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・のぞきみクラブ
・ミリオンオニオンホテル
こんにちは。
アプリゲット編集部のそまです。
TGSのインディーゲームコーナーで、とても気持ち良い操作感と丁寧な作りのゲーム「ミリオンオニオンホテル」がプレイアブル展示されていました。
その作者を調べてびっくり!過去に「moon」や「王様物語」など不思議な(木村さんいわく「変な」)世界観のゲームを手掛けていた、木村祥朗氏が代表を務める、オニオンゲームスでした。
これは発売前にインタビューしておかないと!
ということで、製作真っ只中で大忙しのオニオンゲームス代表の木村さんに、ミリオンオニオンホテルのことについてうかがってきました。
―いきなりなんですが、事前登録メルマガの「のぞきみクラブ」では発売日が発表されていましたが、進捗はいかがですか?
木村祥朗:進捗ですか…すごいヘビーなところから聞きますよね(笑)
まあ、なんだろう。1日8時間とかね、このゲームに費やせれば、もう手は届いてると思うんですけど、そうでもないんで。
他の時間は普通に仕事してるんで、一日にゼロって日もあるし、土日だったら8時間とかかけても大丈夫なんですけど。でも平日だとやっぱり、ゼロか4時間ぐらいかな。
-そうですよね。仕事した後、取れる時間て4時間とかが限界ですよね。
木村:ふつうに6時まで仕事したとして、ご飯食べて7時だとしてそっから4時間やったら、もう寝る時間じゃないですか。でも、そんな風にもいかないでしょ。だいたいこう、昼の仕事も溢れるし…だから大変ですよね。
もう、亀の歩みですよ。だから逆算するのもすごく難しくて、『だいたいここまで来たらすぐだろ』と思ってからが、長いみたいな
-なるほど。なのでやっぱり『目標』を?
木村:あの目標はあぶないですよね。がんばりますけど。
-TGSの時に拝見した時には、個人的には『もうそろそろ出るのかな』と思ったんですけど。
木村:あれってビットサミットの時と同じ奴なんですけど、結局、TGSとかショーに来て遊んでいただく人のためにコンパクトなとこだけデバックしてバグが出ないようにしないといけないんで。
で、あと作りかけの要素とか出さないんで、だから逆に出来てるように見えちゃうんです。みんな「あれを出せば良いじゃん」って言うんですけど。
もちろんあのままの状態で、To be continuedで良いんなら出せますよ。それって許されないでしょ、って話で(笑)
無料でダウンロードできるっていうモノでもないし。ちゃんとした完成したのをお渡しできるように頑張りたいですね。
-TGSの時に遊ばせてもらったモノに比べると製品版では、かなり違う要素もたくさん入ってくるんでしょうか。
木村:たくさんかどうか分からないけど(笑)少なくともボスが登場したとこでTo be continuedになっちゃうじゃないですか。
ボスと戦えることでゲームの質というか、雰囲気が変わっちゃうんで。
自分でも楽しみです。
目次
普通のドット絵じゃないから、ピコピコじゃなくたっていい
ボスの音楽とか、スゴい良いっスよ。ボスの音楽、聞きます?
-ぜひ!
(ボスの音楽は製品版で聞いてね!)
ちょっと変わってるでしょ、この音楽。ジャンルがないんですよ。ファンク、ビッグバンド、ジャズ、エレクトロみたいな。
-そうですね、スイングっぽい音もありますし、けっこうジャジーですよね。
雰囲気が、異色という言い方が正しいのか分かんないけど、変わってますよね。
あまり昨今見たことない…
木村:ポイントがドット絵なのにピコピコ音を使ってないところに意味がある!
