ドラマ『白い巨塔(唐沢寿明)』の動画を全話無料で見れる配信アプリまとめ

  • 2024年3月25日
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2003年10月〜2004年3月に放送されたドラマ『白い巨塔(唐沢寿明)』

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『白い巨塔(唐沢寿明)』はどんな作品?

この章では『白い巨塔(唐沢寿明)』について情報を整理してまとめています。

話数 全21話
放送年 2003年10月期
放送枠 フジテレビ系 木曜日22時
原作 山崎豊子「白い巨塔」
脚本 井上由美子
演出 西谷弘
音楽 加古隆
キャスト 財前五郎 … 唐沢寿明(浪速大学第一外科助教授)
里見脩二 … 江口洋介(同第一内科助教授)
花森ケイ子 … 黒木瞳(クラブ・アラジンのママ)
東 佐枝子 … 矢田亜希子(東教授の娘)
里見三知代 … 水野真紀(里見の妻)
菊川 昇 … 沢村一樹(心臓外科医)
佃 友博 … 片岡孝太郎(第一外科医局長)
鵜飼医学部長 … 伊武雅刀(第一内科教授)
財前杏子 … 若村麻由美(財前の妻)
亀山君子 … 西田尚美(外科病棟ナース)
鵜飼典江 … 野川由美子(鵜飼の妻)
黒川きぬ … 池内淳子(財前の母)
柳原 弘 … 伊藤英明(第一外科医局員)
東 貞蔵 … 石坂浩二(第一外科教授)
財前又一 … 西田敏行(財前マタニティクリニック院長、財前の舅)

井上由美子 加古隆 西谷弘 唐沢寿明 水野真紀 江口洋介 沢村一樹 片岡孝太郎 矢田亜希子 黒木瞳

主人公

名前(演) 財前五郎(唐沢寿明)
職業など 浪速大学第一外科助教授

 

あらすじ

医学界の知られざる実態と人間の生命の尊厳を描いた山崎豊子の代表作「白い巨塔」を、25年ぶりに再連続ドラマ化します。原作の持つ圧倒的なエネルギーはそのままに、舞台設定を現代に置き換え、徹底した取材をもってリアリティを追求しつつ、人間の業を深く掘り下げる、濃密な内容の本格派ドラマを目指します。豪華キャストを配しての、全21話・2クールの大型企画、フジテレビが贈る大河ドラマです。

引用元:公式サイト

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『白い巨塔(唐沢寿明)』の各話あらすじ

1話~12話

第1話

あらすじ

浪速大学病院の手術室では鶴川大阪府知事の食道がんの手術が始まろうとしていた。第一外科の金井講師(奥田達士)や佃医局長(片岡孝太郎)らが緊張し忙しく立ち働いている。見学室には、鵜飼医学部長(伊武雅刀)、東第一外科教授(石坂浩二)、則内病院長(田中主将)もそろった。だが、執刀医の財前五郎助教授(唐沢寿明)が現れない。オペの時間が始まろうとするその時、財前が登場した。あせる周囲を黙殺し、財前は、時計を一瞥、一気にメスを振るい始めた。神業のような財前の手並みは正確にして敏速を極めた。がんは食道だけではなく大動脈にまで浸潤していたが、財前はひるまずメスを進め、吹き出る血にも顔色一つ変えず腕を振るう。手術完了。4時間35分…驚異的な短さである。財前は見学室に一礼した。
そんなころ、里見第一内科助教授(江口洋介)は、鵜飼によって胃がんと診断された患者・小西みどりの症状に疑問を抱き始めていた。
鶴川知事の手術に対して記者会見が開かれた。責任者である東が説明しようとするが、記者は財前のコメントを求める。東は不快感を隠さず、財前の自信に満ちた解説を聞くのだった。
そのニュースを、財前の妻・杏子(若村麻由美)とその父で産婦人科の開業医・又一(西田敏行)が喜んで見ていた。又一は「五郎君の次期教授は間違いなしや。前祝をしようやないか」と興奮するのだった。
みどりの症状が気に掛かる里見は、鵜飼に診断を質す。里見は、鵜飼の見立てである胃がんだけではなく、膵臓がんを併発している可能性を指摘するが、鵜飼は「神経質すぎる」と取り合わない。
その夜、財前は、愛人のクラブママ・ケイ子(黒木瞳)のマンションを訪れた。医学部中退のケイ子は「目立ちすぎじゃないの」と揶揄しつつも、有能で逞しい財前に抱かれるのであった。
翌日、東教授の総回診が始まった。財前ら医局員を従え、外科病棟を回診するのだ。財前が、執刀した患者を前に自慢話を始めると、ほかの医局員を前に、東はピシャリと諌めた。さらに「昨日の手術は乱暴である。自分の腕に酩酊するな」と叱責するのだった。東は一年足らずで退官である。財前は加齢によっての嫉妬だと想像するが、教授選の実権を握る大物の一人ではあった。
家に帰った東は、一人娘の佐枝子(矢田亜希子)に、現役教授の間に結婚してくれ、と、弱音とも本音ともつかぬ愚痴をこぼす。だが、佐枝子は違う世界の人か、医学関係でも開業医がいい、と言う。東は語気を強め「開業医は医学の世界では負け犬だ」と決め付ける。そこへ、東の妻政子(高畑淳子)が怒って帰って来た。教授婦人会「くれない会」で恥をかかされたと言う。週刊誌に掲載された知事の手術会見の写真で財前ばかりが注目されている、今や「財前外科」ではないかなどと話題になったのだ。父をなじる母を見て、佐枝子は恥じ入るのであった。
財前は又一に呼ばれ料亭へ足を運んだ。又一は「ワシはあんたに教授になって欲しいんや。わしの果たせんかった夢、かなえてや。わしは財前ちゅう株に投資しとるんや」と、教授選支援の腹を固め高笑いするのだった。
そのころクラブ・アラジンでは、東と鵜飼が密会していた。東が「後任教授で悩んでいる」と切り出す。鵜飼は「財前の野心と言うが彼は切れる。うちの里見は理想が高いばかりで…」と煙に巻こうとする。だが、東は「理想は大いなる魂に宿り、野心は小さな魂に取り付く」と迫る。鵜飼は苦笑し「ならば、よそからいうことを聞く方を連れて来ればいいでしょう。ご自身への批判が嫌なら、教授会の票を操ればいい」と皮肉を交え指南する。
その席にケイ子が近づく。と同時に財前と又一が店に入って来た。ケイ子は二人を東、鵜飼のテーブルに案内した。又一は舞い上がって義理の息子の自慢を始める。その時、財前の携帯が鳴った。席を外し電話に出るとケイ子である。「東さん、あなたを教授にしたくないようよ。五郎ちゃんはおめでたいところがあるから注意してね。登りつめたいのならもっと陰険な用心深さを持って」と教授する。財前は、東に対して激しい怒りに襲われた。だが、席に戻った財前は何食わぬ顔で東を立てるのだった。
ある日、財前は時間を見て、岡山の老いた母に仕送りをした。それから電話をかけた。「教授になったらもう少し楽させてやれるから」。「そんなに頑張らなくてもいいんだよ」。「俺自身のためにやってるんだ」。会話を終えると、財前は「白い巨塔」を目指し歩を進めた。
里見に頼まれ、財前は小西みどりのMRIのデータに目を通していた。「間違いなく膵臓がんだ。さすが里見君」と財前。里見は「君が手術してくれるか」と頼む。財前も珍しい症例にファイトを燃やす。と、里見ががんの告知すらしていないのに、財前はみどりに「初期の胃がんと膵臓がん併発」と唐突に告知してしまう。里見は怒るが「僕の言葉でがんを受け入れ、手術する勇気を持った」と財前。「医者は神様じゃない。人間だ」と諭す里見。だが、財前は「青臭い議論より手術を急ぐのが先だ」と取り合わない。
ところが、後日、みどりの最初の診断が鵜飼医学部長による見落としであると知った財前は、「あとがうるさそうだ」とばかりに里見に手術を降りると言い放った。

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第2話 贈り物

あらすじ

浪速大医学部助教授の外科医・財前五郎(唐沢寿明)は、医局員の柳原(伊藤英明)の論文をチェックしていた。柳原は貧しい家庭の出身で、同様の生い立ちでありながら一流の腕を持つ財前にあこがれを抱いていると言う。財前は笑って柳原を見送るが、「一緒にするな」と言い捨てるのであった。そして、気になっていた膵臓がん患者・小西みどり(河合美智子)のMRI画像を見つめた。
財前は、小西の異常を見抜いた担当内科医の里見助教授(江口洋介)を訪ね、一度は断った小西の手術を執刀させろと申し出る。鵜飼医学部長(伊武雅刀)の診断見落としがからむので、教授選を控えいらぬ波風は立てたくないと先に断ったものの、初期膵臓がんの手術例は極めて少ない。外科医としての意欲と功名心が勝ったのだ。タイミングよく第一外科の東教授(石坂浩二)は出張に出掛ける。その時に緊急オペとして処理すれば、鵜飼にも東にも知られないですむと考えたのだ。
融通の利かない里見は隠れて手術をやることに猛反対したが、財前は「患者は君の玩具じゃない。僕も君と一緒で、彼女を助けたいんだ」と話を正当化し寄り切った。
小西の緊急オペが始まった。見学室から注目する里見。だが、東派の金井講師(奥田達士)は密室オペに賛同できないと手術室を出て行く。手際のいい見事な技術で、胃がんと、その裏に隠れていた小さな膵臓がんを処置し、手術は無事終了した。財前と里見は、互いの医者としての技術を素直に讃えあった。
そのころ、東は娘の佐枝子(矢田亜希子)を伴って、東京の外科学会パーティに出席していた。弟弟子の東都大・船尾教授(中原丈雄)が会長に就任したのだ。東の意図はその祝いだけでなく、自分の後任教授を財前ではなく、東都大の学閥から持って来ようと、船尾に相談することにあった。船尾は兄弟子の頼みであり、東都大の勢力拡大もにらんで引き受けることにした。
財前から小西の膵臓がん手術の話を聞いた舅の又一(西田敏行)は、財前の思慮の甘さをなじった。ルール無視の手術を知られた時、鵜飼はともかく東に弱みを握られることになると言うのだ。だが、財前は「専門が食道外科だけだと教授になった後行き詰る。引き出しを増やしておかないと」と説明する。「教授以後」と聞いた又一は、気をよくし、「しっかり、後始末しときなはれ。実弾や」と数百万の札束を積み上げるのだった。
財前は愛人であるクラブ・アラジンのママ・ケイ子(黒木瞳)のもとへ向かった。大手術が成功するとケイ子を抱きたくなるのだった。だが、女子医大中退で皮肉屋のケイ子は「内科医の方があなたよりお手柄ね」と茶化し、財前が怒るのをみて「あなたが怒ると退屈が吹っ飛ぶわ」と喜ぶのだった。そこで財前は、アラジン常連の鵜飼の好みや行動をケイ子から探るのだった。
翌朝、財前は妻の杏子(若村麻由美)を誘って、画廊に出かけた。そこには鵜飼部長が妻の典江(野川由美子)を伴って、すでに鑑賞中であった。財前は、ケイ子から聞き出した情報から、偶然を装った画廊での鵜飼との遭遇を画策したのだ。鵜飼と表向きの挨拶を済ませた財前は、鵜飼夫婦と杏子が帰った後、鵜飼好みの絵400万円相当を画廊店主に包ませるのだった。又一名義で鵜飼に贈ることを命じて。
そんな晩、一人になった財前は、家になった柿を送ってきた母・きぬ(池内淳子)に「うまかったよ、母ちゃん」と電話するのであった。「なにもかもうまくいっている」と。
財前が小西みどりを診察していると、夫が菓子折りを出す。財前は断るが「ただの饅頭です。気持ちです」とくどいので受け取ることにした。部屋に帰って開けると、本当に“ただの和菓子”であり財前苦笑。と、そこへ里見が入ってくる。里見は「鵜飼に本当のことを話そう」と言い出す。奇麗事を並べる里見に財前は「部長あたりの不興を買って地方に飛ばされでもすれば、君の大好きな研究だって出来なくなるんだ」と言い放つ。
財前が医局の人間たちとその菓子折りを広げていると、東が入って来た。東は菓子に目をやり、「患者からの付け届けを受け取るとは何事か。人格が優れてなければ医者とは言えん」と財前を叱責する。
そのころ、鵜飼の自宅では典江の誕生会が行われていた。出席者は、東の妻・政子(高畑淳子)や産婦人科教授葉山の妻・昭子(水野あや)ら医学部婦人会「くれない会」のメンバーである。そこには東の娘・佐枝子も里見の妻・美知代(水野真紀)も加わっていた。二人は、虚栄渦巻くその場になじめず、自然と目を合わせるのだった。
財前は鵜飼に呼び出され、アラジンに向かった。鵜飼は「あの絵はどういうつもりだね。お舅さんからで頂く筋ではない」と切り出す。その質問を予想していた財前は「いろいろとご指導願いたいとの挨拶であり、他意はない」と弁明する。鵜飼は答えを無視した様子で話を変えた。
「小西みどりの話だが」。財前は絶句した。「今朝、ご主人が挨拶に来てね」と、付け届けのあの菓子折りを取り出す。鵜飼のところにも持っていったのだ。財前はとっさに考えを巡らした。
「あ、あの患者は鵜飼教授のご指摘通り、膵臓がんでしたのでそのように手術し…いい勉強をさせていただきました」と見落としを手柄にすり替えた。鵜飼は菓子を食べながら、鵜飼のミスを胸に仕舞ったような風を装う財前にもう一発見舞った。
「東教授には話したのかね」
財前は答えに窮し…。

