なんだか報われない21世紀日本のサラリーマン。がむしゃらに働くだけでは生き残れないこの時代、読書で脳みそをアップデートしなければ・・・。
そんな御仁が通勤中でも読めるビジネス系の電子書籍を取り上げ、そのエッセンスを噛み砕いて紹介。読者の血肉となるようなレビューをお届けする。
さて、読者の中には社長や上司からめちゃくちゃな命令やノルマを下されて困っている方もいるだろう。叱責を受け、反論すらできない。そもそも社長や上司の命令が本当に「正しい」のかどうかすら分からない。こんなとき、サラリーマンはどうすればよいのだろうか。
今回取り上げる書籍は小宮一慶著の『社長の教科書』(ダイヤモンド社)。タイトルだけを見ると、現に社長である人や、これから社長になる人を読者ターゲットにしているように思われるが、そんなことはない。社長の役割を知ることで、新卒社員にも有用な、「会社」に向き合うヒントが得られるのである。本書はだいたい2時間で読了できる。
小宮氏は本書の中で、「経営の本質」として以下の3つを挙げる。「企業の方向付け」、「資本の最適配分」、「人を動かす」である。これが社長(リーダー)の行うべき最重要の仕事だという。
まず「企業の方向付け」。
社長は「理念」に基づき、会社の方向付けをする。これは簡単にいえば「戦略」のことである。戦略を作るためには、経営者であっても率先して現場(市場)を見に行く「素直さ」を持っていなければならない。
次に「資本の最適配分」。
これは「ヒト・モノ・カネ」を適切に配分していくことである。しかし社長というものは、ときに「私利私欲」によって会社を動かしやすい(大王製紙がいい例)。「社長なんだから会社の車をプライベートで使おうと勝手」というわけである。しかしそんな社長であれば、当然、下の人間はアホらしくて働く気が起きないだろう。自分のためではなく会社のためという考え方を徹底することが会社の成長につながるのである。
最後に「人を動かす」。
これはカーネギーの名著のタイトルとしておなじみだが、簡単にいうと「人は理屈では動かない」ということ。では、社員は何で動くのかといえば、会社や社長の正しい考え方、つまり「理念」である。リーダーとは「リードする人」、つまり全体の先頭にいる人のことである。率先して部下の先頭に立ち、部下と同じ方向を向いて「理念」を共有しなければならないのである。
以上3つを見てわかるのは、リーダーとは「理念」を作り、それを伝えることが最も重要な役割だということである。「理念」というと曖昧なもののように聞こえるが、これこそ会社を成長させるためにどうしても必要なものである。逆に明確な「理念」もなく、「金が儲かればいい」というだけの会社はいずれ倒産すると小宮氏はいう。
本書を読んで筆者が思うのは、「理念」とはいわば宗教の「教典」と同じであるということ。社長とは「教典=理念」を使って、信者である社員に同じ夢(目標)を見させることが仕事なのである。社員が「教典」を自ら内在化したとき、彼らは働くのが楽しくなり、修行に励むがごとく会社に貢献しようとするだろう。
逆にいえば、社長や上司からめちゃくちゃなことを言われたとき、それが会社の「理念」と大きく違っているのであれば、それを武器に堂々と反論すればいいのである。「理念」もなにもなくただ怒鳴り散らすだけの社長(上司)がいるような会社は危険である。サラリーマンの方は、自分の会社の「理念」をしっかりと把握し、社長や上司がそれからブレていないかをチェックしてみると良いだろう。
このご時世、「リーダーとはかくあるべきか」を知ることは、なにもリーダー自身だけでなく、リーダーに仕えるすべての人にとっても必要なことではないだろうか。
『社長の教科書』 小宮一慶 著
ダイヤモンド社 800円
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