画像は艦これ公式サイト(http://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html)より引用
「艦隊これくしょん-艦これ-」といえば、DMM.com POWERCHORD STUDIOの岡宮道生エグゼクティブプロデューサーと、運営鎮守府(角川ゲームス)の田中謙介プロデューサー/ディレクターのタッグで生まれた大ヒットブラウザゲームです。
2015年の冬には、スマホ版(Android向け)のアプリも配信予定とのことで、楽しみにしている提督の皆さんも多いことと思います。
先日の、岡宮道生エグゼクティブプロデューサーの記事が非常に注目度が高かったので、田中謙介プロデューサー/ディレクターについても、今回調べてみました!
スマホ版を待つ間、ぜひ一読を!(まだの方は岡宮道生さんの記事もぜひご覧ください!)
元々のキャリアは広告代理店!?そして、スクウェア(現スクエニ)へ入社。
上から順に、田中謙介さんが在籍していた企業ロゴを並べた。
以下、田中謙介さんのキャリアだ。
電通に入社し10年ほど勤める。その後はスクウェア(現スクウェア・エニックス)、ミストウォーカーなどのゲーム関連会社で勤務した。PlayOnlineの制作にも関わった。2014年5月現在は角川ゲームスの社員である。
wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/田中謙介)より引用
これほどまでのゲームのヒット作を生んだプロデューサー/ディレクターという点からすると、意外に感じる「電通」勤務。その後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社されます。
スクウェア時代の主な作品と職種は以下の通りです。
・ファイナルファンタジーX :スペシャルコーディネーター
・ファイナルファンタジーXI :広報
・ファイナルファンタジーXIII :広報
wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/田中謙介)より引用
パソコンおよびPlayStation 2で利用可能なオンラインサービス「Play Online」にも関わっていたという記載も見かけました。(ただし、PlayOnline側のwikiには名前を確認できず)
こちらがPlayOnlineのポータルサイト。Final Fantasy XIを中心に、オンラインで利用できるコンテンツが集められている。画像はPlayOnline.comから引用
田中謙介さんが広報を担当していたFinal Fantasy XIのプロモーション動画はこちら。
こちらはゴリゴリなMMORPGです。
その後、ファイナルファンタジーシリーズの生みの親として著名な「坂口博信」さんの会社ミストウォーカーに入社されます。
ミストウォーカーでは、以下の作品のクレジットに名前を確認できました。
- ASH -ARCHAIC SEALED HEAT- :プロデューサー
アルカイックシールドヒートは、NintendoDSで遊べるシミュレーションRPG。画像は任天堂公式サイト(http://www.nintendo.co.jp/ds/yasj/index.html)より引用
その後、角川ゲームスに入社され、以下のタイトルを担当されます。
- NAtURAL DOCtRINE :プロデューサー
- 艦隊これくしょん -艦これ- :プロデューサー/ディレクター
NAtURAL DOCtRINE (ナチュラル ドクトリン)は、PlayStation®4 / PlayStation®3 / PlayStation®Vitaに対応する、シミュレーションRPG。画像は、公式サイト(http://www.n-doctrine.com/system/system.html)より引用
艦これについてのインタビューを拝見!
田中謙介さんが艦これにかける想いを、2013年当時のインタビュー(ファミ通、4Gamer)を引用しながら、紐解いていきたいと思います。
艦これは、田中謙介さんの好きなミリタリーの世界を擬人化でより多くの人に伝えようと考えたことが元になっている。
──『艦これ』の企画は、そもそもどういった形で始まったのでしょうか?
田中 もともと、私はミリタリーものが好きで、呉や舞鶴、横須賀など、日本海軍の鎮守府跡や要港があった地域を旅したりしていたんです。そして、その魅力や史実をほかの人にも伝えたいと思い、艦船に関する創作活動なども行っていたんですね。そのときに、より多くの人に伝わるようにと、艦艇などを擬人化してコミュニケーションしたらと考えたアイデアが、『艦これ』のきっかけになりました。
(引用元: http://www.famitsu.com/news/201309/07039658.html)
元々、田中謙介さんが趣味としていたミリタリーの世界観が、艦これの「タネ」になったのですね。
──田中さんが温めていた企画だったんですね。擬人化と言っても女の子限定なのは、やはり、艦船が世界で“女性”として扱われているからなのでしょうか?
田中 そうですね。ただ、そのときはまだ企画を構想したり趣味で本を創っていた程度で、いまの形のブラウザゲームとして実現に動き始めたのは、DMM.comさんで活動されていた知人と再会してからでしたね。以前からとても信頼している方でしたので、「こういうゲームを考えているんだよ」とお話ししたら、「ぜひウチでやってみない?」と。
(引用元: http://www.famitsu.com/news/201309/07039658.html)
艦船を女性として扱う世界的な文化を背景に、女性に限定した擬人化があり、艦船が「艦娘」としてゲームに登場するのですね。
また、このくだりに出てくる知人は岡宮道生さんですね。
艦これの2次創作にかける想い
─―それがいまや70万人近いという。しかも勢いがとまらない。田中さんは、何が『艦これ』をここまで大きくしたとお考えですか?