-背景はドットじゃなくグラデーションになってたり、ピクセル数が普通のドットと違うんじゃないかと思ったんですが。
木村:あ、違うよ。
ボクらの単位で『1ドット6ピクセル』って呼んでるモノがあって、『ドット』っていうのは四角い塊をさしてて、『ピクセル』っていうのはホントに画面の解像度とかに関してのホントの小さい1ピクセルを指して喋ってるんですけど、そういう風にみんなで決めてて。
今回の絵は『1ドット6ピクセル』で行こうって言って。
だから元々のデータはスゴい小さいんだけど、6倍にして表示されててお得です!データがお得です、みたいな感じ。
あのドット絵について聞いてくれる人いて良かったです(笑)
なんかね、ドット絵のゲーム大好きなんですよ、ボク。
ナムコとかさ、昔のゲームのアタリとかセガとか大好きだったんだけど、いま自分たちの時代にドット絵のゲームを作る時にただドット絵のゲーム作ってもどうかなと思って。
工夫しようと思って、ドット1ドットづつに、うっすらテクスチャーが入ってるんですよ。テクチャーっていうのは、紙っぽい材質というか紙工作みたいになるように。
なんかさドットってモザイクっぽいじゃないですか?モザイクといえば色々あるじゃない、世界に。
タイルでモザイク作ったりとか、セロハンで作ったりモザイク作ったり。
いろんなモザイクが世の中にあるんですよ。
だからドット絵っていう概念なんだけどスタイルとしてはペーパークラフトみたいな。
そういう雰囲気を入れようと思ってやってるんで。
ただのドット絵じゃないんで、それだったら矩形波のPSGのピコピコじゃなくても大丈夫かなと思って、好きな世界の音楽を持ってきてるんです。
-TGSのときに触ってすごく気持ちよかったんですが、あれもドット絵の工夫もあるんでしょうか。大きく動かすとか。
木村:そうなんですよ、大げさに動くようにしてます。
あとは、タッチの反応とかを、バババッって押してもスゴい凄まじく反応するようにしてあって。そこは凝ってる。
最初の段階から『タッチの反応』を一番良い感じで反応させる方法はずっとやり続けてるんです。とくに工夫とか細かくは説明できないんですけど色々やってます。
https://youtu.be/ildvdqaEvTE?rel=0″ height=”315″ width=”560″ allowfullscreen=”
ドット絵やその動きと、不思議な音楽の一端は動画で見てみよう。
作りたいって気持ちで合体してる。
-お一人で作られてるんですか?
木村:ううん、一人じゃ作れないです。
ボクはね、ゲームデザイナー兼プランナー兼ディレクター兼プロデューサー兼…みたいな感じですけど、それプラス『エンジニア』と『ピクセルアーティスト』と『サウンドコンポーザー』と、あとフラッシュのデモが出てくるじゃないですか、あれをやってくれてるメンバーがいる。
それで、みんながちょっとづつやってますよ。
ボクが何を作ってほしいっていう仕様のテキストがあって、それを配ってます。
配ってから、作業してもらって、、『実装できました!』『確認!』みたいな。
なので、ボクは基本的にデータうちと、実装確認してます。
自分で書いた仕様を実行するための段取りをみんなに踏んでもらったあとにいつも最終確認するんで、みんなが『確認してくれ』ってくるじゃないですか。
1対5じゃないですか。
夕方6時ぐらいにFacebookのチャットがパパパパッとついて、『アワアワ、全部答えるんだ!!』って必死で答える(笑)
あとそれに対しては感謝しかないじゃないですか。『ありがとうございます』っていう気持ちじゃないですか。
ボクらはギャラで縛られてないわけですよ。
お金の関係じゃないんで、そこはやっぱり、自分の時間を割いてやってくれてるっていうことに対して、ホントにもうありがたいよね。
インディーゲームの人たちが最初に直面するのはお金がなくてもゲームを作りたくて、『作りたい』っていう気持ちだけで合体してられるかっていうそこに尽きるんですけど。
だから、ボクらの間ではお金の話は出ないですね。
あと、売ったらどうなるの話はもちろんありますけど、売るのも、、それ、ボクの努力にかかってるじゃないですか。。。
ゲームのルールを考えて、データを打つのもボクですけど、しかもそれをショーに申し込んだり、それもボクだし、ゲーム作りという立ち位置からすると、ある意味雑用ばっかりです(笑)
ボクが代表して宣伝やってますけど、ボクも籠って本当は作ってたいです。
作ってたいんですけど、役回りとして『ボクが宣伝せずして誰がする!』っていうチームなわけだから、やらないとダメじゃないですか。
使命です、役割分担。
ほんとは憧れてるのはゲームだけの力で『スゲー面白いの出た!』って、誰かが気づいてくれて、それでバズって、宣伝とかせずに売れたらいいと心から思いますけど。
実際は両方やらないとダメっていう。
遊びから生まれて、作りながらの気づきで育てた
-どのように企画はできあがっていったんでしょうか?
