青天レキの観察日記:夜更かしとゾンビとツンデレを観察です!【ラノベ始めました!】

最終更新:

執筆者:編集部

120924

シャッターチャンスは一度です?

―――さて、今日も観察をはじめるです。

普通の朝の登校風景。
今日も今日とて対象の二人は、くだらなくも面白い言い合いで私を楽しませてくれます。
「だから!もう少しソフトに起こせないのかって言ってんじゃん!」
寝癖を手で直しながら大声を出してる男子が、向坂明日真(こうさかあすま)。
「出来る限りソフトにしてるよ?最初はね。なかなか起きない明日真が悪いんでしょ」
負けずに食ってかかるスタイルのいい女子が、真夏ひまわり(まなつひまわり)。
両方とも私の幼馴染み。
「お前、レキのコトはソフトに起こしてるよな!」
「レキは、ご飯食べるまで寝ぼけてるけど、起きては来るもん!」

あ、レキって私です。青天レキ(そうてんれき)っていいます。

ちなみに三人の家は、一般家庭とちょっとだけ違った変な環境です。
三軒並んで建っていて、それぞれ別々に見えますが実は通路でつながってるんですね。
色々な事情があったらしいですけど、私と明日真の両親がいつも家にいないので好都合。
先ほどもひまわりの家で朝食してから登校という流れなんですね。
便利。
「だいたい明日真は、夜遅くまで漫画とか読んでたりするから起きれないんじゃないの?」
「……ぐ、……いや、それをツッコムなら俺だけじゃねぇ!レキなんかレトロゲームやったり昔のアニメ観てたりで、俺より遅く寝てるはずだぞ!」
「え!?レキ!ダメだっていったよね!?」
「え、あう―――――――」
しまった。飛び火したです。明日真め、何ニヤニヤしてるですか。
それに失礼です!レゲーや古いアニメだけじゃなく、最新のゲームもネトゲもやるし、最新のアニメも観てるです。特に深夜のアニメは見逃せないものも多く……。
いやいや、二人を観察してる私としては、私の話題なんて名作の名言を借りれば――――――。

そんなコトは、どうでもいい!!byゲルマン忍者

「レキ!昨日はいつまで起きてたの?昨日は一緒に映画を見てから寝たんだから、10時には寝てたよね?」
「ああ、あの借りてきたゾンビものの映画か……ホント、ひまわりはああ言うの好きだな」
「いいでしょ!面白いんだから!それより、レキ!どういうこと?」
「はははっ!レキはいつもひまわりが寝てから起きだしてるよな!」
「あう、あう―――――――」
明日真め!明日真め!明日真め!おのれ明日真め!名作の名言を借りれば――――――。

明日真のクセに生意気だぞ!byガキ大将

ひまわりのツリ目を完全にこっちに向けてるし、指バキバキならしてるし……。
「レ―――キ――――――……」
「ひいっ……。ひまわり落ち着くのです。今の問題点はひまわりの起こし方だったハズですよ」
「3時までは部屋の電気ついてたし!ほとんど徹夜だよなぁ!あれじゃぁ」
おのれ、明日真!そこまで見てたのかぁ――――――。
……って、あれ?
「……私が寝る時間に明日真は起きてたですね?」
きっと、今ハマってるって言ってたFPSのネット対戦をやってたですね。
確かヨーロッパ方面のチームに負けたのがくやしくて練習してましたし。そうか、ヨーロッパの方は昼夜逆ですから―――。
「明日真?おのれは何時まで起きてた!」
ひまわりのロックオンが明日真に変更。いい笑顔です!ひまわり!きっとドラゴンもまたいで歩く程の笑顔です。

ガシッ!

鋭いひまわりの正拳突きを明日真が掌底で受け流す。
その後、止まることなく繰り出されるひまわりの拳打をギリギリのところで受け流す明日真。
「ほぼ貫徹ってこと!?」
「しまった!じゃない……ええと、あれだ…………ほら、夜中にトイレに起きたって奴だ!」
「今思いついてんじゃぁ……ない!」

バシンっ!