田中 さまざまな複合的な要因があるとは思いますが、イチバンは“想い”かと思っています。とくに提督の皆さんの“想い”。例えば『艦これ』に何かを感じてくれた人が、まわりに伝播してくれる……Twitterももちろんですが、Pixivなどで素敵な絵を描いてくれる方や、いろいろな人たちが「自分はこうプレイした」、「こう想った」、「こう感じた!」と再発信してくれる提督が多いんです。この提督の皆さんの「想い」が、『艦これ』をここまで育ててくれていると強く実感しています。記事も広告もほとんど載せていませんでしたし、本当に提督の皆さんの力でどんどん大きくなっていった感じです。
──確かに、『艦これ』は二次創作も活発ですし、提督たちの熱量をひしひしと感じます。
田中 商業作品とその二次創作。難しい部分もありますが、私たちの『艦これ』では可能な限り、できるだけ自由にやっていただきたいという思いが強いです。『艦これ』のバックグラウンドやカチッとした設定は、ゲーム中ではかなり緩やかにしかお伝えしていないのです。
運営からの情報やお問い合わせからフィードバックなどでフォローしている部分はありますが、提督の皆さんが各キャラクターの性格付けやそれぞれの関係値、そして大切な史実から何かを感じていただき、素敵なストーリーやエピソードをどんどん補完してくれたら……そして、それらも取り込んで世界観が充実していったら……そんな作品になれたら『艦これ』と“艦娘”たちは本当に幸せです。
(引用元: http://www.famitsu.com/news/201309/07039658.html)
広告費を投じて集客することが一般的な中、アツイ想いで作られたコンテンツを、何かを感じたユーザが口コミで広めていったというのは、胸アツです。
プロデューサ/ディレクターである田中謙介さんの課金に対する考え方
──わはははは(笑)。さて、ユーザーにとっては、ほとんど課金をしなくても十分に遊べる、というところも魅力なのかなと思いますが、いまの課金形態を採用した理由は何なのでしょうか?
田中 私もこれまでにさまざまなブラウザゲームを遊んできましたが、ほとんどのゲームで「なんとか課金しないでプレイしてやろう」と思っていました。中には課金したものももちろんあります。でも自分が作る機会があったら、課金を強いるのはやめたいなと。
もし、少しでも気に入ったらゲーム1本買うぐらいを基準に、「この世界の維持に協力して!」という感覚にできたらいいなあと。「お金がないとこれが手に入りません」というものはなくて、時間と根性とリアルラックさえかければ、誰でもなんとかなる……というゲームにできないかなあと考えていました。
──とてもユーザー目線の考えですね。ただ、サービスとしてやる以上、マネタイズを考える必要はありますよね?
田中 そうですね。マネタイズに関しては、前述の「ゲームを気に入ったら、コンシューマーゲーム1本分ぐらいのお金を払ってくれたらありがたいのです」感覚が基準でした。
金額で言うとざっくり7000円くらいでしょうか。ゲームを実際にプレイされた方はお感じかもですが、艦娘を修理するドックを全部解放して2000円、あとは母港拡張とか、趣味の家具とか買っていただければと。
(引用元: http://www.famitsu.com/news/201309/07039658.html)
「お金を払わないと強くなれない!」ということではなく「気に入ったらお金を払ってくれたら」というスタンスのようです。
提督がおびえる艦娘のロストに対する考え方
4Gamer:
最初にうかがいたいのは,「艦これ」が,“萌え系”の“オンラインゲーム”で“育成系”と,三本柱の揃っているゲームでありながら“データロストがある”という,比較的珍しい構成になっている点です。この「データロストがある」という仕様は,どういう経緯で実装されたのでしょうか。
田中氏:
実は「艦これ」は,最初はほとんど自分の趣味の企画といってもいい存在だったんです。旧軍の要港があった街や,奮戦して壮烈に,あるいは誰も見ていないところで悲しく沈んでいった艦艇を何らかの形で紹介し,一瞬でもいいからみんなで共有できるようなものを作りたいというのが,そもそもの発端でした。
だから,そういう哀しみの史実や喪失感,もしくは痛みといったものを感じさせるプロトコルとして,ロストというのは当然の選択だったんです。実際にブラウザゲームとして実装してみたら,多くの提督(「艦これ」プレイヤーのこと)から「ロストは珍しい」「やめて」とも言われたのですが,むしろそれ以外にどうやって表現するんだと(笑)。
(引用元: http://www.4gamer.net/games/205/G020591/20130911062/)
ロストという仕様は、強い思い入れのあるものだったのですね。当然のことながら、ユーザからはなんとか救済する措置を導入して欲しいという声があがったようです。
4Gamer:艦娘(かんむす)をロストすると,かなりショックが大きいですからね。
田中氏:
ええ。実際,サービスイン初期は多くの提督から「課金アイテムでもいいので,失った艦を復活させてほしい」という要望をいただいていました。でも,「艦これ」は哲学的にもシステム的にも,沈んだ船をサルベージする構造を持っていません。完全なロスト以外に,その喪失感を感じてもらう方法がないからです。
その代わり,ロストにはものすごく明確化されたルールがあります。ただし明示はしていないので,どこからどこまでが安全で,どこから先が危険なのかは,提督の皆さんの体感と,ネットを通じた“柔らかなソーシャル”としての情報共有の中で探ってもらえればいいかなと。
そんなわけで実際,賛否両論あったんですが……どうですか?