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第3話 土下座

あらすじ

鵜飼医学部長(伊武雅刀)は、財前五郎(唐沢寿明)から贈られた油絵を「預かっておく」と微妙な言い回しで受け取り、その真意を明らかにすることはなかった。うろたえる財前が舅の又一(西田敏行)にそのことを報告すると、又一は「含みのあるいいセリフや」と笑い、財前をたしなめつつ地区医師会長の岩田(曾我廼家文童)を紹介した。岩田は鵜飼と浪速大の同期で、鵜飼の医学部長選の折、医師会をまとめ鵜飼部長実現に奔走したのだ。鵜飼にとっては面倒な恩人であった。岩田は、財前の教授選に関しても、医師会、ひいては自分の権益に繋がるとあって、財前の応援を約束した。
家に戻った鵜飼は典江(野川由美子)に「タダより高いものはない」と財前の絵を壁から外すように命じるが、典江は「教授にとってタダはタダ」と応じる気配もない。
そのころ、東の家には東都大の弟弟子・船尾教授(中原丈雄)から、頼んでおいた教授推薦者の履歴書が届いた。政子(高畑淳子)が、気に留める。東が次期教授問題を仄めかすと、政子も財前への不快感を表し東のやり方に賛成する。その俗悪なやりとりを聞いていた佐枝子(矢田亜希子)は「くれない会」で出会った清廉な里見の妻美知代(水野真紀)に電話し気を晴らす。
東は翌日、里見(江口洋介)を呼び出し、財前が執刀した膵臓がん手術のことを問い質した。緊急オペの必要がないのに功名心から東の留守中に手術したのではないか、というのだ。答えに窮した里見は「完璧な手術であり、多くに見学させるべきだった」といかようにも取れる返事をする。だが東はそれを「緊急性なし」と解釈、教授会で財前を査問するよう鵜飼医学部長に申し入れる。鵜飼は自分の見落としがからむことなので「分かった、一任してください」と答えるに留めるのだった。だが、これを「査問する」と理解した東は早速、財前を呼び出し、査問教授会に出席すよう命じる。
ショックを受けた財前に、医局長の佃(片岡孝太郎)は、東に進言したのは里見であると告げる。財前はすぐに里見に電話をかけクラブ・アラジンで会う約束を取り付ける。
愛人のケイ子(黒木瞳)のいるアラジンで、財前は里見に詰め寄った。「君のせいで査問にかけられる」。だが、里見は意に介す様子もなく、「丁度良かった、その件で、教授会に真実を報告しようと思っていた」と正義漢振りを発揮する。財前は土下座して報告書の提出をしないように懇願するが、里見は説を曲げることなく「闘っているのは君だけじゃない」と去って行く。その様子を見ていたケイ子は「里見さんの方があなたより上手ね。でも、あなたが成り上がるところでも、溺れるところでも見てみたい」と言うのだった。
家に帰った財前は、少しく不安気で荒れた様子を見せる。妻・杏子(若村麻由美)は、教授選にからむ何かがあると見て、翌日、東教授宅へあいさつに出向く。フランスパンの手土産に対し、政子は「うちはご飯党、パンは食べない」とけんもほろろの応対である。だが杏子もひるむことなく「次は新潟のお米をお持ちします」と玄関に残った佐枝子に言い放つのであった。
岩田たちの地区医師会は、鵜飼を招いて講演会を開いた。財前の査問を知っていた岩田、又一は、鵜飼を祭り上げる。終了すると、岩田と又一は、又一の愛人の料亭・扇屋に鵜飼を誘い、小宴を催した。控えの間には財前が一人様子を窺っている。鵜飼は、又一に「あの絵はお返しする」と切り出したが…。

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第4話 落選

あらすじ

「ユー&アイ製薬」のやり手営業ウーマン・加奈子(木村多江)が、いつものように浪速大学に現れ、財前(唐沢寿明)や里見(江口洋介)に、新抗がん剤の売り込みをかけていた。財前は加奈子を振り切り、東(石坂浩二)の部屋に入った。部屋には関西財界の大物である大興建設社長・五十嵐(大林丈史)がすわっていた。五十嵐は、食道の腫瘍で東を介し、財前の手術を希望していた。いわゆる「特診」である。上がる一方の財前の名声に、東は不愉快さを隠さなかったが、財界のご機嫌を損ねるわけにはいかない。渋々、財前を呼んだのだった。財前は、あくまでも東を立て遠慮するような素振りを見せながら、内心、まんざらでもなかった。
財前が手術のことで医局長の佃(片岡孝太郎)に指示を出し終えると、佃は次期教授選の心配を口にする。佃は、東が東都大学の船尾教授に頻繁に連絡を取っていると言うのだ。その場を離れると、里見と加奈子がいる。加奈子が財前と里見の仲を茶化そうとした、その時、加奈子は突然昏倒した。
里見が加奈子を診療すると、胃から肝臓、肺に転移した末期のがんであった。
そのころ、財前は、五十嵐の診断をしていたが、東派の金井講師(奥田達士)に手術スタッフから外れるよう指示していた。そちらに掛かりきりの財前は、里見からの加奈子の治療に関する相談を無視した。
芦屋のあるホールで、浪速大医学部の教授婦人会「くれない会」の総会が開かれていた。この日は役員改選が議題である。東の妻・政子(高畑淳子)は、鵜飼医学部長の妻・典江(野川由美子)の続投は堅く、当然、現副会長である自分も再任されると信じて疑わなかった。だが、予想通り会長に再任された典江は、副会長に医学部付属病院長の則内(田中主将)の妻・喜久子(橘ユキコ)を指名した。青ざめる政子であった。政子は、医学部内での権力構造がそのまま転写されるくれない会の常ゆえ、まもなく定年を迎える自分の夫の力が衰えていることを痛感するのであった。
里見の熱意に負けた財前は加奈子の診断に参加したが、手の施しようのない状態ゆえ、外科的治療は意味ない、手術は出来ないと、里見に断言する。里見は「誰かを救うためには誰かを切り捨てるのか」と食い下がるが、財前は「外科は治る可能性のある患者を優先的に救うのであり、大学病院も限られたベッドの中で出来るだけたくさんの患者を救うのが使命だ」と突っぱねる。
東の不穏な動きを心配した財前は舅・又一(西田敏行)に相談する。アラジンに現れた又一は「奉公が報われるとは限らない。結局は金だ。金ですべてを手に入れるのだ」と、財前とケイ子(黒木瞳)の仲を探りながら裏の方法を示唆する。
家に帰った政子は、夫の政治的手腕の貧困さを痛罵し、次期教授選びでもきちんと自分のことを考えて動けと発破を掛ける。東は、船尾が推薦してきた候補二人の履歴書を見せ、話を進めている様子を見せる。政子は即座に「迷う必要はない」と言い放った。「佐枝子のことを考えれば決まることです。独身は菊川さん一人だけでしょう」。政子は佐枝子(矢田亜希子)の結婚相手として菊川を選任せよというのだった。別室でこのやり取りを聞いていた佐枝子はやるせなく扉を閉めた。
五十嵐の手術が始まった。見学室には東と金井がいる。東は金井が手術助手に入っていないことを訝る。「佃君では経験が浅い。本来なら君がやるべきだ」とし「財前君は腕に溺れている芸人である」と思うところを語ったその時、金井が声を上げた。五十嵐の腹腔に大量な出血が始まったのだ。鳴り響く警告音。焦る助手たち。そして…。