木村:ああ、『仕様』ってあるでしょ?
今回は仕様を作る順番が先じゃないんですよ。
プログラマーと話しながら、遊んでたんですよ。
ボクがラフの絵を描いて、プログラマーが「こう?」「どう?」とか言って、倉島さんがドット絵化したモノを動かしてみる。
こんなんどう、あんなんどうって遊んでたんです。
ゲームになると思ってないです、ただ遊んでたんです。
それであるタイミングで『こりゃ良いアイデアだ』と思った時があって。
そん時に突然『ホテルにしよう!』みたいな。ホテルにして、いっぱいキャラクターを出してピース博士とかどうかなと思ったりして。
-けっこうジャストアイデア的なモノとして出してきたモノを形にしたんですか?
木村:ジャストアイデアじゃないですよ。ここが面白いんですよ!
ゲームってね、作る前に考えてることと、作ってから気づくことがあるんですよ。
作ってる間に、色んなことをああだこうだ、話して『こういう時こう感じるよね』って話をしてる時の方が作る前に考えた仕様よりも正しいことがいっぱいあるんですよ(笑)
もちろん、時々ね、ポイントポイントで仕様書みたいなモノ書いてるんだけど。
で、最後の最後のビットサミットバージョンの時くらいからですけど、トドメをさすために仕様書、書いてますよ。
プロトタイプとは何なのかっていう時に、『面白い操作』と『面白いルール』が体感して遊べたら『プロトタイプゴール』じゃないですか?
だから『ミリオンオニオンホテル』にも『プロトタイプゴール』っていうタイミングがあって、それをゴールした途端に、突然『ああ、こういう世界観で物語とか付けちゃったりして』みたいな『途中にデモとか入ったりして』みたいな話をしたんですよ。
この話はね、普通に仕事でゲーム作る時はこの作り方するのは辛いはずなんです。
だって成るかどうか分からないことを、日々の時間でさ、労働時間にそれ費やすわけにいかないじゃないですか?
-そうですね。『効率』っていう話になれば、効率良くない作り方ではありますよね。
木村:どうでしょう…(笑)
敵はね、『効率』っていう単語に踊らされている、『効率がいいこと』=『正義』みたいな、そういう頭の使い方をする効率主義者です!『エセ効率主義者』です!
だから、面白くない時は、『面白くないから作り直そう』って言わなきゃダメなんですよ。
-立ち止まらなきゃいけないんですか?
木村:それは立ち止まるべきなんです。で、たぶんだよ。お金かけてても、かけてなくても、面白いゲームを作るためには、『立ち止まり』をやってると思うんだよな。
正直に「つまんないね。」と言って、「でも良くしよう!」って空気に出す
そもそもね、このゲーム、作りはじめが、みんなの好意で出来てる。だから、ボクの役目は正直に言うことなんですよ、面白いか、面白くないか。
僕が正直でいないと、一緒にやってる僕の価値が途端になくなってしまうんです。
みんなががんばったか、がんばってないかじゃなくて、そのモノが面白い、面白くないかを言うべきなんですよ。
お金かかっていても、かかってなくても同じなんですけどね。
ただ、趣味でやってる時にお互いの信頼が厚い人同士でやってる時の方が言いやすいよね。
お金かかってるとどうなんだろ?分かんない(笑)
ゲーム作りは、つまんないとか、面白いに対しての正直さが大事なんです
よくさあ、こういうのってない?
面白くないモノがあった時に、『それ、つまんないね』っていう意見、あるじゃないですか?
で、【『つまんないね』って言うんだったら、代案を出せ!】っていう人、よくいるじゃん。
-ああ、いますね。じゃあ、どうするんだって?
木村:「そこまで言えないんだったら、場の空気が悪くなるんで『つまんないね』なんて言うなよ」みたいな。
それはね、間違ってる!