青ざめた明日真が、ひまわり渾身のひじ打ちを両手を胸の前でクロスさせて受け止めた。道端で組み手をはじめる高校生二人ってのはかなり迷惑なものですね。いつものコトですけど。
至近距離で顔を突き付け合う二人。
うんうん、二人の空間です――――――。少し色気は足りませんが、こういうのは見ていて飽きないですね。

「まぁまぁ、いつも仲がいいわねぇ――――――。おはよう、レキちゃん」
「あ、おはようです」
ご近所のおばさまが通り過ぎていきます。
いつもの光景なのが、お分かりいただけたかと――――――。
一瞬固まっていた二人は、瞬間的に沸騰したみたいに顔を真っ赤にしてバックステップで離れる。
「「お、おはようございます!仲良くなんかありません!」」
ハモって、更に顔が赤くなりました。
おばさまも遠ざかりながらクスクス笑っていて、慣れたものです。
「明日真のせいで、変な勘違いされてんじゃない!」
「どんな勘違いだって?ひまわりが暴力女だってのは事実だろが!」
「そんなコトは誰も言ってないよ!」
「人を起こすのにエルボー落とすようなヤツは、暴力女ですね!」

ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

周囲の目も気にせずに組み手を再開する二人。
たぶん、ニブチンな明日真は、勘違いの意味を本気で気づいてないですね。
「起こしてやってるのは、あんたの為じゃないんだからね!今日子おぼさまに言われてしかたなく――――――」
はい、ツンデレテンプレート頂きました!
ひまわりは、周囲から見たらホントにツンデレで、見本みたいなセリフを口走りますが、本人がそういうジャンルに疎い貴重な天然さんです。
女の私からみても大変可愛い。いやぁ、ツンデレってホントにいいものですね!
―――とは言え、観察記録用の写メも撮っておきますか。

カシャッ!

「あ!レキ!てめぇ!何撮ってんだよ!」
「え!?うそ!やめてよ!」
このシャッター音て、ほんと邪魔に感じるですね。いつも気づかれちゃうじゃないですか。
とは言え、ひまわりのパンチラハイキックと、真剣な表情で受け流す明日真という絵になる構図が撮れたので満足。クラウドに保存です。
良い子は真似しちゃだめですよ。盗撮ダメ絶対。レキとの約束です。
「おい!消せ!」
いやですね。学校までダッシュで避難です。
「あ!コラ!レキ!待ちなさい!」
二人は追ってきますが、待てと言われて待つパパラッチはいないのですよ!
「ああもう!なんで普段トロいのに、逃げ足だけ速いんだあいつは!」
「レキ!待って!それ消して――――――っ!」
遠ざかる二人の声は遠くなって、やがて聞こえなくなりました。
もうちょっと観察したいところでしたが、遅刻の危険性もあるので離脱でいいでしょう。

左手は添えるだけ

お昼の後、すぐの体育って嫌いです。
―――私、体育自体が大嫌いなんですけどね。
「ひまわりカッコいい―――っ!」
「がんばれぇ!ひまわり!!」
女子の黄色い声援。スタイルがいいだけじゃなくてスポーツも万能で、男子だけじゃなくて同性からも大人気のひまわり。
今日の女子は体育館でバスケ、男子は校庭でサッカーと教師がやる気のない時のメニューです。
私も動きたくないので、見学というコトにしてひまわりを観察してましょう。
それにしても、ご飯の後だっていうのに良く動き回れますねぇ。

ひまわりはパスされたボールを受け取ると、素早いドリブルで一気にゴールへ向かう。
ポニーテールにまとめた髪を跳ね上げ、高くジャンプして華麗にダンクシュートを決める。
オヘソ見えました。

てか、女子の体育でダンクするのもスゴイですが、女子バスの子たちが手も足もでてないです。
あ、ちなみにひまわりは部活入ってないので、いつも運動部の部長さん連中に狙われ続けてます。
「ひまわり、いつもながらスゴイね」
「やっぱりバスケ部に入ってくれない?もったいないなぁ」
「ねぇねぇ、今度助っ人してよー。ひまわりー」
何度目かの得点で、囲まれるひまわり。ずっと目立ってるですよ。
「ほんっと、ひまわりは万能だなぁ」
「そんなコトないよ―――」

