今回は『Fate/Zero』において不本意、最悪な結末を迎えたことによって「ランサー=不幸」「ランサー=自害」「ランサーが死んだ!この人でなし!」などの格言を確立…とまではいかなくても切っ掛けを担ってしまったディルムッド・オディナと、
ディルムッドの所属するフィオナ騎士団団長であり、アイルランドにおける4つの神話群のうちの1つ「フィン物語群」の主役フィン・マックールについて語っていきたいと思います。
アイルランドにおけるケルト神話
出典:Google(http://urx.blue/tZMe)
フィン・マックールが登場する神話は、彼がエリンと呼称する「アイルランド」に伝わるケルト神話の物語群の1つ。
隣のイギリスではケルト神話の1つ・ウェールズ神話が語られており、そのお話の中でアーサー王が活躍していたりするのだがここでは割愛。
アイルランド神話群は4つのサイクルによって分けられており、
ダーナ神族の王「ヌァザ」、長老の「ダグザ」、光の神の「ルー」などが他種族と戦っていく神話サイクル(神話物語群)、
太陽神ルーの息子・大英雄「クー・フーリン」の活躍を描いたアルスターサイクル(アルスター伝説)、
ヌァザのひ孫・「フィン・マックール」が団長を務めたフィオナ騎士団の活躍を描くフェニアンサイクル(フィン物語群)、
歴代のアイルランド君主の物語である歴史サイクルがある。
…ちなみに4つ目の物語の歴史サイクルは日本じゃそんなに人気が無いようで、資料があんまりないのでどんな話かは知りません。
手元のケルト神話資料本にも4つ目の神話はカットされていて、代わりにアーサー王伝説が載っているぐらいだし。多分古事記みたいに昔の神と今の王制を繋げるような話なんじゃないかな…?
フィオナ騎士団団長フィン・マックール
フィン・マックールはヌァザの孫娘マーナと先々代フィオナ騎士団団長クウィルとの息子で親につけられた本当の名前はディムナという。
クウィルは敵対していたゴル・マク・モルナに殺され、騎士団長の座を奪われるが、フィン・マックールが後に手柄を立てることで団長の座を取り返している。
ディムナは生まれつき金髪と白い肌を持ち、大変美しい美貌だったことからフィン(美しい、輝くの意)と呼ばれるようになり、クウィルの息子のフィン…「フィン・マク・クウィル(フィン・マックール)」として知られるようになったとか。
知恵の鮭を食べることで得た知恵と癒しの水の力
フィン・マックールは若いころに詩人フィンネガスに師事して詩を学んでいた時期があった。
フィンネガスはその頃食べると知恵がつくとされている知恵の鮭を求めてボイン川周辺に7年間暮らしていたが、フィンを弟子にした途端知恵の鮭を釣ることに成功した。
さっそく食べようとフィンに調理を命じたが、フィンは調理の際親指を鮭の身に触れて火傷し、その指を咥えたところ、鮭を食べたとみなされて知恵がついてしまった。
フィンネガスはフィンが鮭を食べる運命だったと理解し、残りの鮭も譲与。
それ以来フィンは火傷した親指を咥えることでいつでも良い知恵がひらめくようになり、水を手ですくうと癒しの水に変える力をも得たという。
フィオナ騎士団長に就任
アレーンを退治するフィン・マックール…出典:http://urx.blue/tZYL
成長したフィン・マックールは人々を眠らせる魔法を持ち、街を焼き尽くすという妖精(あるいは巨人とされる)アレーンの退治に成功する。
その功績によって上王コーマックにフィオナ騎士団団長の任を与えられた。
フィオナ騎士団の任務は主に国内の治安維持、外敵の排除だったようで、その後も様々怪物や妖精と戦ったようだがここでは割愛…というか後述する女難についての描写が多すぎてそのあたりの資料があんまりないぞ!
フィンの女難
フィン・マックールは3人の妻がいた。
一人目の妻は黒いドルイドの魔法によっ雌鹿に変えられていた妖精サーバ。魔法を解いて結ばれたが黒いドルイドに連れ戻されて二度と出会うことは無かった。
2人目の妻マニーサとはそれなりにうまくいったようだけどフィンより先に死んでしまった。
そして年老いてから娶ろうとした3人目の妻があの(一部で)有名なグラーニアである。
※イメージ映像です
グラーニアは上王の娘であったが年老いたフィンよりも若くてイケメンなディルムッドの方がいいと思ったのか彼と駆け落ち。
ゲッシュ(禁忌)をかけて無理矢理婚姻の場からディルムッドを連れて逃げ出すという映画『卒業』みたいな真似をやらかしたのだ。
まさかの寝取られ展開(二回目)にフィンは憤慨。後に和解するのだが大きな確執を残す結果となった。
ディルムッド・オディナ
ディルムッド・オディナはダーナ神族の「ダグザ」の娘・オインガスに育てられた英雄。
2本の魔法の剣と2本の魔法の槍「破魔の赤薔薇、必滅の黄薔薇(ゲイ・ジャルグ&ゲイ・ボウ)」を使いこなす。『Fate/Zero』では変則の二槍流ランサー。
とある妖精に愛の印として、それを見た女性を魅了する泣き黒子をつけられた訳だが、そのせいでグラーニアに惚れられてフィンを裏切ることになってしまう。
義弟が姿を変えた魔猪
ディルムッドには実母の不義によって生まれた義理の弟がいたのだが、それに気づいた実父に義弟を殺されてしまう。
義弟の父はこれに怒り、義弟の死体に魔法をかけてディルムッドを殺すための魔猪を作成。
…時は流れてディルムッドがフィン・マックールと和解した後のとある日、山の中でディルムッドはその魔猪と対峙する。
ディルムッドは魔猪を撃退するが剣を砕かれ致命傷。フィンは癒やしの水でディルムッドを癒やそうとするが、寝取られたことを思い出したのか手が震えて水をこぼしてしまう。(Fate/Zeroの描写では意図的にこぼしていたようだけど)
結果的に癒しの水は間に合わず、ディルムッドは死亡。フィンはディルムッドを見殺しにした形になりフィオナ騎士団の部下たちとの間に大きな溝が出来てしまうのだった。
フィオナ騎士団の崩壊
ディルムッドの死によって結束がガタガタになったフィオナ騎士団は、代替わりして騎士団の警備費用を払うのが惜しくなった新上王カルブレの策略によって崩壊。
フィオナ騎士団は真っ二つに分かれて対立し、フィンは戦いに敗れて死亡。
…結局ディルムッドを許せなかったことがフィオナ騎士団崩壊の切っ掛けになってしまったのである。
…なんだかフィンが狭量な人物のように書いてしまったが、フィンの若いころは団員すべてを平等に扱い、父親の敵のゴル・マク・モルナですら許して団員に加えるほど度量の広い人物なんですよ?
年を取るとどうしてもね…ってことなんでしょう。
FGOのフィンは年老いた後の記憶は持っているけど精神は若々しいままなのでご安心を。
ディルムッドと共にストーリー面で優遇されているのがちょっとだけ嬉しかったりする。