1980年代初頭。
それは「機動戦士ガンダム」のプラモデル、通称「ガンプラ」のブームが巻き起こっていた時代。
ガンプラ風のロボットプラモデルが多数発売され、パチモノとして世のパパさんやお子さんたちを苦しめた時代でもあり、その中にアリイ社の「太陽系戦隊ガルダン」もあった。
更にガルダンの血脈を受け継ぐシリーズがあったのを知っているだろうか?
1981年から発売したSFロボットプラモデルシリーズ―――
「ザ★アニメージ」
架空のアニメ「銀河伝説バイソン」に登場するとされるキャラクターモデルだ。
ただのパチモノではない珍妙なアイデアが盛り込まれた意欲作でもあったコトを伝えたく筆を走らせよう。
何かにあと一歩だった作品「ザ★アニメージ」を大特集!パチモノプラモの栄枯盛衰を括目して見よ!
楽しくなければプラモじゃない! by高橋昌也(プラモ狂四郎)
目次
「ザ★アニメージ」って?
ガンプラを越える技術も!?
「太陽系戦隊ガルダン」シリーズでは、1975年に同社より発売していた「合体ロボシリーズ」の金型を流用し、動かない関節のロボットプラモのイメージが強かった。
だが、この「ザ★アニメージ」シリーズのプラモは、新規で金型が作られてガルダンとは全く違うモノになっていた。
1/76スケール(ガンプラの1/100と同等サイズ)で作られ、実は他社で生産されていたロボットプラモデルより、足の関節の可動範囲が広かったり、腰に可動域を設けるなど先見的アイデアが盛り込まれた意欲作。
胸のハッチが開き、コクピットが見えるなどの仕様は、1980年に株式会社タカラから発売されていた変形ロボット玩具「ダイアクロン」シリーズの影響か?
パーツのヘタリと言う弱点もあったが、関節のヘタリ防止対策を施したシリーズも作られるなど、同社の本気さが伺える。
ただし、おそらく原型師が別とされる「量産型バトルスーツ」シリーズ(ガンプラの1/144と同等サイズ:表記スケールは1/76)は、パーツが組み合わないなどの粗さが目立った。
一点集中で技術を注ぎ込んだ影響か?
デザイン自体は「機動戦士ガンダム」の大河原邦夫さんの「大河原立ち」のイラストを意識しすぎたのか、主役メカである「バイソン」の顔は常時下から見上げたようなモノになってしまっている。
たれ目の角無しガンダムって感じの風貌―――
愛嬌はある!
やはりガンプラの影響は大きく、リアルタイプシリーズに対抗して……
スーパーリアルタイプシリーズ登場!
パッケージもなかなか凝っていて、意外とカッコいいってのが素晴らしい。……パチモノ臭いのは抜けきらないんだが。
金型の流用が多いアリイ社らしく、実は流用可能なパーツは別々のランナーになっていたりする。
これは経費削減の為なのだろうが、パーツを組み合わせるコトで別のロボットが作り出せるという利点もあった。
意識してこれを企画していれば、もっと―――とは思うが、当時としてはここまでが限界だったのかも。
吸収されたガルダン
「ザ★アニメージ」には「アニメージロボ」というミニプラモデルシリーズがあった。
これ、元はニッシン商事より発売されていた「ガルダンガム」の金型を流用したプラモデルシリーズ。
そう!ガルダンが帰ってきた!
名称はガルダンシリーズのまま、オリジナルデザインのロボットとして展開していた。
1982年になると、「ミクロスーツ」と名称が変更されてシリーズは再度発売。
名前と一部武装を改変されたものの、パッケージは一緒だったので、どこかでみたな?的に避けられてしまった悲劇のシリーズ。
やはりガルダンの悪名は、どこまでいっても悲劇を生む!(詳しくはガルダン特集を見てくれ!)
アニメ化を目指したプラモシリーズ!?
アニメなどの原作がないシリーズである「ザ★アニメージ」だが、キットには何故かストーリー漫画と小さなセル画が入っていた。
漫画の展開も珍妙で面白いのだが、セル画が曲者。
このセル画は見ての通り着色されておらず、色指定がついていて自分で塗れというコトらしい。
しかも、当時の雑誌広告ではTVアニメシリーズの告知も!?
―――そしてセルワークの下請け募集まで!
つまりこのセル画は―――
アニメーター養成の為の布石!?(絶句)
本気でアニメ化を目指していたようで、一時はサンライズに持ち込もうと画策していたという(情報ソース「コミックGON 2号」インタビュー記事より)。
パクリ元にアニメ発注とか……正気か!?
進化?退行?新展開!?
「ザ★アニメージ PART-Ⅱ」
1982年に入り、当時放映中の「太陽の牙ダグラム」のヒットもありリアル路線のプラモデル作成がブームとなっていた。
そんな中、「ザ★アニメージ」も新展開に入る―――
「ザ★アニメージ PART-Ⅱ」
「重装甲バトルコマンド」シリーズだ!
簡単に言ってしまえば、バイソンシリーズとリアルな戦車などの融合。
実にアリイ社らしい……まるで―――
ガルダンシリーズの合体(上図)を思い起こすのは、筆者だけだろうか?
今度のシリーズは、ダグラムを意識しつつ「超時空要塞マクロス」の兵器の形状に似た造形を持つ特殊なロボット群になっていた。
それもそのハズ、当時のアリイ社はマクロスのプラモデル作成を請け負っており、この後はそちらにシフトしていくコトとなる。
バトルコマンド用に20作品が予定されていたが、そのラインも全てマクロスの商品化の為に変更されてしまう。
ジオラマセットの企画もマクロスシリーズに流用され、「ザ★アニメージ」のシリーズはバトルコマンド8作品で終了となってしまった。
この後、アリイ社は「超時空シリーズ」などのキャラクターモデルから、艦船や飛行機、鉄道などのスケールモデルのメーカーとして躍進し、現在では鉄道モデルが有名な「マイクロエース」となって愛好家に親しまれ続けている。
パチモノから始まったシリーズだが、個人的にはこういうチャレンジ的な作品は嫌いではない。
少なからずファンもいるこの作品、みなさんはどう見るだろうか?
―――まぁ、パチモノはパチモノなんだけど。
アプリゲットが贈る「パチモノプラモ特集」もご覧ください!
ロボット大好き!記者むらさきが贈るロボットプラモのディープな世界「パチモノプラモ戦記」をご覧ください……。