(引用元: http://www.4gamer.net/games/205/G020591/20130911062/)
ロストについては、喪失感を感じさせるための仕様、というポリシーがあるのですね。ただ、ロストに関するルールはあるとのこと。
「大破進撃ダメ絶対」
※それだけではなく、疲労度についてもご注意を……
艦これというのは、つまるところ、どんなゲームなの?
4Gamer:
「艦これ」はバトルシミュレーション的な側面を持ちながら,戦術レベルの指揮がまったくできないというのも特徴的ですよね。
田中氏:
ええ。「艦これ」はいろいろな見方ができるゲームではありますが,では本質的に何のゲームかというと「兵站のゲーム」なんです。僕は,戦いで決め手になる大きな要素は「兵站」だと強く思っていまして。ええ,強く強く。幼少の頃に読みふけった本の影響かも知れませんが。
実際の戦闘では,戦いっていろいろな局面があると思いますが,「正面装備」を揃えることと,それを支える「兵站」が大前提としてあり,派手な作戦や戦術は最後に少しあるだけですよね。でも戦いを扱ったゲームや作品は,多くが戦術級や戦闘級……時々,作戦級……くらい? だから,もうそこはいいやと(笑)。
それで,もともとやりたかった「兵站と正面装備を揃える」という部分を,「擬人化」という技法で「抽象化」するというのが,「艦これ」の根底にあるゲーム的なコンセプトなんです。
(引用元: http://www.4gamer.net/games/205/G020591/20130911062/)
艦これは「兵站」のゲーム。敵と相対して戦闘を行う部分を、支援・サポートする後方の活動とでも言いましょうか。
かなり深い話ですが、もう少し砕いた説明がありました。
4Gamer:
では,プレイヤーの立場を「提督」にするというのも,最初から明白な意図のもとに設計されていたというわけですね。
田中氏:
はい。厳密には一艦隊の提督が兵站とかやっているのはおかしいんですけど,そこはブラウザゲームとしての抽象化ということで。プレイヤーの役割は「正面装備を揃えること」「正面装備を稼働させられるだけの兵站を整え,運用すること」の2つだけというゲームとしてデザインしました。
ただ,正面装備といっても「艦これ」の場合は女のコなので,女のコを自分の部屋(執務室や母港)に揃えて,その子達が十分に食っていけるように食べ物(資源)を用意して,仕事(出撃や遠征)に送り出して,帰ってきたらお風呂(修理ドック)に入れるという,見方を変えると……なんだこのゲームッ! ていう(笑)。
4Gamer:
たしかに(笑)。
田中氏:
でもそういうインターフェースの翻訳によって,「兵站」管理という本来は死ぬほど退屈かもしれない,でも本当は超大切なもの,それを楽しくプレイしてもらえたら,これほど幸せなことはないと。その中で,「艦娘」という擬人化インタフェースを通して,先の大戦で失われていった艦艇や最期の瞬間まで奮闘した人達のことを思い出してほしい,忘れないでほしいと思って作ったもの,それが「艦これ」です。
それが多くの提督の支えもあって,ここまで多くの人に共感してもらえて,やりたいと思っていたことが信じられないことに叶ってしまいました。本当に感無量です。
(引用元: http://www.4gamer.net/games/205/G020591/20130911062/)
艦船の擬人化というポップでキャッチーな入口があり、翻訳され受け入れやすいインターフェースがあって、田中謙介さんが考える戦争のキモの部分(=正面装備&兵站)を、凝縮(抽象化)したものを遊んでいる、というのが艦これということでしょうか。
また、その背景に、これだけの日本が経験してきた戦争に対する熱い想いがあったとは、インタビューを読む前は想像もしていませんでした。
まとめ
- 艦これは熱い想いで作られている!
- 提督もその気持ちは伝わっている!
- ともかく、スマホ版、はよ!!
※田中謙介プロデューサー/ディレクター、スタッフの皆さま、いつも楽しいゲームをありがとうございます。 (敬礼)