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第5話 祝宴

あらすじ

特診患者・五十嵐(大林丈史)の手術を成功させ、その報告のために東教授(石坂浩二)の部屋に入った財前五郎(唐沢寿明)は、見知らぬ男が座っていることを不審に思った。教授選を前にした東の態度に不信感を抱いていた財前は、不躾にその男に挨拶する。財前の感じた通り、男は東が自分の後継にと白羽の矢を立てた心臓外科の若き権威・石川大学助教授・菊川(沢村一樹)であった。財前は、教授選に向け不安と緊張を募らせた。
財前はその足で里見(江口洋介)の部屋に向かった。菊川のことを調べるためである。研究熱心な里見は、菊川のことを知悉しており、財前を驚かせる。だが、里見の抱える問題は、教授選ではなく、末期ガンと判明した製薬会社社員・林田加奈子(木村多江)の延命治療のことであった。
東家の夕食に招待された菊川は、「財前助教授のいるところへ割り込む勇気はない」と、教授の椅子を固辞する。東は更なる説得を試みるが、割り込んできた政子(高畑淳子)に、佐枝子(矢田亜希子)との結婚をにおわせた話で邪魔をされる。それを聞いていた佐枝子は冷ややかに目を伏せるのだった。
財前はその夜、ケイ子(黒木瞳)のマンションに足を運んだ。菊川の話を聞いたケイ子は「面白くなってきた」と微笑み、「私が扱うのはお酒、あなたは命。それだけの違いでサービス業としては似たようなものね」と財前を刺激する。
里見は、加奈子の件で病理学の権威・大河内教授(品川徹)のドアを叩いた。病理検査から抗がん剤治療の可能性を探りたいという申し出に、大河内は「それこそ医学の根本だ」と里見を頼もしく見る。
全快した五十嵐の退院の日、五十嵐は医局スタッフに商品券を配りながら、財前に「感謝の気持ちを表したい。第一外科に研究費として1億寄付する」と申し出る。「君の顔も立つだろう。好きなように使いなさい」と付け加える五十嵐の手を笑顔で握りながら、財前は一考を案じた。
財前は、鵜飼医学部長の部屋を訪ねた。「第一外科で独り占めする額ではないので」と切り出し、「医学部創立120周年の基金にしたい。記念式典の場で発表すれば部長のお顔も立つのでは」と鵜飼の顔色を窺う。鵜飼は「恩を売る気か」と財前の意図を詮索する。だが、財前は「もはや部長におすがりするしかありません」と捨て身で言い放つ。鵜飼は「見返りを要求されても困る」としながらも「教授選の選考委員を僕の派閥で固めるくらいなら…」と条件を提示する。待ってましたとばかりに財前は頭を下げるのであった。
そんな財前が大河内に呼び出された。部屋に入ると里見がいる。加奈子の件であった。大河内は、加奈子の抗がん剤治療は難しいと結論を出す。財前は「言った通りだ」と里見に勝ち誇るが、里見は「オペで主病巣だけ摘出すれば延命できる」と譲らない。財前は「オペで2、3カ月、延命の可能性はありますが、確実に助かる患者を優先したい」と言い捨て、大河内の無言をいいことに部屋を出る。大河内は「医者の本分を忘れておる」と里見に聞こえるように一人ごつのであった。
財前は、舅・又一(西田敏行)と教授選参謀格の地区医師会長・岩田(曾我廼家文童)の待つ扇屋に座った。医学部に詳しい岩田は、選考委員会の教授6人を押さえることが重要だと言う。又一は即座に“実弾攻撃”の準備を始めた。
豪華なホテルで「浪速大学医学部創立120周年記念会」が始まった。新旧の教授や来賓が数多く招かれ、現役教授が上座に座る。五十嵐が登壇し「私がここにいるのは財前教授のおかげ」と基金への寄付を発表。大いに盛り上がる。ただ東だけは財前を一顧だにしない。
そんなころ、里見は加奈子に正直に病状を話していた。不安と悲しみで感情を爆発させる加奈子は「その時、里見先生がそばにいてくれますか。信じられる人に看取られたい」と懇願し、里見は「最後まで私が看ます」と約束する。里見はその足で大河内に「大学病院の本来の目的から外れるかもしれませんが、林田さんを最後まで診たいと思います」と報告。大河内は「支持するよ」と温かく声をかける。
佐枝子は、パーティ会場で倒れた政子を大学病院に運んだ。診察したのは里見であった。里見の的確な治療で政子は事無きを得たが、佐枝子は里見も妻の美知代(水野真紀)もパーティにいなかったことを尋ねた。「二人とも好きじゃないんで」と言葉少なに語る里見に佐枝子は惹かれて行く。
教授選考委員を決める教授会が始まった。自分の思惑に沿わせようと案件を速攻で進める鵜飼だったが…。

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第6話 父の姿

あらすじ

浪速大学医学部教授会で第一外科教授の選考委員選びが行われていた。31票のうち最多数を獲得したのは、鵜飼部長(伊武雅刀)でも東教授(石坂浩二)でもなく、謹厳な学究派で知られる病理学の大河内教授(品川徹)であった。大河内は醜い学内の派閥争いや権力闘争に業を煮やし出馬表明したのであった。大河内はそのまま選考委員長に就任した。財前にとっては、東肝いりの菊川石川大助教授(沢村一樹)に並ぶ障壁となりそうだった。
足元を固めるべく、財前は、医局長の佃(片岡孝太郎)に、東が菊川を推していることを仄めかして佃の不安をあおる。佃は、他大学の教授が自分たちの上に降りてくるなど許せないと、財前の思惑にまんまと乗るのだった。
東の教授総回診が始まった。いつものように東は慇懃に財前を牽制する。「ニューヨークのがんセンターの講師にならんかね」。「ありがたい言葉ですが、私は浪速大に骨を埋める所存です」。こんなやり取りに医局員は緊張した。と、その中から新人の柳原(伊藤英明)が東に駆け寄った。「尊敬する財前先生は第一外科に必要な方です」。佃や安西(小林正寛)があわてて引き戻した。憮然とした東は財前に「今のはなんだ」と問う。すぐに佃が引き取って「監督不行き届きでございました」と謝るが、東は「百年早いと教えておきなさい」と去るのだった。
そんなころ、里見(江口洋介)も内科の総回診に臨んでいた。鵜飼部長は、転院しているはずの末期がん患者・林田加奈子(木村多江)に気付き、加奈子の前で里見をなじる。里見は「最後まで引き受けたい」と鵜飼を追う。鵜飼は「まるで私が悪者のようだが、ベッドの空きを待っている患者にとっては君が悪者だ。私の方針に従えなければここを出て行ってもらう。私が教授で君は助教授だ」と厳しく叱責するのだった。
東の家では、佐枝子(矢田亜希子)が、政子(高畑淳子)の急病を救ってくれた里見に礼を言ってくれと、東に願い出ていた。だが、東も政子も、そんなことは眼中になかった。教授選が最大の関心事なのである。佐枝子は思い余って「お父様は不幸です」と言い放ちその場を去る。娘の情緒不安定な様子を訝る東に、政子は「里見先生が原因かも。妻帯者だから厄介です」と佐枝子の心の動きを見抜いていた。
里見は、加奈子に終末治療を施す決心と苦悩を大河内に吐露していた。大河内は「医学に答えはない。何度でも石を投げるしかない。互いに頑張ろう」と教授選を視野に入れて激励する。が、そのころ、加奈子は、鵜飼に意を含まれた竹内(佐々木蔵之介)に「うちの病院には順番を待っている患者さんがたくさんいます。出て行ってください」と申し渡される。加奈子は病室の闇を見詰めた。
徹夜明けの里見が昼前に自宅に戻ると、家の中から佐枝子が顔を出した。三知代(水野真紀)に会いに来ていたのだ。その時、玄関のベルが鳴った。息子の好彦(片岡涼)が玄関口に出て戻って来た。「お父さん、財前さんだって」。驚き訝る一同。玄関先で辞すると言った財前は、佐枝子がいると知ると中に入って来て「ご恩は必ずお返しするとお伝えください」など殊勝な挨拶をし始める。里見は「外に出よう」と財前を促した。
財前は「君の熱意に負けた。林田の手術をやろう」と切り出す。だが「その代わり、大河内教授との間を取り持ってくれないか」と続けるのであった。里見は無言で聞いた後「そんな条件には応じられない。取引のために末期治療しているわけではない」ときっぱり断った。財前は「なら医者を辞めろ。君だって金をもらって診療している。特別な顔をするな」と里見の理想主義を厳しく糾弾するのだった。
美和子と佐枝子は、互いの父親が置かれた運命的な状況について話をしていた。と、そこに電話が鳴った。林田が自主的に退院したという連絡だった。
里見と財前は病院に向かった。竹内が出て来て言う。「すぐ退院するときかなくて。里見先生には会いたくないとのことだったので…」。里見は加奈子を追った。バスを待つ加奈子を見つけた里見は「なぜですか」と問う。「里見先生に迷惑をかけたくないんです」。里見は「あなたに会って、患者を選ぶことに疑問を抱きました」としか答えられなかった。加奈子は「少し救われました。先生こそ頑張りすぎちゃ駄目」とバスに乗り込んでいった。里見は財前に「俺は彼女を苦しめたのか」と問った。財前は、その問いに肯定した後「悩んだって患者のためになるとは限らない。そんな簡単じゃない。だから僕は確実なものが欲しいんだ」と自分に言い聞かせるように答えるのだった。
6人の委員による第1回教授選考教授会が始まった。ここで一人の名前に絞られれば、本教授会の投票は信任となる公算が大きい。財前や医局員たちが緊張している。委員長の大河内はまず具体的な選考基準を決めていこうと提案した。財前を推す鵜飼と葉山(渡辺憲吉)、東に因果を含まれた今津(山田明郷)は、意見が割れ、会議室には沈黙が流れる。それを破ったのは大河内のある提案であった。それを聞いて鵜飼と東は絶句した。