わあああぁぁぁぁぁ――――――

どうやら男子サッカーも盛り上がってるみたいで、一部の女子たちはそっちを見るのに夢中。
体育館の外を見る為に校庭側の鉄扉を開け放って、他の女子たちも集まってきたです。
ひまわりも気になるみたいで、一瞬そっちに目を向ける――――――。
「向坂くんが、ハットトリックだってよ」
「ふ、ふ―――ん……」
気の無いフリをしてるですが、明らかにチラチラと校庭が見える位置を探してるのがバレバレ。
「ねぇ、ひまわり―――。向坂くんとはどうなってるの?」
「うえぇ?な、ななな、なによ!突然……」
判りやすく慌ててる。
「またまたー。今日も仲良く一緒に登校してたじゃん」
「そうそう!家だって隣なんでしょ―――付き合ってんじゃないの?」
周りの女子たちみんなが、ひまわりを囲んで追及しはじめました。
そりゃそうです。意外と明日真は女子に人気があるので、気にする子はかなり多いのですよ。
かあぁぁっとリンゴみたいな色に沸騰した顔で、ひまわりは両手を前でぱたぱたさせて――――――。
「いやいやいや、あいつとは何でもないって!ただの幼馴染み!それに家が隣なのはレキだって一緒だし!今朝だってレキも―――」
「え?今日はレキちゃん先に教室にいなかったっけ?」
「あ――――――」
みんな、二人の仲が進んでいないコトを察し始めましたね。
わたわたしながらも校庭側が気になるらしく、ひまわりは視線をチラチラそっちに向ける。そんな可愛い反応も、ひまわりの人気の一要因です。

一瞬―――、ほんの一瞬だけ場の空気が変わってどよめきが辺りを包み込みました。

バアァンっ!!!

体育館に大きな破裂音のような音が響き渡り――――――。
全員の目がその音の発生源に集中する。そこには――――――、顔面にサッカーボールをめり込ませたひまわりの姿がありました。
スローモーションのように跳ね返るボールと、飛び散る鼻血。
周囲の女子たちが大騒ぎになりました。
倒れ込むひまわりの横にボールが転がる。
あう、あう―――ひまわりは無事ですか!
肩にひっかけてたひまわりのタオルを掴んで駆け寄ろうとした時――――――。

「すまんすまん!ボールどこいった?」

明日真が入ってきました。
「力入り過ぎてさ―――。変な方向に蹴っちまったよ」
「……明日真」
ひまわりがゾンビみたいに、ふらふらと立ち上がると周りの女子たちが止めるのを振りほどいて踏み出しました。
「あ、なんだひまわり。拾ってくれたのか、サンキュー……って、あれ?鼻血?」
ダッシュからの連撃が明日真にヒット。対戦格闘の空中コンボみたいに追撃が入って大きく吹っ飛ぶ明日真。
更にひまわりが体を捻って回し蹴りの体勢に入った途端、明日真は空中で体を仰け反らせる。
蹴りが大きく空振り、その隙に明日真がバク転して間合いを離す。
「ワザとか!?明日真ぁ!」
「んなわけあるか!」

ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

二人の組み手が始まってしまいました。こうなったひまわりを止めるのは難しいです。
明日真も必死に応戦してるですが――――――。
このままでは、体育館そのものやクラスメイトに被害が出そうですね。
―――介入は、観察してる身としてはしたくないですが、仕方ないです。
重い腰を上げて、私は歩いて二人に近づいて……。

「そこまでっ!―――です!」

間に割って入った私の顔のすぐ横で、二人の拳がぴったりと止まる。
正直、この止め方は心臓に悪いですが、止まるって信用してますし。
「このケンカ、私が預かるです!」

戦争は数だよ!

