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優しく、そして苦く、切ない物語
「潮騒の街」はまるで小説のような読後感がたまらない、大人になる痛みを描いたRPG風アドベンチャー。
都会の生活に疲れ、海の見える街へ移り住んできた青年。
「潮騒の街」での様々な出会いと別れが彼の心を変えてゆく。
RPG風のドット絵とピアノにはっとするアドベンチャー。
まるで「ロマンシングサガ」や「ライブ・ア・ライブ」のような、古き良きスクウェアのRPGのようなドット絵を、美しいピアノのメロディが彩る。
戦闘や謎解きはなく、ストーリーを見せることに専念したつくりで、ゲームの苦手な方でも楽しめるアドベンチャーになっている。
心の傷を描いた物語
この街の住人は皆、何かしらで深く傷ついている。主人公も同様だ。彼は、スーパーヒーローでも、まして勇者でもない。ただの人間、そして深く傷ついた男だ。
「普通」の人間が、弱さをむき出しにして動くストーリー。だからこそ一つ一つの情景が、言葉が、心を打つ。
「潮騒の街」の魅力は、大人向けの痛々しい心象描写
実写映画化された「つぐのひ」シリーズなどを手がけた ImCyan氏と 「償いの時計」「しあわせのあおいとり」など、鮮烈なドット絵表現を生み出したDaigo Studioと共同で作った作品となる。
レトロなRPGの雰囲気を漂わせつつ、まるでノベルゲームのような、重く人間臭いストーリーが繰り広げられる。その苦い痛みはきっと、大人になればなるほど味わい深く楽しめるだろう。
小説を読んでいるかのような演出の数々
レトロなドット絵のキャラと対比するかのように、光や水を描いた背景は郷愁をそそり、美しい。少なめの言葉だからこそ強く、想像力を揺さぶられるセリフの数々。まるで演劇や小説を読んでいるかのような気分になった。
数時間の物語が、短いからこそきっとプレイヤーの心に刺さり、日常の景色を少しだけ鮮やかにする。少なくとも僕はそうだった。夏が来る前に、海に行こうと思った。
痛々しい心の傷を描写するストーリー
物語には「死」が重くつきまとう。潮騒の街の美しさに反し、物語は決して明るくない。安物の永遠やご都合主義の希望は決して描かれない。
それでいて、独りよがりに心を閉ざす主人公に、住人たちは少しだけ、つながる可能性を提示してくれる(まるで、エヴァでシンジがアスカや綾波と触れ合った時のように。)。ゲームをクリアし、物語を読み終えた自分の心は、なぜか、どこか清々しかった。
ゲームの流れ
主人公はなぜ、都会に疲れてしまったのだろう。実写の風景が効果的に使われる。
どうしてか、人は海に向かいたくなる。はしゃぎたいときも、諦める時も。死にたい時も。
主人公の部屋に遊びに来る少女。読書が好きで、主人公はいつも本を貸している。
だが彼女には秘密があるようだ。
夜の海。波打つ桟橋で青年は女性と出会う。
登場人物の心が木の形で、心象風景として描かれる。
主人公の心の木は、かたくなに枯れたままだった。
かつて、主人公は強欲で利己的だったことが伺える本棚の数々。
そして、その呪いは強く、人は簡単に変われないことをこの物語は鋭く描く。
優しい隣人の旦那は今度子供が生まれるらしい。
兄が心配してこの街まで駆けつけるらしい。無愛想だけど、ゴミ拾いを続ける老婆。じれったいくらいささやかな速度で少しずつ青年の心は動き始める。
「潮騒の街」序盤攻略のコツ
タップで高速移動して怪しいところを調べ、物語を進めていく。操作性もよく、難しい箇所もないため誰でもエンディングまでたどり着けるだろう。
どうやら今回はマルチエンディングではないようだ。だが、エンディングまでたどり着いた後の楽しみは豊富なので期待してクリアしてほしい。
キャラクターのセリフに注目しよう
マップは狭く、どこに行けばいいのか困ることはほぼない。だいたいの行き先は、主人公のモノローグが提示してくれる。
ただ、ヒント機能などはないので主人公のセリフは読み飛ばししないように気をつけよう。最もこういう作品を好む人にはそのアドバイスはお節介というものだが。
落ち着いた環境でプレイしよう
正直攻略のコツなど蛇足でしかない。ネタバレは極力しないように努めた。できたら通勤通学途中などではなく、音楽を聞きながら落ち着ける環境で物語を味わってほしい。
感想をネットに作者に届けてほしい。これはもう攻略のコツではなく単なるエゴだな。最後になるが、本作を共作したDaigo Studioの特集記事も自分が書いたのでそれも併せて読んでいただければ幸いである。
【注目デベロッパー】Daigo Studio〜ドット絵だからこその残酷表現。強烈な読後感を残す謎解きアドベンチャーの旗手