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第7話 毛嫌い

あらすじ

財前五郎(唐沢寿明)は、ケイ子(黒木瞳)のマンションで、教授選考委員会の結果を待っていた。だが、佃医局長(片岡孝太郎)からの連絡は、教授選が財前推薦でまとまらず、大河内教授(品川徹)の発案で全国公募になったという予期せぬ結論であった。財前は動揺した。
その夜、東(石坂浩二)は家に菊川(沢村一樹)を招き、最後の意思統一を行っていた。菊川は「名前が挙がる以上、敗れるわけにはいかない」と強い調子で東に念を押す。政子(高畑淳子)は、そんな緊張はお構いなしに、佐枝子(矢田亜希子)の結婚相手として菊川の気を引こうと躍起である。そんな茶番に呆れた佐枝子が廊下に出ると、玄関のチャイムが鳴る。その主は財前だった。
菊川を応接間に残して、東が玄関に応対に出た。財前は、東が行う予定の肺の手術に助手として参加させてくれ、と、懇願する。「おそらく助手につく最後のチャンスと思います」と財前。東は意図を量りかねながらも、断る理由を探せなかった。
2週間後、東のオペに財前は助手として参加した。一糸乱れぬ師弟の見事な手際に、金井(奥田達士)や佃、安西(小林正寛)は目を見張る。
同じころ、里見(江口洋介)は、動物実験の満足行く結果に喜んでいた。が、研究室の誰も手伝おうとしない。竹内(佐々木蔵之介)ですら、「里見先生を尊敬しますが、鵜飼部長に睨まれるわけにはいきません」と部屋を出て行くのだった。竹内が持ってきた郵便の中に静岡の病院からの封書があった。里見は緊張した。果たして、その病院へ転院した加奈子(木村多江)が亡くなったことの連絡であった。里見はすぐに鵜飼(伊武雅刀)に報告し、「末期患者の受け入れについて考え直してくれ」と申し入れる。鵜飼は「説はもっともだが、大学病院の使命ではない。君こそ研究に精を出してくれ」と聞き流し去って行くのだった。
そんなころ、杏子(若村麻由美)は、鵜飼の自宅へ典江(野川由美子)を訪ねていた。忙しい振りをする典江は「挨拶を」と申し出る杏子の風呂敷包みに目をやりながら、渋々の素振りで招じ入れた。風呂敷の中身は高価な辻が花の反物である。典江は慣れた様子でそれを受け取りながら「宅が心配しておりましてよ」と、クラブ・アラジンのマッチをさりげなく杏子に渡すのであった。
手術が終わった東は、財前の意図を探ろうと、一杯誘う。財前は『待っていた』とばかりに承知する。二人はアラジンへ向かった。ケイ子が席を立ったのを見計らい、東は財前に「なぜ助手についた」と質し、「教授にしてくれと素直に僕に頼めんのか」と直截に詰問する。
同じころ、里見は病院に残って研究を続けていた。電話が鳴る。佐枝子からであった。佐枝子は、自分の縁談成就を焦る母・政子が里見と自分の仲を怪しみ、不快な電話を掛けるかも知れないと、里見に伝える。静寂が流れたその瞬間、研究室に財前が入ってきた。里見は慌てて佐枝子に別れを告げ、財前に向き合った。
酔った財前は「助けてくれ。大河内教授との間を取り持ってくれ」と懇願する。里見は無視して研究を続ける手を休めない。諦めて立ち上がる財前に里見は背中越しに言った。「信念があるのなら誰にでも堂々と会えるだろう。自分で行け」。財前は少なからず衝撃を受けながら、黙って里見の部屋を後にした。
数日後、ケイ子の部屋に杏子が現れた。杏子はすぐに切り出した。「しばらく主人と会わないでください。教授になったら、またお貸しします」。熱い視線が交じり合い火花を散らした。
医学部では2回目の教授選考委員会が開かれた。全国から推薦された10人の教授候補の名がボードに書かれていて…。

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第8話 決戦

あらすじ

「教授にはなりたくございません」…財前五郎(唐沢寿明)は、教授選考の大きな壁になっている大河内教授(品川徹)の琴線に触れようと、芝居掛かった直訴に及んだ。熱弁を振るう財前を、大河内は、相槌一つ打たず黙って見据えるだけである。と、そこへ里見(江口洋介)が入ってきた。大河内は財前への態度とは打って変わって「実は市民講座の講師を引き受けてくれ」と滑らかに切り出す。「意義あることだと思うが…気が進まんなら辞退したまえ」。まるで財前を諭すように里見に話しかける。自分の意図を見透かされた気がした財前は、里見に「先生の勧めに応じるべきだ」と助言し、「先生、有難う御座いました」とその場を辞した。里見は、「彼の言を気にするな」という大河内の言葉を聞きつつも、生真面目に次の日曜の講座講師の仕事を引き受けるのだった。
その日曜は里見の息子・好彦(片岡涼)の誕生日であった。美知代(水野真紀)は好彦がなついている佐枝子(矢田亜希子)を誕生パーティに招待しようと電話をかけた。だが、佐枝子は、里見への思いが招きうる様々な問題を思うと、これ以上里見家に深入りすることにためらいを覚えていた。佐枝子は論文執筆を理由に誘いを断った。佐枝子が電話を切ると、東(石坂浩二)が戻って来た。疲れきった東は、政子(高畑淳子)に「教授選が招く不幸はあなたが生んだ」「菊川は大丈夫か」「退官後の行き先は」と遠慮なく畳み掛けられるのであった。
家に帰った財前も、杏子(若村麻由美)から無神経な言葉を浴びせ続けられていた。「花森ケイ子さんに会ってきたわ。しばらく会わないでって言ったの」。たまらぬように財前は家を飛び出した。
財前の行き先は、鵜飼(伊武雅刀)、又一(西田敏行)、岩田(曾我廼家文童)らの待つ「扇屋」であった。最後の票読みである。又一は岩田の「18票」という数字に愕然とした。もっと圧勝の数字が報告されると思っていたのだ。問題はやはり大河内が持つ基礎医学の15票である。鵜飼は、財前が大河内に直訴したことをなじりながらも、葉山教授に最終的な票固めを依頼した。焦る又一は「いくらいるのか」と相変わらず直接的な表現をする。岩田が「教授選はもっと品格が必要なんだ」と皮肉ると、又一は臆すことなく「そんな一文にもならんものまで欲しがるとは、先生方の方がよっぽど欲張りですな」と煙に巻くのだった。
そのころ東家でも票固めが行われていた。今津(山田明郷)が基礎の教授に会って菊川の運動をしてきたのだ。今津も17から19票は固いと踏んでいた。
扇屋を出た財前は「アラジン」に向かった。そこには医局の佃(片岡孝太郎)、安西(小林正寛)、柳原(伊藤英明)がそろっていた。若手の結束と意思統一を図ろうという算段だった。ただ財前は、ケイ子(黒木瞳)のよそよそしい態度の方が気に掛かった。
同じころ里見は、講演会に行く準備をしていた。好彦は自分の誕生日に仕事を入れた父に対し不満である。また、政子のいない東家には、東都大の船尾(中原丈雄)と菊川(沢村一樹)が訪問していた。船尾は、教授選の最後のツメを確認するとともに東の退官後のポストを提示に来ていたのだ。菊川が遠慮して学会に出向くと言うと、佐枝子が送りに出てきた。佐枝子の気持ちを察した菊川は「私も結婚する気などない」と先回りする。さらに「あなたの方が古い人間だ。」と喝破する。
里見は市民公開講座で講演していた。後ろの立見席に財前とケイ子がいる。財前は自分に問うように言う。「患者と医学のためにだけ力を注ぐとう人間がいるのか。嘘じゃなきゃ、俺は困るんだ」
里見が講演を終えると楽屋に佐々木よし江(かたせ梨乃)が飛び込んで来た。夫の調子が悪いと言う。里見は病院に連れて来るように伝えた。
数日後、よし江と夫・庸平が診察にやって来た。その日は教授選の最終日でもあった。里見が庸平を検査すると、果たして食道がんである。里見は、財前の判断を仰ぐようにと竹内(佐々木蔵乃介)に命じるが、案の定、財前は留守であった。そのころ財前は母・きぬ(池内淳子)に仕送りの電話をかけていた。「お前は立派になったよ」と言うきぬに、財前は「まだ、もっともっとと思ってるよ」と天に向かって手を伸ばすのであった。
教授会31名の投票が始まろうとしていた。と、突然、東が立ち上がって口を開いた。その発言にそれぞれの思惑と表情で場内が粟立つ。

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第9話 正念場

あらすじ

教授選投票を突然棄権するという東(石坂教授)の“奇行”で教授会は騒然となった。意図を図りかねるまま教授会は投票に進行した。財前(唐沢寿明)は、その“事件”を里見(江口洋介)が持ち込んできた食道がん患者・佐々木庸平(田山涼成)の診療中に、佃(片岡孝太郎)の連絡で知った。財前は、庸平を放り出し診察室を飛び出した。庸平の妻・よし江(かたせ梨乃)は、その人を人とも思わぬ態度に大きな不安と不信感を抱いた。外に出た財前は、東の態度に感心する佃を「俺を陥れるために仕組んだ芝居じゃないか。騙されるな」と罵倒した。
果たして投票の結果は混沌を極め、財前12票、菊川(沢村一樹)11票、野坂(山上賢治)らが押す葛西が7票と、3候補とも過半数を割り、翌週の決選投票に持ち越されてしまった。医局員たちは予定外のこの事態に慌てふためき混乱した。財前の「自分に出来ることは何か、落ち着いて考えてくれ」という含みのある指示に、佃は一人何事か思うのだった。
東、財前両陣営とも野坂派の突き崩しを画策した。東は参謀の今津(山田明郷)を呼び「もう一芝居打たねばならんだろうね」と思案する。一方、扇屋に集まった財前派は、又一(西田敏行)が、「野坂派を馬鹿にしたツケや。どなたかの政治力も財力も当てに出来まへんな」と、鵜飼(伊武雅刀)、岩田(曾我廼家文童)に嫌味を露にしながら、まるで敗北したように騒いでいた。そこへ財前がやって来た。「東にしてやられた。一巻の終わりや」とわめき散らす又一に対し、財前は「ここで諦めたら、あなたの欲しかった名誉も手に入らず、ばら撒いた金も無駄になる」と諌める。鵜飼、岩田も頷き、財前は不敵に笑うのだった。
その夜、医局では佃が、安西(小林正寛)と柳原(伊藤英明)を「菊川のところへ一緒に乗り込んで辞退を要請しよう」と誘っていた。柳原は「フェアじゃない」と腰が引けるが、安西は佃の迫力に負け、その無茶な案に付き合うことにした。その時、医局のドアが開き里見が現れた。財前に渡す佐々木の資料を持って来たのだ。柳原に温かい言葉をかける。
その時、財前はアラジンでケイ子(黒木瞳)と飲んでいた。そこへ、財前を訪ねて佃と安西が現れた。菊川に直談判に行くことを報告に来たのだ。財前は表向き止めるのだが、底意は逆である。「好意は嬉しいが…、だがそこまで思ってくれるなら止められん。無理はするな、僕は聞かなかった事にする」と結果煽るのであった。
佐々木の診断の日である。財前は、佃、安西が、菊川のいる金沢へ向かうための虚偽の病欠であることを知りつつ、柳原を助手として付け、診断に向かう。弁当屋の店主である庸平は仕事一途の人間で外科医・財前の登場にひるむ。財前はそんな様子を無視し、即座に食道がんと判断、里見に手術を言い渡す。財前が去った後、里見はそれを受けて、よし江に診断や手術を説明するが、よし江の財前に対する違和感はさらに増していた。
佃と安西は雪がちらつく金沢・石川大に到着、菊川を訪ねた。二人は単刀直入に候補から降りるように申し入れた。菊川は、二人の都合のいい言い分に、怒り心頭に至り「僕がどれだけ自分を抑えているか分かるか」と叱責する。だが佃らもひるまず「万一、先生が教授になられても一切協力しない」と脅すように言い放ち出て行った。菊川は、すぐさま船尾(中原丈雄)に連絡した。
そんな夜、東の専用車には、東と今津、野坂が乗り込んでいた。話の見当のついている野坂は「7票を回せと言われても困る。私は白票を投じる」と清廉なことを言う。だが、東は構わず「本題は、あなたが日本整形外科医学会の理事になる気があるかという話だ」と持ち出した。野坂は「私は学者としての将来を考える人間だ」と不敵に微笑む。
が、東は帰宅して掛かってきた船尾の電話に驚いた。佃、安西の話だ。「どんな教育をしているのだ」と船尾の怒りは収まらない。東は絶句する以外すべがなかった。
なんと野坂は東と別れた後、扇屋にいた。目の前に座っているのは、又一、岩田のコンビである。表向きの話題は、医師会の講演であったが、野坂の「テーマは?」という問いに答えとして出てきたのは、札束であった。500万円が6束、1000万円が一束。7票分である。断る野坂に「ほな、何で来られたんです?」という真意を見透かした岩田の問いに絶句する野坂であった。
翌朝、東邸に船尾が勢い込んで乗り込んできた。「菊川君は辞退すると言っているが、させません。私の面目が潰れます」と興奮している。「あなたの交渉では不安だ。甘い」と、東を無能扱いし、野坂派の各教授に名誉職ポストを次から次へと用意し手帳に書き込んで行く。そそくさと船尾が帰った後、東は、何かが切れたように荒れ、玄関脇の鉢植えに当り散らすのだった。あまりの様子に佐枝子(矢田亜希子)が病院まで送ることになった。
佐枝子はついでに里見の部屋を訪ねた。佐々木よし江が遠慮がちに入ってきた。財前がまともに診てくれないのでは、と訴えるのだった。
そのころ財前は、東の部屋に呼び出されていた。佃たちの件の責任が財前にあるのでは、という責めであった。財前は知らぬ存ぜぬを通したが「東先生が私を否定するために棄権したと、医局は殺気立っている」と東の気持ちを逆なでする。カッとした東は「言葉を慎め」と激昂する。財前は「申し訳御座いません」と悪びれる様子なく平然と頭を下げるが…。

