
「僕と結婚してください」
歯が浮くような展開。
そして、普通の言葉だけど、ここまでやりこんだ人には、この言葉はきっと響いたと思う。
シンタローが、繰り返すループの中で、誰と戦うわけじゃないけど、けっして負けなかった頑張りを見てきただろうから。
長かった8月14日が終わろうとしていた。
花火が上がる。
今度こそ、本当のエンディングだ。
そして、彼女が最後に言った言葉は――
「ずっと一緒に いてください」
「エンディングまで泣くんじゃない。」
1989年に出た「MOTHER」というゲームのキャッチコピーは、そんな言葉だった。
やっぱり無理だった。
あとがき
性格の悪い自分は、初回プレイ時、たくさんのバッドエンドを予想してしまった。
ゴルフ場の建設会社やクジョウが黒幕だったり、ナナミの兄、シュウイチが、本当に彼女を殺した真犯人だったり、シンタローがチヅルやミヤコと怠惰な恋愛をしてしまったりする展開を。
このゲームは、タイトルロゴや展開に、泣きゲーの名作「AIR」を引き合いに出されることが多かったと思う。
僕もわかりやすさを優先して、そう書いたし、そういう言い方をしたから、興味を持ってくれた人もいる。
タイトルで流れるBGMも、AIRの名曲「夏影」を感じた。
だが、このゲームの魅力は、たくさんのバッドエンドになりかけた物語を、使い古された絶望に屈しなかったヒューマニズムにこそあると思う。
待宵村の人たちのセリフは一つ一つあたたかく、生きているセリフだ。
ついつい寄り道したくなってしまう。
そこには、たくさんのゲームのオマージュだけじゃなく、人間愛を感じた。
人間賛歌だ。
だから、既視感のある舞台も、先が読める展開だって、「お約束」、という喜びになりえる。
SYUPRO-DXの三人、プロデューサーの浜中剛氏、脚本の横田順氏、音楽を手がけた入間川幸成氏とは、きっと年代も近いのだろう。
いつか、高円寺とかの、場末の飲み屋で、ホッピー片手にモツ煮込みでもつつきながら、懐かしくて、くだらなくて、オチがない話でもしてみたい。
新作『いさましメモリアル 〜我が伝説に一片の悔い無し』にも超期待して待ってます。
心からありがとうございました。
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