放課後、帰り道――――――

二人にはスマフォを出してもらい、あるアプリをインストールさせました。

Last Empire-War Z

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ゲームをはじめる

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これは、ゾンビの徘徊する未来世界で、生き残りをかけて拠点を守り、他の拠点から資源を奪う世紀末覇者が大歓喜しそうなストラテジー。
戦争もの好きな明日真と、ゾンビもの大好きなひまわりのどちらの興味も惹ける切り札として考えてました。
「リアルファイトでのケンカは、周りに迷惑ですし。これなら二人とも所見で条件も一緒。勝負には向いてるはずです」
睨み合う二人。
お互いになんか色々と溜まってるでしょうから、ここらがいい勝負時なのです。
「ルールは、一週間後の放課後に開戦。タイミングはどちらから攻めてもOK。相手により多く被害を与えた方が勝ち―――です」
「おう!いいぜ!やってやる」
「いいよ!でも勝ったら何かある?決めとかない?」
やる気になってくれて、観察者として嬉しい限りです。
「それなら、勝った方が三家ルールを一つ作れるってのはどうですか?」

三家ルールとは―――。

幼い頃からの決め事で、三つの家がほとんど一緒の空間で暮らす上での必須事項。
廊下は走らない。
大声でしゃべらない。
なんていう一般的なものや……。
おつかいは子供三人全員で。
成績ダウンは連帯責任。
など、私たち向けのものも多い。
その中でも、子供たちだけで決めたものも幾つかあり、それは絶対のルールとして親公認になる。
三人の間では、意外と順守される重要なもの。
「それはいいわね!」
「望むところだ!」
まあ、二人でお互いをルールで縛り合う分には、私は楽しいだけですからね――――――。

その夜、やっぱり深夜まで明日真の部屋の明かりは点いてました。
徹夜覚悟の時間勝負。こういったソーシャルアプリの基本戦術ですね。
対するひまわりは、10時くらいまでは一緒にテレビみながらメールしたりしてましたが、今日はチュートリアルを終わらせた程度。
勝負はかなりやる気でしたけど、どうしたですかね?

一週間はあっという間に過ぎて―――。

放課後の教室。二人の対決に興味があるみたいで、女子のグループが残って見てるですね。
「それじゃ開戦です――――――」
合図と共に二人とも操作を開始。どっちも余裕の表情です。
でも、戦力差は明日真が圧倒的優勢。
明日真の戦力70000を超える程、対してひまわりは戦力25000。
もう、決まりましたね。明日真の圧勝です。名作の名言を借りれば――――――。

徹夜ゲームは、伊達じゃない!by連邦の白い悪魔さん

その戦力を持って攻めるのかと思ったら、明日真は待ちに徹する様子。
多少意地が悪いように思いますけど、攻めてきたら確実にひまわりの負け。
「それじゃぁ、攻撃するよ」
え?
「なに!?まぁ、お前の負けは確定だろうから、早めに決着でいいけどな」
「まあまあ、そうはならないと思うよ――――――」
クスクス笑ったひまわりが攻撃指示をだした後、明日真の拠点に向けて何本もの進軍マークが向かう。
これは!!援軍です!!
ひまわりのクラン全員が、明日真の拠点に集結しているんです。
「うそ!これ卑怯だろ!反則反則!」
「そんなルールはなかったでしょ?勝敗は、相手にどれだけ被害を与えるかでしょ?」
「う―――」
そういえばそうでした。
つまり、テレビ見ながらメールしてたのは――――――。
周囲の女子たちが、全員スマフォを出して操作してるってコトが全てを物語ってます。

結果は、ひまわりの圧勝。
全員で明日真の戦力を削った後に、戦力が上回ったひまわりの軍隊が突入。完全にひまわりの作戦勝ちです。
「それじゃ、三家ルール追加するよ―――」
「くそっ!かってにしろ!」
「遠慮なくいくね。――――――12時以降の夜更かし厳禁!発覚時はお母さんたちに報告して、お小遣い差し止めになります」

「「え!!!」」

私と明日真の声がハモったです。
「ちょっとまて!それじゃぁ対戦が―――――」
「……深夜アニメが――――――」
「問答無用!決定事項!」
あ、……あう――――――。
しまったです。二人を観察するあまり、三家ルールは自分にもとばっちりがあるのを失念してたのですよ。
名作の名言を借りれば――――――。

認めたくないものだな。若さゆえの過ちというものは……です。by仮面の赤い人

執筆者: 編集部