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第10話 一部最終回・無常

あらすじ

財前(唐沢寿明)の手兵とも言うべき医局員たちの教授選辞退を求める「菊川直談判」という蛮行に、鵜飼(伊武雅刀)も不快感を隠さず、又一(西田敏行)らのいる夜の席で財前を問い詰めた。しかし、財前は諦めてはいなかった。「今さら困ります。支持すると言われたからこそ、舅は何千万も使った」と脅しとも取れる言葉を繰り出し、「不愉快だ」と立ち上がる鵜飼に、今度はすがりつき、さらに土下座し「どうかお助けください」と泣き落とす。
翌日、教授選の最終投票が始まった。案の定、清廉で鳴る大河内教授(品川徹)が「今回ほど不正の気配がする選挙はない。厳正なる判断を」と発言する。低くざわめく会場。鵜飼は平静を装い投票開始を宣言した。
開票が始まる。財前は授業を行い、里見(江口洋介)は診察し、ケイ子(黒木瞳)は口紅を引き、菊川(沢村一樹)は論文を書き…それぞれの時間が過ぎて行く。
里見が財前に頼んだ佐々木庸平(田山涼成)は手術嫌さに、帰る帰らないの駄々をこねて、よし江(かたせ梨乃)や庸一(中村俊太)を困らせていた。里見が、手術が遅れていることを財前に問い質すと、財前は年内最後の診療日、26日に行うとすでに決定していた。その日は東の退官日であった。
佐枝子は久しぶりに三知代に会った。佐枝子は「里見さんのように地位や名誉にこだわらないことが羨ましい」と言う。だが三知代は「私は地位や名誉を求める気持ちが分かる気がする」と言う。「その方が生きやすいからよ。私は平凡だから時々楽をしたくなるの」。
手術日が迫っているというのに、庸平が手術同意書にサインをしない。困った柳原が財前に助けを求めてきた。ぐずぐず腹の決まらない庸平に財前は「端的に申し上げます。死にたくないのなら手術をしなければなりません」。それでも黙っている庸平。柳原がさらに説得しようとして、X線写真に目を落とす。柳原が黙った。
部屋に戻って財前が柳原を叱る。「この程度の手術で同意書がもらえないとは…」。柳原が写真の肺に写った影が気になると言うと、「炎症性変化である」と決め付けた。それでも「胸腔鏡で組織検査を」と食い下がる柳原に対し、「転移ではない。胸腔鏡手術をすると体力を消耗するだけだ。君はがんを放置するつもりか」とピシャリと諌めた。その様子を看護士の君子(西田尚美)はじっと見ていた。
財前が庸平の手術準備をしているとX線写真を手に里見がやって来た。柳原と同じことを言い出す。財前は「越権行為だ」と請合わず、手術を強行する。

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第11話 天国と地獄

あらすじ

年が明けた。第一外科の教授席には、夢をかなえた財前五郎(唐沢寿明)が威厳をたたえ充実した面持ちで座っている。第一外科はあっという間に財前体制に切り替わったのだ。財前は、ポーランドで開かれる国際外科医学会に招かれ、その準備に忙殺されていた。財前が執刀した患者の佐々木庸平(田山涼成)は、手術の成功を妻よし江(かたせ梨乃)や長男庸一(中村俊太)と喜んでいた。里見(江口洋介)も財前の力量に感嘆していたが、庸平のセキに少なからず疑念を抱きはじめた。里見は庸平担当の柳原(伊藤英明)を呼び、財前に報告するように指示した。
財前は、婿の教授就任で大喜びする又一(西田敏行)の医院で柳原からの電話を受けた。財前は柳原の浅薄な行動に苛立ちながら、庸平の容態変化について「術後肺炎であり抗生物質で叩け」と自信たっぷりに指示し、柳原の横に里見の存在を知って、露骨に不快感を表す。
そのころ東は庭の手入れをしていた。佐枝子(矢田亜希子)が一向に決まらない就職活動から帰ってくる。政子(高畑淳子)が声高に東と佐枝子に嫌味を言う。だが東は「財前君が勝ったかは、これからを見なければ分からない。ゆっくりと拝見しよう」と意味深につぶやくのだった。
財前は久しぶりにアラジンに足を向けケイ子(黒木瞳)に「マンションの頭金でも出してやるから便利なところへ移れ」などと権勢風をふかし、ワルシャワの学会に同伴するよう求める。ケイ子は、財前の自惚れと浮つきように、少なからず違和感を覚えた。
庸平の容態は刻一刻と悪化しているようだった。柳原は焦りを覚えていた。よし江は夫と柳原の様子に不安が募り里見に相談する。が、里見は立場上「外科を信用してくれ」と言うしかなかった。
豪華な見送りを受け財前は飛び立って行った。ポーランド・ワルシャワ空港に着くと、現地の案内をする業者の駐在員・諒子(奥貫薫)が待ち受けていた。財前は諒子に命じ、観光でなく公開手術を行う大学へ向かった。財前は学会会長のエマーソンに会い、手術スタッフと交流を持った。ここでは財前は日本を代表する名医であった。翌日の手術は慣れない環境の中、財前らしい完璧な執刀であった。後日行われた講演も見事なもので、偏屈で鳴るエマーソン博士をして「学会の名誉会員に推薦したい」とまで言わしめたのだった。
ホテルに帰ると諒子が「奥様がお待ちです」と言う。見るとケイ子であった。財前はメールボックスに入っていた里見からの「庸平病状悪化」のメールを削除し、自分の絶頂を肴に杯を重ね、ケイ子と唇を重ねた。
そのころ佐枝子は事務員募集の広告を出していた関口法律事務所の扉を叩いていた。だが関口(上川隆也)は「事務所をたたむから、バイトはいらない」と言う。関口は医療裁判の専門家で、敗訴が続き田舎に帰るというのだ。佐枝子は関口に、関口は佐枝子に興味を覚えた。
刻々と危険な状態に向かう庸平に、里見は財前にメールを打ち続けた。だが、財前は無視し続けた。と、ケイ子が帰国するという。二人は子供に混じってスケート遊びをし、ベンチに座る。ケイ子は「別れましょ」と唐突に切り出した。「これを言いに来たの」。無言が続き、財前は「分かった」と漏らした。
翌日、諒子が案内した「観光地」はアウシュビッツであった。「生き残り」の老人の案内で「医師による『人体実験』という名の大量殺戮」の現場を歩き、財前は人類の「負の遺産」を実感する。財前が展望台から収容所とガス室に別れる線路を見詰めている時、庸平は…。

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第12話 捨て身

あらすじ

財前(唐沢寿明)がポーランド出張から空港に降り立つと、財前の執刀後亡くなった庸平(田山涼成)の息子・庸一(中村俊太)が現れ「あなたに殺された」となじる。財前が落ち着いて庸一をかわすと、空港の外には里見(江口洋介)が待ち受けていた。里見は、庸平の亡骸が大河内教授(品川徹)により病理解剖され、食道がん手術は完全に成功しているが、死因は術前から存在したとみられる肺がんの転移による「がん性リンパ管症のための呼吸不全」と断じられたことを伝えた。が、財前は全く相手にせず病院へ向かった。
その晩、佐々木家では通夜が行われた。同時刻、扇屋では又一(西田敏行)や岩田(曾我廼家文童)、製薬会社役員らが集まっての財前帰国祝賀会が開かれた。その中で鵜飼(伊武雅刀)だけ目が笑っていない。財前を別室に呼び出し「亡くなった患者のこと、間違っても浪速大の名が傷つかないだろうね」と念を押す。財前は「落ち度はありません、ご安心ください」と鵜飼の不安を退けた。
翌日は庸平の葬儀である。財前は医局に寄り、佃(片岡孝太郎)や安西(小林正寛)らの留守中の労をねぎらっていた。金井(奥田達士)が庸平の死を報告すると柳原(伊藤英明)が必死の形相で声をかけてきた。財前が教授室に招き入れると柳原は庸平の家族に謝りたいと言う。財前は柳原をなだめる。柳原が、家族へ死因を説明したのが里見であることを明かすと、財前はさすがに激昂した。
佐々木家では焼香が始まった。その列に里見の姿があった。庸一やよし江がそれに気付いた。よし江はふらふらと里見に近寄り「お引取りください。浪速大学の方にはいらして欲しくありません」と言い放った。里見は仕方なくその場を去ろうとした。と、後からよし江が追ってきた。「財前先生は来られないんですか。何の挨拶もないんですか。うちの人は財前先生に殺されたのよ」。力なく帰る里見の背中に向かってよし江は「私、財前先生を…訴えます」と誓うのであった。葬儀が終わり、佐々木家に二人残されたよし江と庸一。庸一が口を開いた。「裁判やろう。親父の無念を晴らそう」。二人の心は強く一つになった。
よし江と庸一は、「訴える」といっても何をどうすればいいか見当もつかなかった。とりあえず警察に行くが、とりあえず医師会へ行く事だと助言され医師会に向かった。
そんなころ、東佐枝子(矢田亜希子)は医療裁判専門の関口弁護士(上川隆也)の事務所でバイトをしていた。関口は事務所を閉める予定だったが残務整理のために雇っていたのだ。佐枝子が閉める理由を訊くと、関口は裁判で負けた遺族の悲しみを共有できなくなったからだ、と言う。
案の定、よし江たちは弁護士にけんもほろろに門前払いされた。それではと、電話帳などで片っ端から弁護士探しを始めるのだった。
関口の事務所が粗方片付いたその時、ドアを叩くものがあった。よし江と庸一だった。「うちは閉めることに…」と関口が言おうとした瞬間、よし江が倒れてしまった。
2週間後、総回診中の財前のもとへ事務課の職員が血相を変えてやって来た。「先生、裁判所から証拠保全の連絡が…」。ざわつく医局員たち。財前は「予測の範囲だ」と一際冷静を装うのであった。