つまんない時にはまず『つまんないね』って言って、でもつまんないけど面白くするためにはどうしたらいいんだろうねっていう、空気を出すところまで届いていたら『つまんないね』って言う権利は誰にでもあると思うんです!
で、みんないま批評したり批判したりすると周りから、より高いレベルの何かを求められたりとか、より良い意見を求められたりとかするから言いにくいんですよ。
でも、まず『それがいま、つまんないんだ』っていう現状認識をみんなでして、『たしかにいままだつまんない。ね、つまんないよね?でも、良くしようよ』って話になったら乗り越えられるけどその現状認識がないと、『いいと思ってんのかな、これって?』みたいな。
-チーム内で探り合いの状態になったりしますね。
木村:くだらないでしょ、そんな探り合いは。
だから、上手くいってない時とか、あぁアカンなと思ったらとくにディレクター職の人は「アカンな」って言うべきなんです!
その代わりすぐに、代案を出す!でも代案を出せなくても、ニッコリと『どうする?』って言って、『さあみんなで考えよう! たちむかおう! 』って雰囲気にしなきゃいけないんです!
-そこが一番、本来仕事としてやるべきところなのかもしれませんね。
木村:それを趣味でやってます(笑)
趣味っていうか、これも仕事なんです。ボクらにとっては。
『夜の仕事』って呼んでますけど。
これで一躍儲けて次のゲームを作るんですよ、オニオンゲームスは次のゲームを作るんですよ!
執事『チン・ポンチ』の役割
ボク、こういう変なゲーム作りたいと思うとね、あんまりね、作れないんですよ、ちゃんとしてる所と一緒に。
で、ちゃんとした会社に真面目なRPGつくれって言われても作れないんですよね。
-でも、過去に関わられたゲームとかRPGが多いですよね。
木村:『moon』も変なRPGだし、『チュウリップ』も変なアドベンチャーだし、『王様物語』、ぱっと見、王道みたいに見えて、遊ぶとムチャクチャだし。
おかしな人、いっぱい出てくる。すぐ裸のキャラを出すでしょ。上半身裸のオジサンが大好きなんです(笑)
-のぞきみクラブの執事の名前も『チン・ポンチ』ですよね(笑)
木村:…読んでるんだ?(笑)
のぞきみクラブのメルマガに書いたらどれくらいの人が読んでるんだろうなって、ドキドキするんだよね。
このゲームを好きな人がきっと読もうとしてくれてるから、この人たちに向けてチン・ポンチは訴えるべきだと思って、執事としてイタコが降りてくる時には必死です(笑)
まあ、上から読んでも、下から読んでも『チンポンチ』っていう。それが言いたいだけなんですけど(笑)。
アメリカ人もアスパラさんが好きでした。
そういえば『インディーケード』っていうアメリカのイベントに行ってきました。
ゲーム見せに。アメリカ人がどんな反応するかと思って。
-どうでした?
木村:ほどほどです。
でも、アスパラさんが出てきたら喜んでくれることが認知できたんで、自信をもってアメリカ版にもアスパラさんを出そうと思うんですけど。
-万国共通なんですね、アスパラさんは。
木村:ていうかね、キャラクターが出てくるインディーゲームは少ない!
日本人てキャラクター好きなんだね。
ゆるキャラもそうなんだけど、『キャラクターにする』っていうのが大好きで。
献血の血のキャラいるじゃない?血をテーマにした、あれヤバっスいよね、名前忘れましたけど。
アレ見た時に『血かよ!』『赤血球かよ!』みたいな!ここに(耳に)血がついてるのがいるんですよ!あれがいま新宿にいるんだけど最高に恐ろしいんだよ。
-(画像見せて)この子のことですか?
木村:そうそれそれ!ちょい怖いんだよ。可愛いフリして血かよっていう(笑)
日本人てこれなんだろうなって。
-ミリオンオニオンホテルが発売されるまで、チン・ポンチの活躍をメルマガからのぞいて待つことにします!本日はありがとうございました!
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出展情報
また、11月16日(日)に秋葉原で行われる、「デジゲー博」への出展するそうです。
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