バロックを抱く揺籠
Takamasa Ikeda
ミステリーノベルゲーム
基本プレイ無料
悲しく、美しい別れ。近世スペイン王家をモチーフにした、 オカルトチックなダークファンタジー
近世スペイン王家モチーフのダークファンタジー
「バロックを抱く揺籠」は、手書き風のグラフィックが魅力的なノベルアドベンチャー。
歴史家を志す学者の卵となり、断絶した王家の「失われた肖像画」を所有するという画廊を訪れる…。
雰囲気ある手書き風のグラフィック、美しい文章とBGM。広告や課金要素はなし。おれにはわかる。ある種の人間に強烈に刺さる作品だと。
画廊と絵画にまつわる重厚なダークファンタジー
タッチ文章を読み進めていくノベルアドベンチャー。画廊の主人が肖像画のモデルたちにまつわる物語を、ひと夜に一つずつ語っていく。
謎めいた幻想的な寓話が、読みすすめると点と点が線になっていく。この構成は見事と言うほかない。補足的なサブテキストとして歴史資料を閲覧できるのもよい。
「バロックを抱く揺籠」の特徴は幻想的な感傷の追体験
前作「或る孤独なひとり」もそうだったが、この作者はストーリーテリングと強烈なビジュアルで、ゲームというよりは「体験」をもたらそうとしてるのではないかと思う。
クラシカルなビジュアルと美しい言葉選び。選択肢はないノベルだが、謎を解き明かす行為そのものがゲームなのかもしれない。気づけば物語に引き込まれている自分がいた。
説明を省いているゆえに読後感の感動は大きい
冒頭、唐突な展開に読者は突き放される感覚に陥ると思う。昨今の親切な作品に比べたら些か説明不足なのかもしれないが、だからこそ読みすすめた時のカタルシスはデカい。
きちんと数時間で完結する物語。終わりがあるからこそ心に残る。短編映画のような読後感を残す佳作だ。
ゲームの流れ
画廊の主人のふるめかしい言葉遣い。
絵に描かれた登場人物たちのダークファンタジーがはじまる。
選択肢はない。過去にもう起こってしまった出来事なのだから。
この物語たちに教訓ではないし、痛みだけでもない。でも何かが確実に残るのだ。
繰り返し遊ぶことにより画廊の作品は増えていく。
最後まで読みたくさせるひっかけが用意されている。
資料室から物語の「背景」…つまりネタバレを確認することができる。
このサービス精神が見事だ。
また繰り返し扉を開ける。その度に新しい物語がはじまる。
少しずつ変わっていく謎の店主の洒脱な言葉選びにも注目だ。
「バロックを抱く揺籠」の序盤攻略のコツ
オートセーブに対応してるし、画面をタッチするだけなので、ゲームとして難しい動作は特にない。
繰り返しプレイすることで新たな絵画が増え、物語が展開していく。最初はちんぷんかんぷんかもしれないが、読みすすめると面白さでゲームが止まらなくなるぜ。
資料室やフィルムコレクションを閲覧しよう
本作ではバックログを確認したり、資料室やフィルムコレクションから物語の背景を学んだりイベントを追体験できる。
ただ、一瞬挿入される演出など、細部にこそこの作者のこだわる「美しさ」があるような気がするのだよなあ。そういうとこにこそ刮目したい。