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13話~21話

第13話 カルテ改ざん

あらすじ

佐々木よし江(かたせ梨乃)の「夫・庸平(田村涼成)が死んだのは財前(唐沢寿明)の診療ミスのせいだ。訴えるのを手伝って」という叫びにも似た依頼に動かされ、弁護士の関口(上川隆也)は浪速大病院に乗り込んだ。迎え撃つ財前は、うろたえることなく、佃(片岡孝太郎)と柳原(伊藤英明)にカルテだけを証拠として提示し、決して落ち着きを失わないよう指示を飛ばした。関口はこんな第一外科の意思統一によりなかなか思う通りの証拠集めができない。
そんなころ、関口の事務所によし江と庸一(中村俊太)が着手金200万円を持ってやって来た。留守番の佐枝子(矢田亜希子)は、「引き受けてもらっただけで十分だ」と感激するよし江の様子に複雑な思いがよぎる。そこに関口が戻って来た。証拠が揃わずガードの固さを感じた関口は、裁判維持が難しいことをよし江たちに仄めかす。「そこをどうにか」と迫るよし江たちの熱意と目の前の200万円を見て、関口は「もう少し考えてみます」と、結論を先送りにした。
財前は鵜飼部長(伊武雅刀)にことの経緯を説明し「どうしても裁判というなら受けて立ちます」と威勢のいいところを見せる。だが、鵜飼は「受けて立たれては困るんだよ」とそれを冷ややかに制した。「問題は弁護士に乗り込まれるような事態になったことだ。病院は何より信用なんだ」と財前を諌める。そこへ里見(江口洋介)が入ってきた。鵜飼に意見を求められ「財前先生の手術は完璧でしたが、肺への転移をもっと検討すれば…」と里見は答えるが、鵜飼は無視し「だから葬式に行ったというのか。軽率だ」と里見の行動をなじるのだった。鵜飼は「明日、弁護士同席で事故調査会議を開く」と二人に言い渡したうえで「二人はどこか似ているところがある」と意味深に微笑むのだった。
翌朝、財前は、庸平が「肺の転移を見落としているんやないか」と責める夢を見て飛び起きた。訝る杏子(若村麻由美)には何も語らず、財前は会議に急いだ。会議には財前をはじめ、佃や柳原ら第一外科のメンバーがそろった。そこへ鵜飼がベテラン弁護士の河野と若手でやり手の国平(及川光博)を伴ってやってきた。里見が遅れて着席すると、国平が話を始めた。国平は、おもむろにネクタイを外すと集まった人々に「私はどんなネクタイをしていたか」と尋ねた。各人各様に答える。「このように人間の記憶は非常に曖昧です」と受けながら庸平のカルテを取り出し「亡くなった患者の記憶や見解も様々です。事実を整理しましょう」と切り出した。国平は争点を、(1)肺の転移を見落とし手術を行った点と(2)術後のがん性リンパ管症を肺炎と誤診した点の2点に絞り医局員を問い詰めた。だが、財前を恐れる医局員はだれもその点を認めず、里見が促すにもかかわらず柳原も記憶が曖昧であるとして、大方の意見に従ってしまった。国平は「では、そのようにカルテを整理してください」と書き換えを指示した。柳原は怯み、里見は「改ざんだ」と声を上げた。財前の「君の正義感で僕が誤解される」という嫌味も鵜飼の「大学全体の問題だよ」という示唆も構わず、里見は席を立とうとした。財前はその前に立ち塞がり「医師として無責任だ」と罵った。里見はそれにも抗し、「医師の責任は別のところにある」と退席してしまった。
そんなころ関口は佐枝子にバイト料を渡していた。佐枝子はそれがよし江の200万円から出ていることを知っていたため「事務所を閉めるのに、なぜ仕事を請けたのか」と関口を問い詰めた。関口はその真摯なまなざしに抗し切れず「お察しの通り借金返済のためだよ。こんな裁判は一発逆転の証拠でも出ない限り絶対に勝てない。それを分かって貰うのが今回の仕事かな」と苦笑した。佐枝子はやり切れぬ気持ちで事務所を後にした。
佐々木家でも仏壇の前で騒ぎが起こっていた。庸平の弟・信平(広川三憲)が「悪徳弁護士にぼられたんやないか。200万円あるなら従業員に給料はろうたれ」と、よし江たちが関口に訴訟を頼んだことに腹を立てているのだ。「親父は殺されたんだ」と受けて立つ庸一と信平の言い争いは、よし江の心をさらに追い詰めるのだった。
一方、カルテの「整理」は滞りなく進み「整理」された個所は修正液で白く重ねられ新しい書き込みがなされていた。
関口が借金取りの電話に追われながら事務所の整理をしていると、佐枝子が現れた。バイト料を返し、関口に「世間に誤診を訴える気がないのに着手金を受け取っていいのですか」と問う。「佐々木さんへの裏切りです」とさらにたたみかけ「このままなら医師と同じように弁護士も最低です」と涙を溜めて見詰める。関口は天を仰いだ。
関口は佐枝子の気持ちに負け、二人で佐々木家に着手金を返しに出かけた。当然、裁判が維持できない旨も伝えるためである。「ここで諦めたらまた同じ思いをする人が出てきます。負けてもいいから財前のひどさを世間に知らせたい」となおも食い下がるよし江に、関口は「勝てる可能性がなければ裁判は闘えない」と説得を試みる。
二人が佐々木家の外に出ると、そこに里見が佇んでいる。里見は「何か力になれることはないかと会いに来た」と言い、治療の経緯を二人に説明した。関口は「転移に気付いており検査も勧めたというわけですね」と念を押し「法廷で証言していただければ遺族は救われます。遺族は真実が知りたいのです」と里見を篭絡する。里見はうなずき「証言しましょう」と約束した。
2週間後、関口は再び浪速大病院に証拠保全に現れた。今度は病院側の国平弁護士も立会っている。だが、関口はまったく怯むところなく、カルテだけでなくすべての記録の提出開示を求め、念入りにかつ手際よく資料をチェックしていく。柳原は青ざめ国平の表情も動いた。

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第14話 母の涙

あらすじ

財前(唐沢寿明)の佐々木庸平(田山涼成)死亡に関する医療過誤を問う裁判が始まった。
マスコミは病院に財前を待ち受け取材攻勢を掛ける。院内にも張り詰めた空気が漂い、財前はいつになく苛立つ。
一方、家業を再開した佐々木家では弁当のキャンセルが相次ぎ、仕事を手伝う庸平の弟・信平(広川三憲)が「揉め事を起こす弁当屋の弁当なんか食わん。人が同情してくれると思うたら甘すぎる」とよし江(かたせ梨乃)と言い争いになっている。日程を知らせに来た関口弁護士(上川隆也)は「生活が変るのは覚悟して頑張ってくれ」とよし江を励ます。
また里見家には里見(江口洋介)を訪ねて病院側の弁護士・国平(及川光博)が証人出廷の撤回を求めてやって来ていた。「奥さんはご存知なんですか。ご家族の将来に関わることです」と三知代(水野真紀)を牽制しつつ「あなたの行為は大学も医師も患者すら貶めるものだ」と説得する。が、里見は国平をあっさりと追い返す。三知代の心配は募るばかりだ。
さらに佐枝子(矢田亜希子)は、東(石坂浩二)に関口の下で働いていることを明かす。当然、東は辞めるようにと諭すが、佐枝子は「お父様の仕事をもっと深く知りたいの」と固い決心を吐き出す。裁判に関わる人々の人生が大きく変ろうとしていた。
第1回証人尋問が始まった。初回の証人は大河内(品川徹)と佃(片岡孝太郎)である。佃は「全力を尽くしたうえでの不可抗力」という論拠で通そうとするが、関口の「財前被告人がワルシャワ出発前に容態悪化を知りながら自分で診療せず、さらに指示した治療が功を奏さなかったのは、被告人の診断ミスではないのか」という攻撃にうろたえる。
また大河内は「転移が確認されれば、手術以外を第一とすべき」としたうえで「手術前にがんの発見が不可能であったにせよ、転移の可能性を考慮せず手術したのは臨床医の自覚に欠ける」と言い切り、公判の印象は佐々木側の有利に運んだ。
公判の最中、この裁判に不似合いの老婆が所内に佇んでいる。きぬ(池内淳子)である。記者に見咎められそうになった時、ケイ子(黒木瞳)がきぬを危うく外へ連れ出した。きぬはケイ子に「本当に誤診したのなら一刻も早くご家族にお詫びしなければ…。あの子は人様の命を軽く見る子ではない。あの子は嘘をつかない…」と言い募るのであった。
その夜、扇屋で財前派の“作戦会議”が開かれた。2回目の証人はよし江と柳原(伊藤英明)である。よし江は素人であり柳原は財前が因果を言い含めることになった。3回目は財前と里見。里見は鵜飼(伊武雅刀)と国平の担当。又一(西田敏行)は、いつものように二人に“実弾”を進呈するのだった。
財前は柳原を教授室に呼びつけ「記憶の整理」を要求した。だが、柳原は、里見が後で証人に立つことを恐れ「事前に転移なしと判断した、ということ自体、嘘ではないか」と食い下がる。財前は怒りに発し「そもそも君の説得力不足からこんな事態を招いた」と恫喝し「君も努力次第で僕の後に続けるかもしれない。将来のためにも確実な証言をするんだ」と柳原に因果を含めるのだった。
ある朝、三知代は里見に「証言はやめて」と切羽詰った様子で切り出した。「あなたが大学を追われたら、何のために話したいことも我慢して一人で好彦を育ててきたの」と泣き崩れる。それでも里見は「佐々木さんの死を無駄にしないことは俺にしかできない」と説を曲げる気配はなかった。
2回目の証人尋問の日がやって来た。今日はケイ子が傍聴席に座っている。
そんなころ、研究室の里見の下へ鵜飼がやって来た。ハワイで開かれるシンポジウムに出席してくれという依頼だった。日程を見ると証言の日と重なる。里見が断ろうとすると鵜飼は「だから勧めているんだ。断ればそれ以後日本で研究することは難しくなる。よく考えた方がいい」とシンポの案内状を置いて出て行った。
法廷では関口が柳原を問い詰めていた。柳原は噴出す汗をぬぐうこともできず…。

