1988年、昭和63年。
世田谷区上野毛駅(東急大井町線)の上野毛交差点から20mに位置するおもちゃ屋「ワイルドボア」からの帰路を足早に急いでいた。
走りたいけど走れない。転んで落としてしまったら大変だ。
歩きたいけど興奮状態の体は、いうことを効かない。
傍から見ると、競歩のようなスタイルだっと思う。
それでも当時の少年には、無我夢中だった。
なぜなら『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売されたからだ。
白い息が小刻みに舞う、小学校3年生の冬である。
社会現象にもなった『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は
学校内でも話題の中心だった。
『昨日、カンダタ倒してさ……』
(じぇ! 家はゲームは1日1時間しかできないのに、お前ちは何時間できるんだ!?)
『ダーマの神殿で僧侶を賢者に……』
(じぇじぇ! こっちはまだ“くろこしょう”が取れないのに!)
『お前、“ぱふぱふ”ってどんなことか知ってるか?』
(当たり前だ、じぇじぇじぇ!!!)
あれから25年。
ドラゴンクエストシリーズがスマートフォンで今冬から配信される。
「ドラクエ1~8」が順次公開され、最新作「10」の配信も決定している。
“ぱふぱふ”が少年の心に火を注ぎ、その後の人格形成に大きな影響を与えた。
戦闘中、突然不思議な踊りをしたり、人の意見を聞かない“遊び人”(自由奔放極まりない。まるで私の少年期と同じだ)。その遊び人でさえも、一生懸命頑張ってレベルを上げて勉強すれば、転職できることを知った。(ちなみに私は、今の会社に転職して現在4年目だ)。
冒険の書が消えたあの日、『どうして俺なんだ………』と不条理な社会に嘆き、
ブラウン管の前で何度もカセットを抜き差しした経験は、社会人として生きていくうえで
不条理な状況から立ち直る術を知ったり…(ちょっとこれは無理があるなぁ)。
年齢とともに本の折るページや、付箋を貼る場所が変わるように
ゲームも印象に残る場所はきっと変わっていくもの。
小学校3年生の自分が気付かなかった新しい発見があるのかも(やっぱり“ぱふぱふ”かもしれない)。
まぁ兎にも角にも、私は『ドラゴンクエストIII』が楽しみなのである。
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