天狗の正体は…
ナナミの兄、シュウイチだった。
そして…
彼もまた、祭の夜をループしていたのだった。
「死者の送り迎えをするという天狗になれたら、どんなにいいかと…考えたりはしたけどね…」
自嘲気味に話す彼の口から出た言葉は、衝撃的なことだらけだった。
このうたかた祭の夜をぬけだせないまま…何度も繰り返している。まるで牢獄のようだったと言う。
ナナミの死について聞く。
そして彼は静かにこう言ったのだった。
「おれが ナナミを 殺したんだ」
彼の述懐は続いた。
4年前、うたかた祭の前日。
空神洞に天狗待宵花を取りにいったナナミについていったシュウイチ。
ナナミはついに、洞窟の最深部で天狗待宵花を見つける。
だが、偶然居合わせたウサギのソウスケをかばおうとして、ナナミは転落してしまう。
自分を頼りにしてくれていた妹を、危険なところに1人でいかせた自責の念で苦しんでいたシュウイチ。
ループしつづける夜は、過去のあやまちをすべて精算しろという天狗のたたりなのかもしれないと。
この話をしたくて、ナナミの手紙を使って展望台に呼び出したが、怖くて話しかけられなかったと。
「いつまでたっても卑怯で弱いままなんだ」
そういうシュウイチにシンタローは優しく声をかける。
ナナミを殺したのはあなたなんかじゃないと。
あなたは卑怯じゃなく、こうしてすべてを話してくれたじゃないか、と。
シュウイチは、ナナミが大事に持っていた、天狗待宵花の押し花を渡した。
天狗はいなかった。
ナナミは、誰のせいでもなく、事故でなくなった。
…もう いいじゃないか。
みんなじゅうぶん 苦しんだ。
誰のせいでも ないんだ。
行き場のない気持ちをむねに彷徨うシンタローは、気がつけば村の広場にいた。
そして、広場の中央で、狐面の女性に声をかけられる。
踊っていた女の子は、
死んだはずのナナミだった。
ナナミは言った。
いままで、シンタローが頑張っていたのを全部みてたよ。と。
祭の夜を何度もループするのを。
でも、声をかけることはできなかった。
過去は生きている者が、自分の力で、乗り越えなくてはいけないからだ。
祭の夜がループしてたのは、決して、牢獄や天国のたたりなんかじゃない。
シュウイチは、自分の力で、ナナミの死を乗り越えようとしたのだ。
なぜ、シンタローもループしつづけたのか。
なぜ、ナナミが祭の日に、天狗待宵花に固執したのか。
それは、シンタローへ誕生日プレゼントを渡すためだった。
シンタローは困惑する。
記憶に蓋をして、ナナミの死からずっと逃げ続けてきたから。
そして、ナナミはシンタローに思いを告げる。
四年前、展望台で言えなかった言葉を。
「来年も会おうね」
その約束が果たされることはないと、シンタローはわかっていた。
空気を読まず乱入する村人たち。
朝まで踊る奇妙な盆踊りだ。
でも、楽しい。
ずっと続けばいいのに。
花火があがる。
わだかまりは、消えてなくなる。
もう、祭の夜は繰り返さない。
それは、ナナミとの別れを意味していた。
だれかが思い出してくれるとき
きっとわたしは
その瞬間だけこの世界に
生き返れるんだ
天狗待宵花の花言葉は――
そして二周目をプレイすると…。第零章があるのをご存知だろうか?
次回、トゥルーエンド、第零章を紹介!
最終回公開予定日:6月1日(月)17:00!
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