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第15話 判決

あらすじ

法廷ではよし江(かたせ梨乃)の尋問が始まった。国平弁護士(及川光博)は、金銭問題など感情面を刺激する冷酷な質問を重ね、よし江を心理的に追い込んでいく。よし江はその挑発に乗り「主人に謝って欲しいだけだ」と激昂してしまう。
その夜、扇屋で財前派の打ち合わせが開かれた。又一(西田敏行)と岩田(曾我廼家文童)は、国平の手腕に感激し、裁判の行方を楽天的に展望する。だが、財前(唐沢寿明)は「里見君が不利な証言をすれば、そんな有利など覆される」と冷静に分析する。慌てて「自分が説得にいく」と言い出す又一を制し、財前は「僕がやりますよ」と冷酷に言い放つ。
里見(江口洋介)のもとへ急患が運び込まれた。開業医をたらい回しされた腹痛の激しい女子高生・美香であった。そのまま入院した美香は後腹膜腫瘍であった。内科治療では完治は難しく、難度の高い外科手術が必要である。両親も手術を望み、里見は財前の顔を思い浮かべた。そんな折、家にいる三知代(水野真紀)に電話が掛かっていた。鵜飼(伊武雅刀)の妻・典江(野川由美子)からである。典江は「里見さんも研究ができなくなると大変ですねえ」と裁判を牽制しながら「明日食事でも」と持ちかけてくるのだった。
里見は財前に美香の手術を要請に行った。財前は冷静に対応する。「危険を伴う難手術だ。家族は理解しているのか」と前向きな態度である。財前はじっと考え「わかった」と言う。ほっとする里見に財前が付け加えた。「金井君にやらせるよ」。「君が切ってくれるんじゃないのか」と動揺する里見。財前は「あいにく今は裁判のことで頭がいっぱいだ。難しいオペを引き受ける余裕はない」と突っぱねる。里見は「15歳の命が掛かってるんだぞ」とすがるように責める。財前は「だからだ。裁判に負ければ大学を辞めなきゃならなくなる。そんな精神状態で手術したらミスを起こさんとも限らん。患者のために敢えてメスを握らんのだ」と里見の証人出廷と手術を取引の材料にしているのは明らかだった。だが、里見に言い返す材料はない…。
財前と里見が証言する第3回証人尋問の日がやってきた。裁判所に向かう車中の財前に、すでに傍聴のため裁判所に着いたケイ子(黒木瞳)から電話が入った。「この前あなたのお母さんに会ったの。心配していたことを伝えたくて」。財前は「勝ったら会ってくれるか」と訊いた。ケイ子は「その時考える」とかわし電話を切るのだった。
里見も裁判所に向かおうと支度をしていた。と、三知代が「行くの?」と背中で尋ねる。怪訝な里見に三知代は続けた。「あなたが行くなら、私も出て行きます。私はそんな立派な夫なんか、いらない。家族を一番に考えてくれる人と一緒にいたいの。あなたは何もわかってないわ」。見詰め合う二人。里見は…。

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第16話 妻たち

あらすじ

原告側の証人に立った里見(江口洋介)は、関口(上川隆也)の問いに「がん転移のおそれを財前に伝え、精密な検査を勧めた」と証言した。一方、国平(及川光博)の反対尋問は苛烈を極め、「あなたの行動の根源には、個人的な嫉妬心があるのではないか」と問い詰める。だが、里見は落ち着いて「医師が競い合うのは患者のためであり、地位や名誉のためではない」と切り捨てた。裁判は問題の大きさから鑑定医の報告を受けた後、結審することとなった。
財前(唐沢寿明)は、教授室からケイ子(黒木瞳)に電話をかけた。「俺は負けない…」。ケイ子は「私が医大をやめたのは、きっと人の命を扱うことが怖かったんだと今日分かったわ」と言い、「里見先生が相手なら負けてもいいじゃない」と答えた。財前は「俺は負けない」と再び言い放ち電話を切った。
里見が帰ると、家に誰もいない。テーブルに書き置きがある。三知代(水野真紀)と好彦は家を出て行ったのだ。立ち尽くす里見。
鑑定医報告の日がやって来た。洛北大の唐木教授は財前に有利な報告を行った。
そして数週間後、判決の日…。

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第17話 一年後

あらすじ

よし江(かたせ梨乃)と庸一(中村俊太)の執念は、関口(上川隆也)を動かし、とうとう財前(唐沢寿明)は控訴された。だが、国平(及川光博)は「新証拠か新証言がない限り裁判は維持できない。一人で何がやれるか思い知らせてやる」と平然としている。財前も「示談にする気など一切ない。徹底的にやってください」と周囲を圧倒する迫力で国平を煽るのであった。その言葉通り、よし江側に協力する医療関係者は現れず、関口、佐枝子(矢田亜希子)も重い気持ちになる。
一方、大学を辞めた里見(江口洋介)の家に突然、大河内(品川徹)が現れた。患者本位の治療で有名な千成病院で仕事をしないかと、紹介状を持って来たのだ。里見は大河内の気遣いに「謹んでお受けします」と深々と頭を下げるのであった。
そんな夜、財前はケイ子(黒木瞳)とがんセンター予定地を歩いていた。世界でも有数のがん治療の拠点となるはずである。「うまくいけばあの最上階が俺の部屋だ」と財前。「何も見えないわ」と笑うケイ子に、財前は「俺には理想の病院が見える」と力を込めて答える。ケイ子も宙を見上げた。
数日後、里見の引越しの真っ最中、専用車で財前が登場した。財前は「ろくな研究もできない民間病院に行くらしいな」と皮肉を放った後「3年の辛抱だ」と言い出す。怪訝な表情の里見に対し財前はさらに付け加えた。「3年経ったら、がんセンターの内科部長に君を呼ぶ。君の腕が必要なんだ」。里見は呆れ即座に断った。「なぜだ。現在考え得る最高の病院だ」と里見の気が知れない財前に里見は言う。「それが最高の病院とは思えない」。だが財前は引かなかった。「待ってるよ。君は必ず僕に泣きつく。なぜなら君は医者だからだ」。
それから1年が経った。
千成病院では里見が新しい仲間と丁寧な治療を試みていた。と、そこへ疲れ果てた関口が現れた。里見の点滴を受けながら、関口は最後の砦とばかりに心当たりの証言者を尋ねた。里見は「東先生にご相談されたでしょうか。証言はともかく何か協力が得られるかも」と示唆する。関口はわらをもすがる思いで東の家を訪ねた。意を尽くして佐枝子と二人で東の説得を試みるが…。
いつものように総回診を行う財前が、ある患者に気を止めた。庸平(田山涼成)と面影が重なる安田である。食道がんであった。助教授になった金井(奥田達士)が執刀することになっているのだが、何度もあのころの庸平の表情を思い出させる安田に心が囚われた財前は「僕が執刀する」と思わず口走ってしまう。実は柳原(伊藤英明)も安田に庸平の面影を見ていた。柳原と目を合わせた財前は、柳原を自宅に呼びつける。
財前の家を訪れた柳原は大層緊張していた。そこには又一(西田敏行)もいるではないか。と、唐突に、野田華子という女性を紹介され豪華な食事となった。華子は、杏子(若村麻由美)の後輩であり、又一と関係のある薬局の娘であった。その会は柳原と華子の見合いの席だったのだ。だが、本質は違うところにあった。「君はいろいろ悩んでいるようだが、家庭を持って安定すれば裁判なんか怖くない。一審通りやればいいんだ」と財前。柳原はその席の意味を悟るのだった。
柳原はその足でよし江の店の近くまで行った。疲れ果てたよし江や関口がいる。と関口が柳原に気が付いた。逃げる柳原、追う関口。追いついた関口が叫ぶ。「あなたは悩んでいる。真実を言うべきです。後悔しますよ」。柳原は一目散に逃げ出し、関口は裁判の突破口を見つけた気がした。
安田の手術の日がやって来た。メスを振るう財前。ふと財前は安田の顔を見てしまう。なんとそれは庸平の顔ではないか。意識が虚ろになる財前の手は切ってはいけない静脈を切断した。噴き出す血。騒然とする手術室…。

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第18話 師動く

あらすじ

手術中の患者に庸平(田山涼成)の顔を見た財前(唐沢寿明)は手元を狂わし、大量出血に陥る。さらに手術用具を取り落としたり、血管縫合の糸が切れたりと、散々な手術は6時間を大きく超え、やっとのことで終了した。財前に何かが起きている、と、佃(片岡孝太郎)も金井(奥田達士)も柳原(伊藤英明)も感じた。
一方、東(石坂浩二)は関口(上川隆也)を自宅に呼び、鑑定医に東都大の正木教授を紹介した。佐枝子(矢田亜希子)は突然の父親の心変わりを不審に思い、理由を尋ねる。「里見君(江口洋介)に会い、財前君の落ち度を確信した」との東の答えに佐枝子は驚く。
手術を失敗した財前はケイ子(黒木瞳)のもとへ出向き酒を煽る。ケイ子は財前をあしらいながらも、どこかこれまでと違う様子に不安を覚える。
翌日、関口が正木を訪ねると、正木は快く鑑定を引き受けてくれた。それを国平(及川光博)から聞いた財前は、正木の陰に東があることを見抜いた。国平もそれを認めたうえで、正木に鑑定から手を引かせると言う。と、財前が口を開いた。「どうせなら、東先生にもお引取り願いましょう」。その冷酷な空気は国平にすら寒気を覚えさせるのだった。
よし江(かたせ梨乃)や庸一(中村俊太)らが関口の事務所で、ほのかに差した光明を喜んでいると、正木からの電話が鳴った。関口が出て、声を上げた。「どういうことでしょうか!? 突然そんな!」……正木が鑑定を断ってきたのだった。
失意の関口は東の家に報告に行った。東も驚く。怒りに震える東は、振り出しに戻ってしまった関口に対し、今度は看護婦の君子(西田尚美)を紹介した。関口に一縷の望みが現れた。
そこへ玄関のベルが鳴った。インターフォンに出た政子(高畑淳子)は絶句した。外にいたのは財前であった。財前の相手に佐枝子が出た。東に直接会わせろと言う財前を突っぱねる佐枝子。「では、あなたにお願いしよう」と財前は切り出す。「教え子を足蹴にする真似はやめていただきたい」と言うと、関口も応対に出て「私がお願いした」と受けた。財前はさらに続け「近畿労共病院での立場も危うくなるのではと心配である」と脅迫めいた台詞を残し財前は東宅を辞した。
数日後、関口は君子を病院に訪ねた。君子は終始うつむいたまま何も答えず…。

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第19話 嘘だ!真実の叫び

あらすじ

東(石坂浩二)は、自分の医師生命を賭して法廷に立った。国平(及川光博)は、財前との間に個人的憎しみなど確執があったゆえの出廷であるという言質を引き出そうと陰湿な尋問を重ねる。東は答えに窮しながらも「確かに確執はあった。だが、恨みに駆られて出て来た訳ではない。明日の医療に繋げるためだ。」と発言を。父親を巻き込んでしまった罪の意識から佐枝子(矢田亜希子)は法廷の外へ出るが、里見(江口洋介)から「見届けましょう」と促され中に戻る。
法廷では船尾(中原丈雄)の尋問が始まっていた。船尾は一切財前に過失はなかったという学術的な回答を自信たっぷりに発言するのだった。関口(上川隆也)は質問さえできぬほど敗北感を味わっていた。
扇屋には又一(西田敏行)や鵜飼(伊武雅刀)らが集まり、船尾の労をねぎらう会が開かれたが、まるで財前の祝勝会の様相を呈した。国平だけはクールに裁判の予定を読み上げる。次回は財前とよし江(かたせ梨乃)の本人尋問。その次には関口側は亀山君子(西田尚美)と里見を申請しているという。国平も「最後まで勝つとは言いません」としながらも自信の笑みを浮かべた。
また、関口の事務所ではよし江と庸一(中村俊太)が肩を落としていた。二人は「医師たちはいつも何言ってるか分からない。私たちに分かるように言え、と思う」と漏らす。関口はハッとし、「僕は闘い方を間違えていたのかもしれない。裁判の流れを変えられるかも……」と何かつかんだ様子を見せた。
財前は医局員を前に「鵜飼学長から、がんセンター長の打診を頂いた。系列大学から優秀なスタッフを集めるとともに君らの中からもセンターに来てもらいたい。つまりこの中から系列に行ってもらう者も出てくる。覚悟してくれ」と脅迫にも似た忠誠を求める訓辞を語る。慌ててお追調の声を上げる佃(片岡孝太郎)や安西(小林正寛)。金井(奥田達士)までも……。その場を離れながら財前は柳原(伊藤英明)を手招きした。財前は「野田華子(三浦理恵子)との結婚はどうなった。論文も通してやるし、センターにも連れて行くから、早い方がいい」と“アメ”を与えながら「ただし、僕が目をかけていることを忘れてはならない。忘れたら…」と柳原への“ムチ”をちらつかせるのだった。
関口は自分のつかんだ「感触」を里見に当てた。関口は「医者と患者が向き合うために不可欠なものは何か」と里見に問うた。里見は「財前が選択の可能性を話していれば、手術を選んでも安らかだったかも」と言う。関口は「話すと言うことですね」とさらに新しい争点に自信を深めた。
君子が労共病院の仕事を終え外に出ると、国平が待ち受けていた。「出廷しないで頂きたい」と封筒を渡す。君子が「出廷の気はない」とつき返すと、国平は「それはよかった。お姉さんが離婚問題でお悩みのようですので、お役に立ちたいと思いましたので……」。そこまで調べ上げる裁判や弁護士というものに恐れをなし、君子は走って逃げた。国平の表情はピクリとも動かなかった。
本人尋問の日、財前は行きの車の中で里見に電話した。がんセンターの内科部長になってくれというのだ。断る里見に「その目で見れば来たくなる」と傲然と言い放ちつつ財前は、咳き込んだ。最近頻発するのだ。里見は「よくない咳だ。体調管理はしているか」とつい心配してしまう。財前は笑って取り合わず、電話を切った。
高裁の席についた財前が辺りを見回す。見慣れた顔が座っている。が、入り口辺りになんときぬ(池内淳子)がいる。財前はケイ子(黒木瞳)に目配せし、きぬを連れ出すように合図した。関口は財前のその様子をじっと見ていた。
裁判が始まると関口が発言を求めた。原告被告による対質尋問を申請するというのだ。二人の対立する証人が同時に質問を受ける方法である。国平は拒否しようとしたが、財前は「望むところだ。手間も掛からんでしょう」と不敵に応じた。
法廷では対質尋問が始まった。関口は財前を畳み掛けるように問い詰めた。
財前は一瞬の沈黙の後、「そう、担当医の柳原君に詳しく説明するよう命じました。もし同意書を強要したかのような印象を持たれれば、指導不足、監督不行き届きであり、遺憾なことである」と柳原に責任転嫁を始めた。その時、傍聴席で声が上がった。

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第20話 最後の審判

あらすじ

「財前先生の発言は嘘だ。検査を申し出たのに却下されたんだ」。傍聴席の柳原(伊藤英明)の叫びに法廷は色めきたった。柳原は退廷させられたが、関口(上川隆也)は、即座に柳原の証人尋問を求めた。当然、国平(及川光博)は「責任回避の発作的発言に過ぎず、証言の必要なし」と応じ、猛反対する。裁判長(戸沢佑介)は、法廷秩序を守るという理由で、柳原の証言は認めなかった。財前は国平とうなずきあい、関口はよし江(かたせ梨乃)らと悔しがった。すると、関口らに近づく人影があった。君子(西田尚美)である。
「今からでも遅くないでしょうか」柳原の行動を目の当たりにして、証人の決意を固めたのだ。国平はその様子を陰から見詰めていた。
財前側の反省会で国平は財前に問うた。「亀山君子に何か握られていませんか。新しい物的証拠とかも…」
財前は、君子がカンファレンスに同席し、記録を取っていたことを思い出した。「直ちに医局の記録を佃(片岡孝太郎)たちに処分させます」

一方、関口の事務所でも、柳原と君子がカンファレンス記録の存在を思い出した。柳原は「僕が取ってきます」と立ち上がった。
夜の医局に柳原は静かに入り込んだ。ロッカーを開け、該当月の記録を探す。だが、そこだけ抜けている。と、後ろに佃と安西(小林正寛)が立っている。佃の手に、その記録が握られているではないか。「何をしている。帰れ」「自分のやったことがわかっているのか」。二人に罵倒され柳原は立ち尽くすのだった。
そのころ、アパートに戻った君子の前に国平が現れた。君子は慌てて逃げ、柳原のアパートに急いだ。憔悴して帰って来た柳原と君子は、恐怖と諦観に抗いながら、カンファレンス記録以外の証拠がないか記憶を辿った。
佃は翌日カンファレンス記録を財前と国平に渡した。国平は冷徹にそれをシュレッダーにかけ、財前に「これ以上、医局から離反者がでないよう気をつけてくれ」と申し渡した。了解し「終わったら食事でも」と言う財前に、国平は「あなたとは仕事だけにしたい」と言い放つのだった。
里見(江口洋介)の病院に関口がやって来た。君子のあとの、裁判最後の証人を引き受けてくれという申し入れだった。里見は、敗訴した時の財前の様子を思い描いて沈んだ。
君子が証人に立つ公判が始まった。国平は、記録を処分したカンファレンスの様子を中心に尋問し、君子の記憶や発言を、主観的な勘違いと切り捨てた。だが、関口はカンファレンスではなく、「術前説明」を持ち出した。患者に治療方針を説明する場であり、君子はそこでも記録を取っていたのだ。財前と国平に緊張が走った。
「看護計画検討記録を証拠として提出します」
「唐突過ぎます。認否できません」。国平が裁判長に申し立てた。だが、裁判長は、ためらわず証拠採用を決めた。追い詰められる財前。
さらに里見の尋問に移った。国平は、治療法の選択について「どんな治療を受けても、死は避けられなかったのですね」と、治療における事前説明の無意味さを立証しようとする質問を行う。しかし患者自身がその生き方の選択を行うべきだという里見の心からの叫びのような発言に、国平は尋問の言葉を失った。
この直後、裁判長は財前に質問を行った。「あなたは今もこれまでの考えに変わりありませんか」。財前は堂々と答えた。「私の治療は一点の曇りなく妥当でした」
2カ月後、控訴審の判決が下された直後、財前が呼吸困難を起こして昏倒した。

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第21話 財前死す

あらすじ

東(石坂浩二)は、恩讐の彼方で財前(唐沢寿明)の手術を始めた。だが、開胸した瞬間、東はじめ助手で入った金井(奥田達士)、佃(片岡孝太郎)らは息を飲んだ。がんはステージIどころか、播種を起こし、胸膜全体に広がっていたのだ。全身転移と同じであり、原発巣の切除は意味がない。東は直ちに閉胸にかかった。東の説明を聞いた又一(西田敏行)は動転した。同時に鵜飼(伊武雅刀)は、又一に本人告知の可否を相談した。又一は、財前と杏子(若村麻由美)には知らせないでくれと懇願する。大学やがんセンターへの影響を心配する鵜飼はその言葉に乗り、東は「財前君ほどの専門家にどうやって隠せると思うのか」と疑念を述べる。が、又一の希望通り、財前には隠されることとなった。
助手たちも財前に隠し切れるとは思っていなかった。佃たちは担当を押し付け合い、結局、柳原(伊藤英明)が引き受けることになった。
意識の戻った財前は、すぐに金井に手術時間を尋ねた。金井は、うろたえながらも「2時間50分で完全切除できました」と嘘をつく。杏子は慌てた金井の態度に違和感を覚える。
夜になって里見(江口洋介)は東に電話をかけた。財前の手術の様子を尋ねるためだ。東は突き放すように、問題ないと言い、切ってしまう。里見は、その行動から逆に不審を覚えた。
数週間しても財前は入院したままであった。国平(及川光博)が上告の件で病室を訪ねて来た。上告素案文を読もうとするが、手が震え取り落としてしまう。そこへ、金井と柳原が入って来た。抗がん剤の点滴である。薬剤の名を見た財前は、二人を問い詰めた。重度のがんに処方する抗がん剤である。金井は「東教授の指示です」とその場をしのいだ。だが、財前は、自分の身の変調に気が付き始める。また、国平も、想像以上に財前が重篤であると悟る。
東が財前の診察を行う。財前が抗がん剤のことを尋ねるが、東はそつなく、財前を納得させる。だが、そこへ又一がやって来て、「快気祝いは盛大にやりましょう」とはしゃぎ、柳原まで誘う姿に、財前は自分の病状の重さを確信する。
その晩、財前は医局に向かい、自分のカルテを探す。と、棚にない。柳原に「出しなさい」と命令する。柳原は、かねて用意の、にせカルテと他人のCT画像を仕方なく財前に見せる。じっと見ていた財前は「これが僕の肺か」と嘘を見抜き、柳原に資料を突き返して出て行くのだった。
財前は里見に電話をかけた。里見の病院に向かう途中である。「君に診察して欲しい」。びっくりした里見がロビーに迎えに出ると、やつれ切った財前が座っている。「大丈夫か」と声をかける里見に、財前は「大丈夫じゃないから来たんだ」と苦笑してみせる。
CT室に入り、財前は里見に、自分が想像した所見を聞かせた。「脳転移した症状が出ている。きっと播種か肺内転移でステージIVまでがんが進行しており、胸は開けただけで閉じたのだろう」。里見はその冷静さに驚きつつ、診察を始めた。CT画像を見た里見はさらに衝撃を受ける。

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『白い巨塔(唐沢寿明)』はどこで見れる?動画配信アプリ・サービスでの配信状況

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